俺、二か月前まで病院で働いてたんだけど
そこはホントにやばかった。
業務内容とかも法律違反しまくりでやばかったし幽霊も見たけど、
そんなこと関係ないくらいヤバイことがたくさんあった。
俺の担当の病棟にシズって祖母ちゃんが入院してて、
その祖母ちゃんが半身不随でほぼ寝たきりなんだけど
嫁さんの多香子さんて人は毎日毎日見舞い来てた。
シズさんは痴呆も進んでて、
嫁さんが誰かすらわかんない状態だった。
それでも多香子さんは毎日来てて、
俺たち職員も良い嫁さんだなーって思ってた。
美人だったし余計に。
でもあるとき、
シズさんの部屋(個室)に体温計忘れてきたのに気付いて部屋に行ったとき、
俺は見ちゃいけないものを見た。
「はーい、あーんして?あーんは?」
多香子さんがシズさんに何か食べさせていた。
邪魔しないように、あとから出直そうと思ったけど、
多香子さんが持ってるものを見て動けなくなった。
多香子さんがシズさんに食べさせてたのは、
どう見ても使用済みのスポンジを細く切ったものだった。
いくらボケてるとはいえ、
シズさんは口をあけない。
そしたら多香子さんは
「おーいクソババア?口開けろよ?」
と言って、
割り箸をシズさんの口にねじ込んで無理矢理開けさせて、
スポンジを押し込んでいた。
それ以上は見てられなかった。
俺は走って婦長に知らせに行ったが、
「わたしたちは何も知らないのよ。」
と言われた。
要するに他言無用、
忘れろってことだ。
婦長たちも前から、
多香子さんによる虐待に気付いてたんだ。
俺はそれがすごく怖かった。
美人で優しい出来た嫁さんだった多香子さんの、
あのすごく楽しそうな歪んだ表情より怖かった。
でも、この話には続きがある。
それから半月もしないうちに、
シズさんが亡くなったんだ。
死因は誤嚥性肺炎だった。
誤嚥性肺炎てのは、
食物あるいは食物以外のものを誤って飲み込んで起きる病だ。
俺は多香子さんのせいに思えてならなかった。
しかし、シズさんの引取に多香子さんはいなかった。
なんでだろう、と思っていると
シズさんの息子さんが話し掛けてきた。
「先日、妻も亡くなったばかりなんです」
と。
息子さんも理由は言わなかったが、
俺はなんとなくシズさんの復讐のような気がしていた。
それに、亡くなってからわかったんだけど
シズさん、ボケてなかったんだ。
全部演技だったんだ。
遺品から出て来たシズさんの日記に、
多香子さんから受けた虐待が全部細く書いてあった。
唯一動く右手で必死に書いてたみたいだ。
そして、最後のページを見た時、
俺は本当に怖かった。
「多香子死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね多香子死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね多香子多香子多香子多香子死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
ひたすらそう書いてあった。
文字は震えることなく力強く書かれていた。
人間の執念に心底恐怖した。
そして、ひとを呪わば穴二つ、
って本当なんだと思った。
霊的な怖い話じゃなくてスマン。
でも本当に洒落にならない怖い体験だった。
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コメント
コメント一覧 (18)
まず、痴呆ではなく「認知症」です。
誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液が誤って気管に入り肺に流れ込んだ細菌が増殖しておこる肺炎です。
あと、今は婦長って呼ばないですよー
師長とか部長とか、
病院ネタ好きなんですけど
とっても残念です。
何も知らないふりをしていたのか、何も知らないのか息子さん。
見て見ぬふりの病院のスタッフ。
そして、何故か呆けたふりをしていたシズさん・・・多分、お元気な頃は、陰湿な嫁イビリでもしていたのでは。
みんな、怖い、〃〃。
こんな事例はどうでしょう。「私の弟は学校でひどいいじめをしていて、相手を自〇に追いやった。しかしある夜、夢に死んだ相手が出て来て恐ろしい形相で迫って来た。そのため、恐怖に耐えられず弟はそのまま死んでしまったのである」。
さて、実際にはこんな話は成り立ちませんよね。眠ったまま死んでしまった人の夢の内容など誰にもわかりませんから。文章として、話としては完結していても、設定そのものが破綻している例です。
今回の話を読んで、設定が納得できないように私は思いました。シズさんは痴呆(認知症)ではなかったのなら、なぜ多香子さんの虐待を甘んじて受けていたのでしょうか? この鬼嫁! と怒鳴って追い返せば済む事でしょう。なぜぼけた演技をしなければならなかったのでしょうか? 婦長たちも、頭が正常な人が虐待を訴えるなら無視はできなかったでしょう。
投稿者殿がシズさんの奇妙な振る舞いの理由について書き忘れたのかも知れませんが、それよりは、怖さを盛り上げようとするあまりに設定の矛盾に気付かなかった可能性があるのではないかと私は感じます。
※2殿。
>今は婦長って呼ばないですよー
看護婦を看護師と言うように決められたのは2002年だそうです。このサイトの投稿話には、時折大変古いものが取り上げられるようで、この話も、もしかしたら2002年頃か、それからあまり時がたっていない時期のものかも知れません。
読後の悪いお話でした。なんかさみしい。
痴呆老人の演技をして、なにもせずにただ生きているだけとか、とんでもないストレスのはず。虐待を告発したいなら、本来はまず病院関係者に味方を作るべきだし。
それをあえてボケた振りをしてたって事は、自意識を保ってると周囲にばれたら命が危ういような、それまでの人生全てを台無しにされるような危険があったのではないだろうか。
冒頭で滅茶苦茶ヤバい病院だって断りがすでにあるし。そこの病棟は、親族が早く死んでほしい資産家老人を押し込める姥捨て施設だったんじゃないの?
母親を家族ぐるみで半身不随にしておいて、黒い病院に閉じこめて、隠し口座の暗証番号を聞き出そうと毎日妻に尋問させてたとかさ…。
北原多香子が浮かんだのは私だけだろうか?
そしてシズさんはスポンジまで食べてボケた演技をする必要はどこにあったのかな?
まあ好戦的なバカちんがこうやって殺しあって共倒れしてくれたら世界は平和になるなー
お前みたいなバカがいる限り無理だろうな
あと多香子さんは語り手に見られたのに気づかなかったのかな。
1人だけを騙すならまだしも、家族に加え、医者とか全員だましてたんでしょ
冷静にありあないだろしね