ガキのころ、
俺達の間では探検ごっこが流行っており、
林や廃墟、使用されていない用水路など、
近所の様々な場所を探索していた。

慣れてくると子供ながらに凝り始め、
虫や蛇対策に極力肌を露出しない服装やほこり対策にマスクの着用、
メンバーがはぐれた場合のSOSサインとして笛を携帯するなど、
準備に余念がなく、また独創的な探検場所の設定など、
俺達は6年生屈指の探検チームだった。

今回のターゲットは空き家だった。

線路沿いの広い空き地のとなりにポツンとある平屋で、
もう長いことだれも住んでいないようだった。

俺はマッピング担当だったので、
今回のような狭い対象はあまりやる気がおきなかったが、
A君がどうしても、というので決行する運びとなった。

A君が言うには、
別のチームが勝手口のベニヤで補修された穴を破ることに成功したらしいが、
その際メンバーの一人が怪我を負ったらしく、
そのチームの探検は中止になったらしい。

そのため労せずして探検できるうえ、
建物なのでなにかお宝を発掘できるかもしれない、
とのことだった。

早速計画を立てて、
晴れたある土曜の午後、
メンバー4人で空き屋に向かった。

実際敷地内に入ると、
予想以上に荒れていた。

といっても草が伸びたり、
サッシがボロボロに朽ち果てていたり、
と人の手が入った荒れ方ではなかった。

勝手口にまわると、
たしかに補修されたベニヤが何かでたたき割られていた。

入口としては少し穴の大きさが不足していたので工具で穴を拡げ、
俺達は家に入った。

室内はものすごいほこりの量だったがさほど荒れておらず、
置き捨てられた家具や段ボールなどが整然と並べられていた。

とりあえず光が欲しい、ということで
雨戸を開けようとしたが動かず断念、
懐中電灯の光の身で探索することにした。

ひとしきり探索したがあまり得られるものはなく、
みなの士気が下がりかけたころ、
俺は妙なことに気がついた。

マッピングした室内と外からみた家の外形が一致しない。

家の隅に壁に囲まれたスペースが残っている。

もう一度その壁を調べてみると、
見つけた。

本棚から上にはみ出た引き戸。

つまり戸の前に本棚を設置していたのだ。

何のために?本棚の本を取り出し、
軽くして本棚をよけるとやはり引き戸があった。

Bが引き戸を開けると、
4畳ほどの和室があった。

懐中電灯に照らした先に
奇妙なものがいた。

三人というか、三匹というか、
身長が俺達より小さく、
わりに頭が大きい。

目が非常に大きく、
鼻と口は小さい。

汚いTシャツを着ており、
ズボンは穿いていない。

体色はわからない。

全身赤ん坊の産毛程度のうっすらとした
体毛髪に覆われていたような気がする。

そしてものすごく生臭い。

心臓が飛び出すかと思うくらい緊張した。

しかし、
相手の方が様子がおかしかった。

突然あてられた光のせいか、
三人とも目を抑え鳥のような声でわめいている。

どうやら苦しんでいるようだ。

一人など目をかきむしっており、
膿のような液体がぽたぽた垂れていた。

それを見ていて気付いたが、
4本指だった。

B君がまず冷静さを取り戻し、
逃げるよう提案、
全員一致でその場から逃げた。

しかし、追いかけられるような気がしたことと、
彼らはすぐには動けないだろうという予感から、
俺は本棚を元に戻すことを進言し、
全員であわてて本棚を戻した。

というより、
より強固にバリケード状にして閉じ込めた。

そのまま俺達は近所の駄菓子屋に集まり、
探検の反省会をした。

AとCは戻るべきだ、
捕まえれば大ニュースになると主張したが、
頭がおかしいとしか思えなかった。

俺とBは得体のわからないものに近づく恐怖を語り、
彼らを説得した。

Bの毒があるかもしれない、
という発言が効き、
結局全員一致で二度とあの家には近付かないことにした。

生臭いにおいは俺達にも移っており、
風呂に入ってもなかなか落ちなかった。

後日、俺達の報告を受けた他のチームがその家に侵入したらしいが、
結局その隠し部屋には何もいなかったという。

家は数年後ラーメン屋になった。

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