数年前家族でドライブに行った山での出来事。

車を降りて、
ダンナと子供たちはパーっと走って遊びに行って
私一人残された。

そこには岩で作られたほこらがあって、
40前後くらいの男性とその母親らしき人が拝みに来てて、
お供え物や簡単なお飾りをしていた。

母親らしきおばさんが御祈祷を唱え始めると、
ほどなくして口調が変わった。

後ろで何をするでもなくそれを見ていた私には、
何なのか最初はわからなかったが、
どうやらそこの神様がおばさんに乗り移ったらしく…。

「おうっ、酒をついでくれんか。
うまいっ。よう来たのう。
いつまでも鼻水たらしとらんとしっかり嫁と子供を大事にせいよ。
もう一杯酒をくれんか。ええ酒じゃ」

云々とひとしきりしゃべった後、
帰って行ったのか元のおばさんの口調に戻り、
二人は淡々とお飾りを片付けながら、

「酒の好きな神さんじゃったな」

などと話し、
何事も無かったかのように去って行った。

権現さんを祀ったほこらだった。

あんなの初めて見たから驚いた。

おっさんに対して
「鼻水たらして」とインパクト大だった。

あれはおばさんの単なる演技だったのかどうなのか、
今もってナゾだ。

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