アメリカのニューメキシコ州に行ったときのこと。

何にもない場所を車で運転してたら
『ケリーズゴーストタウン』と書かれていて、
その方角を示した簡素な看板があった。

ゴーストタウン、
という響きにひかれて行ってみることにした。

そこは山の中腹にできた炭鉱の町だったらしい。

全盛期には4000人ほどが
そのケリーという町に住んでいたらしいが、
炭鉱の衰退とともに人もはなれて行き、
ついには誰もすまなくなってしまったという。

寂れた教会があったり、
半ば崩れたレンガ造りの酒場の建物、民家、などなどあったけど、
どうということはなかった。

がらーんとしているだけで特に薄気味悪くもないし。

ただ、空気が異様だった。

なんというか、
音がまったくきこえない。

無音室(そんなとこ入ったことないけど)に入ったみたいで、
耳の中に綿でも詰め込まれた感覚がした。

むしょうに不快で、
自分で声を出して

「あーあー」

と言ってみたり、
石を投げたりして音を出してみるんだけど、
不快感はますますひどくなっていった。

冗談でなく、
このままずっとこの場所にいたら発狂しそうだった。

発狂までいかなくても、
不快のあまり叫びだしていたと思う。

あと5分もその場所にいたら。

逃げるようにその場を離れたけど、
あんな思いをしたことは一度もない。

なんだったんだろう、あれは。

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