同窓会で思い出した話

私が小学4年生くらいの頃の話です。

まあまあの田舎に住んでおり、
近所に小高い山があったので私たちはそこで遊ぶことがよくありました。

その日は土曜日で午前で学校が終わるのもあり、
学校で近所の同級生の友達1人を

「山登って今回山の反対側まで行ってみようや!」

と1人テンション上がって誘い、
彼は乗り気では無さそうでしたが
テンションに押された様子で一緒に行くことになりました。

そして放課後。

いざ行こうとなると彼も気合が入って来たようで

「反対側に知らない村があったらどうする?」

等あれだこれだと言いながら一緒に下校しました。

一旦帰宅してから彼と合流し、
山に向かうと急に天候が悪くなり
曇り空に加え風も強くなり始めました。

急に暗くなったのもあり、
山に到着するといつも登っている山が何だか不気味に見え、
2人とも山を前に黙りこくってしまいました。

すると山の方から

「バターン!!!バターン!!!バターン!!!」

と木の扉を物凄い勢いで締める様な大きな音が聞こえてきました。

驚きと、何の音か分からない混乱で
10秒程度息を殺してました。

私は恐怖のあまり興奮して

「山!?
風でドアが開いたり閉まったりしてんのかな!?
山に家なんてあったっけ!?」

と言うと
彼は

「山小屋があるって聞いたことはあるけどこんなに近くにあったんだ!!
行ってみようよ!」

と私とは裏腹に好奇心が勝った様子でした。

こう話している間にも

「バターン!!!バターン!!!」

と音は休まず続いています。

言い出しっぺである私は断る訳にいかず

「おっしゃ!」

と音のする方向へ向かおうとすると
急に音がなくなりました。

私「あれ?ドア壊れたんかな?」

友達「風止んでないし。かなぁ?」

兄貴にはこっちじゃないと聞いたやら何やら話し込んで2人で顔を合わせていると
視界の山側に違和感を感じました。

不自然な何かがある。

私はその何かを確認するのが怖くて
そっちを見れないでいました。

友人は気がついていない様子で

「やっぱ近所の普通の家だったんかな?
いや、にしては。。。」

などと推測にふけっていました。

その何かはずっと視界に入ったまま動かないでいます。

怖いけど、このまま登るともっと怖い目にあうかもしれない。

そう思うと、
それを確かめたいという気持ちが段々と強くなり、
その何かに視線をふっと移しました。

すると30メートルくらい先の木の陰から誰かがこちらを見ています。

女性、若い女性。

20歳辺りの女性。

黄色っぽいコート。

下半身は木に遮られて見えない。

直立しており、
怖い顔をしている訳でもない。

何で山に?

気味が悪いとは思いつつ、
パニクって逃げると私が女性に気がついたことがバレる(もうバレてるかも)。

バレてたとしても追いかけられたりもっと危険なことになる、
と考え、私は友達にバレないように

「やっぱ大雨になったらドロまみれになって怒られるからゲームしようや」

と言い、彼も

「なんか俺も今日はゲームの方がいいと思うわ」

と言いそれぞれの家に帰る事になりました。

恐る恐る、
家まで追いかけて来ないか、
背後にいたらどうしよう。。
と思うと恐怖が増し、
友達と別れた後なんて気が気じゃありませんでした。

心臓が飛び出しそうなのを押し隠し
一歩一歩進みようやく自宅につき、
ゲームをして恐怖を紛らわせ、
両親が帰宅した頃には恐怖心は無くなっていました。

怖がりの私にしては珍しく
夜もぐっすり寝る事が出来ました。

翌日。

昨日は結局雨も降らず、
昨日の友達とその山へ向かいました。

その日は快晴で

「絶対小屋があるよ!秘密基地にしようで!」

などと昨日の恐怖が薄れ
遊ぶ事で頭が一杯になっていました。

そして山に入りこっちの方向だったかなーと先頭を切り歩いて行くと
昨日女性がここから見ていた。。

と、ふと昨日の女性の事を思い出し立ち止まって、
一瞬寒気がしたものの、
そのまま山の奥へ進みました。

ある10分程度進んだ所で
半径2メートルくらいの平らな所にが見えてきて、
そこに綿がポツポツ落ちています。

しゃがみながら下に他に何か無いか探していると、
手のひらサイズの綿を見つけ、
それを手に取り

「何だこれ」

と振り返り友達に見せると
真っ青な顔でこちらを見ています。

私は立ち上がりながら

「わたの何が怖」

と言いかけ前に振り返ると
頭上の木に大量の釘で打ち付けられ引き裂かれたのクマの人形がありました。

「っ!!!!」

と声すら出ませんでした。

沈黙が続き

「昨日の音ってこれか!」

と恐怖を紛らわすために
引きつり笑いをしながら当たり前のことを言いました。

友達は青ざめながらも
ゆっくりとこちらに近づいてきました。

「しかしハンマーであんな音するんだなぁ」

と言いながら平静を装っていると、
登ってきた昨日の友達が

「あれ。。」

と言って指をさしました

そこには木に隠れて見えなかった
ボロボロになった黒い木製バットらしきものがありました。

こんなに大量の釘をバットで?
昨日の女性のが?何でバット?
などその時は考えもせず

「これか。。」

と友達がバットを近くで見ると

「ひっっ!」

と声をあげました

「どうした?」

とバットをよく見ると、
バットでは無く束になった卒塔婆でした

黒と思っていたのは
黒っぽくなって固まった血でした。

恐らく握っていたであろう部分は血を捻った跡があり
先の方にかけて卒塔婆に木の根っこ状の模様で、
卒塔婆に血管が生えているかのように血が固まっていました。

それが怨念を込めた塊の様に見え、
その場自体がそれに覆われている様な気がして
卒塔婆に手を合わせたあと、
2人共猛スピードで先に進みました。

背後を見ると
あの女性がこちらをまた直立不動で見ている事を想像して
後戻りできませんでした。

そして30分くらい走って歩いてを繰り返し限界が来た頃に、
突然反対側の景色が見えました。

そこは墓でした。

ですが恐怖心よりも墓があると言うことは
もうすぐ民家がある!という気持ちが勝りました。

墓を下って行くと神社が見え、
民家が見えて来て、
恐怖から逃れた安心感でその場で座り込んでしまいました。

そこで登って来た山を見ると
墓の上の斜面の木陰から昨日の女性がこちらを見ています。

山で背後に戻ってなくてよかったー!
と心の底から思いました。

その後また気がつかないふりをして
無事帰宅しました
(山の裏側の民家は山を使わない方が近かったです)。

その日の夕方、
私は何かに取り憑かれたかのようにその山へもう一度行きたくなり、
その山を前にすると、何か視線を感じました。

キョロキョロその出どころを探しましたが分からず
そのまま進もうとした時です。

視線が背後からだと分かりました。

その山に面した人が住んでいないと思っていたボロボロの二階建住宅。

そこを反射的に見ると
二階の小窓から女性がこちらをじーっと見ています。

例の女性のです。

その時気がついたのですが、
怖い顔をしているというより、穏やかな顔をしており、
恐怖を感じるどころか、
こんな遅くに山に入ったら怒られるかなぁ、
と冷静になり自宅へ帰りました。

後にその山で遊んだ時には
釘も人形も卒塔婆も無くなっていました。

その後何度もその山で遊んだのですが、
あれ以来、山でも、向かいの二階建でも
その女性を見ることはありませんでした。

何故あの時だけ現れて
こちらを見るだけだったのか分かりません。

同窓会で友達とこの話になり、
実は同じく女性に気がついていたらしいのですが
誰にも話さなかったそうです。

友達曰く

「山で釘打ってた奴とは別の存在で
その危険な奴に会わせない為に出て来たんだよ」

ですが私は、
今まで幽霊を見たことが無いと思ってます。

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