中国で捕虜になっていたじいちゃんの話。

通化事件の後、
じいちゃんを含む日本人の捕虜は、
日本人の遺体を穴を掘って埋める作業をさせられていた。

朝から夜まで作業は続き、
休んだり気を抜いたりすると
監視役の中国兵から暴行を受けるのは普通だったらしい。

じいちゃんの班の監視役の中国兵は、
日本兵から取った軍刀を持って見回りをしていて、
いつ切られるかと怯えながら、
異臭が漂う中黙々と作業をこなすしかなかったらしい。

ある晩、じいちゃんの班の仲間が、
過労に耐えかねて立ったまま寝てしまった。

それを見つけた監視役の中国兵は、
じいちゃんの班を整列させて、
散々罵った後に全員切ると言って刀を抜いた。

もう終わったと思い観念して目をつむったが、
誰の断末魔も聞こえない。

何故かと思い顔を上げると、
監視役の中国兵が刀を抜いたまま固まっていた。

不思議に思って眺めていると、
中国兵は刀を落として官舎へ戻って行った。

良かった助かったと班の仲間と喜んでいると、
他の班の日本人達がかけよってきて、

「お前たちの掘っていた後ろの墓穴から鬼火が出とった」

と口々に言われたらしい。

戦場じゃ不思議なことが起こるんじゃと笑って話していた。

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