ことの発端は友達との昼休みの話

A君が急に

「廃虚探索行きたい」

って話をしだした

俺とU君は怖いの無理だし
地元に廃虚なんてねぇよって言ったんだけど
A君があんまり怖くない廃虚があるんだよってしつこく粘着するから
俺とU君はしぶしぶ行くことにしたんだよ

待ち合わせは夜の9時、
近所のコンビニ

そこから少し歩いてすっげぇ暗い細道歩いていくと目の前に
もう誰も使ってないボロボロの事務所(多分3階建て)に到着

あまりの雰囲気に俺の懐中電灯の光が震えててびびった

マジでやばいって言ったけどA君は

「別に心霊スポットとかじゃないし平気だよ」

ってそれでいざ入ろうってなったけど、
案の定扉が開いてない

俺とU君が開いてないからもう帰ろうって言い出したとたんに
A君がなんか用具室?みたいなとこの小窓が開いてる事に気づいた

そしてAくんがそこから入って
裏から扉を開けやがった

めっちゃ錆びてて
虫の死骸がくっついてた扉から入ったんだよ

ちょっと入って懐中電灯当てたら、
なんかいろいろ散乱してて
棚みたいなやつの中に緑と黒が合体したみたいな色の赤ちゃん人形があって
もう怖すぎて半泣きだった

しかもなんかU君はノリノリだった

そしたら入って奥の廊下がまっくらだったんだけど、
向こうから

「アァーン」

みたいな音が聞こえて俺含め全員一瞬で逃げた。

もう今にも泣きそうな俺を見てA君が

「明日にしよう。今日は無理」

とか言って鍵を開けたから
いつでも入れるってことでその日は帰った

これが一日目

二日目、もう一回行ったら
Aくんが購買の200円のヒレカツパンを買ってくれる
って言うからまたU君とついていくことにした。

二日目でもすげぇ怖いから
一応塩とお酢を持って行った

てか今思ったけどこれって不法侵入じゃん、
どうしよう。

そしてまた自転車で片道30分ぐらいで到着、
時間は多分8時位

よし入ろう!って思って
A君が扉を開けようとした時気づいた

昨日最後に廃虚から出てきたのはA君で、
しかもその時絶対扉は開いてた

でもそれもさっき気づいたんだけど、
それで入ったらもう泣きそうになる俺

なんでかって
なぜか昨日はあったあの赤ちゃん人形が無くなってた。

みんなでなんでなんでなんでってビビッてたけど、
その日は塩もあったし
俺が率先して進むことにした

率先したは良いけどやっぱりすげぇ怖いの

なんか壁に落書きとかあったら怖さ減るかもだけどなんもない

すげぇ綺麗な状態で
中はびっくりするぐらいものが整頓されてた

でもなんか女と街の絵だけ怖かったわ

それでみんなでここから色々探索してみることにしたんだよ

俺が見つけたのはなんかわからないけど
工業高校の漫画と
その事務所の働いてる人のタイムカードみたいなやつがあった

あんがい普通で、
友達と笑いながら探索してたんだけど
U君が

「じゃあ次は2階だな」

って言い出して、
でも俺らいまノリノリだから行こーぜてきなノリで進んでった

そしたら2階はめっちゃ物が散らばってて
ごっちゃごちゃしてた。

すげぇごちゃごちゃで
机にいろんなダンボールの中身がぶちまけられてた

色々見たけどあんまり面白いものもなかった

ちょっと面白かったのは
多分だけど昔の扇風機とかそういうの。

あんま怖くねぇなってみんなで笑ってたら
外から音がする

俺らの体が固まって
みんなで聞き耳を立ててたんだよ

そして俺とA君が窓の外を見たら
人がこっちに向かってきた

そいつは裏口じゃなくて
表口のほうに走ってった

だけどもっかい戻ってきたと思ったら
裏口のドアを開けてきた

もうここで俺ら警察かと思ってビクビクしてんの

これで見つかったら学校退学なのかな
とか考えてたんだけど
なんか一階の方に早歩きで向かっていったんだよ

警察にしてはなんでここに急に入ってきたんだ?
って感じだったんだけど
しばらくしてから一階の奥側から

「あぁああぁぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁあ」

って叫び声が聞こえてきた

でも叫んでる声は
ちょっと平井堅みたいに良い声だった気がした

でもその声聞いてから俺とU君くんがもう泣いた、
普通に泣いた

警察だったらどれほど良かったか

AくんはちなみにTwitterしてた

俺とU君は
二人でどうしようどうしようってずっと言ってたら
Aくんが

「帰ろう、ほんとにヤバイ」

って言い出した

そんなのわかってるし
お前はまずその画面を一番暗くしてるスマホを消せや
って感じだった。

で、俺らはとりあえず2階のトイレ?

洋式のすっげぇ汚いとこに三人で隠れたんだよ。

しばらくしたら
下からドタドタ聞こえてきて
こっちに来るって感じが伝わってきた

階段をのぼる音が聞こえてくる、
すげえ早足なんだよ

なんで廃虚に人が来るんだって思ったけど
それは俺らもだわってなって
なんでこんな目に遭うのよってもう脇腹が痛くなった

でもその人は2階に行かないで
3階に登っていった

3階でもやっぱり

「あぁああぁぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁあ」

って叫んでてちょっと漏らした

それで上の天井から聞こえてくる足音から察して奥の方に行ったから
すかさず俺とA君がドアを開けてゆっくり下に降りていったんだ

ギィギィ鳴ってるから
もうバレたらダッシュの覚悟だったんだけど
U君が全然ついてきてない。

腰抜かしてんのか知らないけど
トイレの扉は開いてるのに出てきてなかった

俺がやばいやばい行ってる間にA君が

「連れてくる」

ってもっかい向かってったんだよ

その時だけA君のことがすげぇかっこ良く見えた、
すごいDQN見たいな見た目だけど

相変わらずあの変質者は3階にいるままなんだけど
すごい静かなんだよね

A君がU君の手繋いで
一緒にこっちの階段の踊り場の方に来てる途中で
またドタドタ音が聞こえてきた

でも歩いてるってよりは
足踏みしてる感じだった

で、もう踊り場の方に来た瞬間に

「今だっ!」

って感じで
静かに早歩きをしながら階段を降りていった

裏口は閉まってて
俺が開けてその後ろを二人が来て
ようやく脱出

もうほんとに膝から下がガックガクになってた

トイレで隠れてた時についたのか知らないけど
虫がズボンにめっちゃ潰れて付いてた

それでもうそこから離れたところにある自転車で逃げました

もう廃虚なんて二度と行きません(泣)

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