場所が特定されては地元の人が困ると思うので、
あまり詳しくは明記しない。

先輩、後輩、オレの三人で◯県に
試合の遠征へ出掛けたんだ。

試合も終わって観光にでも行こうかと
三人で話していたら
遠征先の知り合いの先輩に

「ものすごく気味の悪い社が近くにあるよ」

と言われ
ノリと勢いの体育系!ノリで呪われたい!
と、レンタカーで直行することに…。

最初はちょっとした悪ノリなんだよね。

後悔先に立てよ…と今なら思う。

時間は21時頃だったかな

お社のあるという近くに車を停車。

確かにあたりは暗いが
さほど言うほどの不気味さもなく
拍子抜けした感じ

明日も試合が控えていて
適当に雰囲気を楽しんで
酒飲んで休みたいと思いながら
お社がある階段へ

お社は◯の宮と△の宮と対で
谷型にあると言えば分かりやすいかな?

両方のお宮に行くには登って降りて、また登ってと
なんとも不便な作りをしている社だった。

鳥居から先の階段は
確かに不気味…とゆうか灯りが一つもない。

お社があるであろう上を見上げても見当たらない。

オレと後輩はここでビビる

というかケガでもしたら洒落にならん。

先輩を止めようと思い立ったが
脳筋でDQN、類い稀な運動神経で人生を潜り抜けてきた彼は
無言のままに登って行く。

止める暇もなく、
二人で慌てて追いかけながら、
iPhoneのライトを照らす。

中腹まで来ると照らしていないと
暗すぎて何処にいるのかすら分からない。

階段も神社にあるような
管理のいき届いた白階段ではなく草は生い茂って、
石段も朽ちているようなボロボロな石段で、
油断をしていると踏み外しそうだった

オレと後輩の照らしているライトを頼りに
先輩は登っていく。

お前ら照らす役目やろが位な勢いで
ズンズン登っていく。

アホなのか、クソ度胸なのか

多分、アホなんだろうな…

お宮のある頂上まで10分位

暗くて時間が麻痺したのか、
慎重に登ったこともあるのか
ものすごく時間が経った気がした。

変わらず辺りは生い茂っていて管理している様子はないが、
そのお宮というのか、お社というか
その一画だけは綺麗だった。

畳四畳位の小屋があり
今迄に見た事のない造形物。

その前には鳥居はあるが、何かが違う。

照らしながらそちらに近づいてみると
鳥居からその小屋の壁面まで
ほぼ写真で覆い尽くされている。

見た事のない光景にア然としながら
先輩はなんの写真なのか物色し始める。

人の写真
犬、猫の写真…

様々な写真が貼り付けてあったが
きっと何か弔う為にこの形をとっているんだろう。

それは頭がビルドアップされた先輩も感じとったようだった。

下手な心霊スポットと違い
いたずらにすべきものではないなと思いながら

「ドスンッ」

お宮の後ろの方で音がした。

ビクッとオレは反応したが、
先輩と後輩は気にも止めてない様子。

「なんか音しませんでした?」

先輩に聞いたが、
フンと鼻で笑われ

「もうひとつあるんだろ?」

「そっちにもいこう」

と来た階段をさっさと先輩は降り始める。

また慌ててオレと後輩は後を追う。

先輩はライトがないので
オレ先頭、先輩真ん中、後輩後ろと
ドラクエ方式で降りることに。

なんのためにあんな事してるんだろうか?

地方には変わった風習があるんだなと考えながら
足場の悪い階段を注意深く降りていった。

だんだん目もなれて
下の方は山道の灯りも点々とだがあるので
だいぶ歩きやすくなった。

「トントン」
「トントン」

とオレの左肩を叩いてくる。

…先輩はこんな気味悪い場所でもイジってくんのか。

シカトを決め込む

「ドン」
「ドン」

今度は背中を突き手のようにして押してくる。

仕方ねえなぁと思いながら

「ちょっとぉ、怖いじゃないすか~笑」

と振り向きざまに押している手を払いのける

が自分の右手は空をきって
先輩と後輩はキョトンとしながらオレを見ている。

こいつらと…頭にきて
オレ駆け足で階段を駆け下り
へ?みたいなことを言いながら
二人とも追いかけてきた。

降りきった時に自分だけが
心臓はバクバク。

呼吸も乱れていた。

「意味分からんわ」

と先輩

かくかくしかじかと説明はしてみたが
キョトンとするばかり。

「もう分かった。
お前と後輩はここで待っとけや」

「iPhone貸せ」

オレのiPhoneをぶんどって
先輩は一人でもうひとつの△の宮に登り始めた。

後輩はオロオロしながら
オレの様子がおかしいのでその場に一緒に居てくれた。

頭が痛い。
寒気がする。

あまりにも寒すぎて
後輩の太腿と太腿の間に両手を突っ込む。

寒い!寒い!と連呼しながら、
ガチガチと歯がなる位震え始める。

この段階で意識朦朧。

もう目は開けれなくて

「おーーーーー」

という低い男の声の幻聴が聞こえ始める。

後輩の叫び声が遠くで聞こえる。

「先輩ー!Aさんマジでヤバいっす!」

ここから先は聞いた話

先輩が急いで戻ってくる。

オレを担ぐ。

担がれながら吐きまくる。

車に無理やり乗せ、後輩運転。

先輩介護。

街までおりて救急車搬送。

オレ意識なし。

目を覚ましたのは次の日の昼過ぎ。

病院のベットの上。

嘔吐物で息がつまらないように
ホースやら何やらつけられてた。

なにかの中毒状態だったらしい、
が心当たりなし。

三人とも団体行動をして、
ここ三日間ほど同じ生活。

何処でなにを食べたか?
おかしなものを飲まなかったか?

色々調べられたが特定に至らず。

検査終了。

先輩が試合を終えて、
夜みんなで帰るはずだったが医者に止められ、
次の日に延期。

帰る当日
発疹のようなものが出来始めるが
身体も気持ちも疲れてて自宅が恋しくなっていた。

お医者さんには話さずに、
薬となにかあったらここの病院に行きなさいと教えてくれて
みんなでお礼を言い◯県を後にした。

一人暮らしの自宅に帰宅すると背中が痒く
見てみると発疹は赤い斑点のようになって膿んでいる。

なんだよこれ?と泣きそうになりながら、
薬を飲んでその日は就寝。

朝起きても気怠く、熱も高そう。

這う様にして先輩に電話する。

先輩がきてくれたが、
朦朧としているオレを見てDQNの勘で危険を察知したらしく
お袋に電話してくれた。

すぐさまお袋はすっ飛んできて、

「あんた、ナニしよったんか!」

と、オレに怒号…。

なにかの中毒な状態だったんようなんですが
再発をしたみたいで…。と
先輩がやんわりと説明してくれて
なんとかお袋も取り敢えず納得し、
こりゃ病院行くしかないなと紹介してくれた大きい病院に直行。

して入院。

やる検査は一緒だったが今度は本格的

しっかりCTを撮って胃の洗浄も行なった。

三日後にはもう大丈夫とお医者さんに言われた。

ただここまで悪化する原因がわからないと
お医者さんもアタマを悩ませていたが、
取り敢えず回復にむかって食欲も湧いてきた。

退院をして程なく部活にも顏を出せるようになった。

稽古後に、先輩と後輩が神妙な面持ちでそばに来て
近くの大きなT神社にお祓いに行こうと誘われた。

もう身体は大丈夫だったので、
これ以上心配かけさせたらマズイと思い

「ビビってんすか」

と二人に軽く言うと

「不本意だが、そうとって貰って構わん」

「お前だけじゃなく、
オレやこいつもお前みたくなったら敵わんし」

稽古後のその足で神社に向かった。

事情は神主さんに話してると言う。

お祓いをしてもらい、
祝詞?よく分からないが
言われたままに座っていた。

儀式が済み、
静かに神主さんが喋り始めた。

「あなた達のような人がくるのは珍しくありません」

「皆に言うのは原因は分かりませんし、
それを祓うなどという事はない。
またそれが仇なすという事もありません」

「災は字の通り人が作り出すものです。
あなたたちが起こしたことは間違いで、それに気づいた。
神様にはこの人達頑張るって言ってるから応援してあげて下さい
と御祈りさせて貰いました」

「神様や仏様は助けてくれません。
見守ってくれているだけです」

「助けてくれるのは人。
困らせるのも人。
自分はどちらなのか必ず念頭に置いて行動をして下さい」

神主さんの迫力と至極全うなお説教を頂いて
三人とも意気消沈。

先輩の部屋で酒を飲みながら三麻をし、
オレが倒れた話で、
泡を吹いたのは演技だったんだろ?と冗談話に茶化し始める。

冗談なわけないでしょと怒りながら話していると後輩が、
そういえばもうひとつのお宮はどうだったんですか?
と聞き始めた。

先輩は真顔になって話したく無さそうだったが、
懺悔のように話し始めた。

建物とかはそのままだけど写真はなかった。

けど…建物覗いたら骨壷とかがいっぱい置いてあった。

オレよく分からんけど、
行き場のなくなった色々なもんの無縁仏みたいな場所なのかなと思ったと。

偶然ああなったけど
お前がああなったのはあの行動が原因だと思う。

世の中には知りもしないで踏み込んじゃいけんことがあるわな。

よっぽど人のが楽じゃの、
殴りゃ言うこと聞くもんな!

違った方向に反省をしてる気もしたが、
その後は皆、無事に進学し

先輩は神仏に熱心な主将として、
怪談や肝試しの類は一切禁止の部活になりました。

事あるごとに私のヘタレっぷりを後輩達に喋っていまいしたが…。

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