俺の地元には大小の山の中に、
ひときわ小さな山がある。

本当に小さな山だ。

でもなぜか、大人と一緒であろうと、
子供はこの山に登ってはいけないということを聞かされていた。

理由を親や先生に聞いても教えてくれないし、
他にも色んな山があるのに、
その山だけ子供は立ち入り禁止になってたし、
なにより周りに神社が密集しているのも、
何か気になっていた。

神社は、小さくて無人のところがほとんどだけど
神主さんが住んでるところが1か所ある。

神主さんの敷地に干してあった
干し柿取って食べたのはいい思い出w

そのこと神主さんは知ってたみたいだが、
それはまた別の話ね

まぁ干し柿取って食べたってことからも分かるかもしれないけど、
小学生の時分、俺はなかなかの悪ガキだった。

ダメだダメだと言われるほど、
何としても入りたくなるのは人間の悪いところ。

俺は、友達を連れてその山に入ることにした。

連れて行った友達は2人。

A=地元から離れた今も、結構遊ぶ。面倒見が良くていい奴

B=ビビリ。いじめてたわけじゃないけど、連れまわしてた気がする。

夏休みにこの3人で、
山に入ろう!ってことになったんだ

Aは俺と一緒に調子に乗ってたし、
Bもビビリだけど好奇心はあったみたいで快諾した。

何だかんだで、
みんな山に入りたかったのかな

そして、決行の日。

親には朝から、
プールに行ってくるって抜け出してきて集合した。

もちろん、
バッグに水着やタオルが入っているわけも無く、
中身は邪魔になるからできるだけ空にしておいた。

Aも同じ感じだったけど、
Bは水泳の授業の時と同じ中身だった。

いざ出発しようとしたが
ここで問題が発生。

山に続いてる道は、
神主さんの住んでる神社の方から繋がっていて
(その道は頂上まで行ってるかどうかは分からないらしいけど)
ずっと一本道で、反対側の無人の神社の方に出る道になってる、
とBから聞いた。

Bはビビリだったから、親が

「この子は山には行かないだろう」

と考えて、子供には教えない、
山の道の詳細を教えていたのだと思う。

それを聞いて、俺たちは考えた。

子供は出入り禁止だから、
当然見つかる可能性のある、
神主さんの住んでる神社の方の道からは行けない。

進めそうになければ引き返せばいいし、
人に見つかる可能性を極力減らすことが大事…

俺たちは、
無人の神社の方の道を目指し、
遠回りして進んで行った。

道と言っても舗装もされてない、
獣道より幾分マシだってレベルということに気付いたのは、
現地に着いてからだった。

俺らは周りに人が見ていないかを確認し、
こっそりと山に登って行った。

山の道は大人一人が歩ける程度で、
小学生の俺たちからしたら、
進むのに全然問題は無い広さだった。

← 俺 A B

という隊形で道を進んでいく。

ふと、道の横の木を見ると
クワガタを発見!

子供にとってクワガタはカッコよさの象徴、
夏休みの主役たる絶対的な存在であることは間違いない。

しかしあいにく、
俺たちが持ってきているのは
空のプールセットのみ(1名中身有り)だったので、
バッグにクワガタを入れるのも可哀そうな気がして、

「明日は虫カゴ持ってくっが」

と話しながら奥に進んで行った。

なぜか進むにつれて、
Bがときどき変な声を出していたし、
Aを急かしていたが、
Bはビビリなので、
俺たちは、いつものことと大して気にせずに、
頂上を目指して歩を進めていた。

山に入るときに小さく見えていた入道雲が、
山に近づいてきたころだったか、
俺たちは道が下り始めたことに気付いた。

このまま進めば、
例の神主さんの神社に出る。

大したものも無かったな、と思い、
二人に、もと来た道を戻ろうかと声を掛けた。

Aはそれに同意したが、
何故かBは「進む」と言い始めた。

このまま進んだら、ほぼ確実に誰かに見つかるし、
見つかったら大人から滅茶苦茶に怒られるのは確実なので、
俺とAは大反対した。

それでもBは「進む」と言葉を曲げず、
そのうち震え始めた。

不審に思ったAが理由を聞くと、
Bは

「視線を感じる」
「音がする」

と言う。

話をまとめると、
誰かついてきてるとのこと。

俺やAはまったく気が付かなかったけど、
Bは自分の後ろの方に誰かいると思ったそうだ。

そして、もと来た道を帰るとなると、
その「誰か」に向かって進まなければならない。

それは怖いとのこと。

俺たちはそれに全く気付かず、
気のせいだろうと説得したけど
Bがどうしても怖がるので、
俺が先頭に立って、
もと来た道を戻ろうとした。

第一、大人なら
大声をあげながら捕まえに来るだろう。

もう、道は神主さんの住む神社へと下り始めているから、
引き返して頂上に着くまではまた登りだ。

引き返そうとすると、
少し先の道に影が見えた。

まずい!大人たちに見つかった!
と思って身構えたが、様子が違う。

ゆっくり近づいてくるのは分かるが、
少しずつ距離が近くなり、
良く見ると人では無い。

黒い影が、
しかも1つではなく3つも、
こっちに近づいてくる!

影が何か喋っているが、
離れているので聞き取れない。

俺は完璧に固まってしまった。

AとBは少しして、
人では無いことに気づき、
叫び声を上げて逃げだすまで俺はフリーズしていたが、
2人が逃げ出すのにつられて、道を駆け下り始めた。

途中、Bが転んでバッグを落としたが、
俺はBを抱え起こしたが
バッグを取るまでの余裕までは無かった。

ふと後ろを見ると、
必死に走っているにも関わらず、
影との距離があんまり離れていないことに気付いたので、
さらに必死になって道を下った。

そのまま麓まで下り、
境内の掃き掃除をしていたであろう神主さんが、
呆気にとられてこっちを見ているのが分かったので、
すぐに神主さんに泣きつき、
黒い影の事を話したら凄い剣幕で3人とも怒られ、
本堂に入るように言われた。

お祓いに使う時のあのモサモサで色々やられたり、
詔みたいなのを聞かされたりして、
暫くの間、本堂から出られなかった。

そのあともちろん、
親には叩かれるし、説教されるし泣かれるし、
夏休み中であるにもかかわらず、
学校に行って先生から説教されるし、
俺とAは神主さんから

「良いと言うまで山に近づくな」

と言われるし、
色々と周りに迷惑を掛けたことが分かった。

しかしBだけは、
今後はこの山だけでなく、
近くの神社にも近づくなと言われていた。

俺とAは神社まで出禁にはならなかったため、
次の日にもお祓いに行ったときに聞いたんだけど、
内容はこんな感じだった。

何百年か前、
突然この近辺に得体のしれないものが現れた。

土地神なのかどうかさえわからないが、
神主さんでも今もって正体は分からない。

見た目は俺たちが見たような黒い影。

そいつは山を登り始めると後ろから時々ついてきて、
その人と変わらない速度でついてくるけど、
そいつに追いつかれると祟り殺されてしまう、
ということだった。

後ろから付いてくるから、
大人内ではオツキサンと呼ばれてるそうだ。

つまり、
オツキサンがいる山を山登り中になまじ休憩していると、
オツキサンに追いつかれて祟り殺されるってことだ。

この話にはまだ続きがあり、

オツキサンは、
元はもっと大きい山にいたらしいが、
いつのまにか今の山に来ていた。

大きい山にいたときは少なからず被害が出ていたが、
今の山に来てからは、標高が低いことから、
人が途中で休憩することもあまりないため、
被害が出なかった

しかし、それを知らずにこの山で遊んでいた小さい子供が
突然死んでしまったため(理由は不明だがおそらく…)、
他の山にオツキサンが移動して、
これ以上被害が拡大しないためにも、
この山からオツキサンを動けなくするように、
周りを神社で取り囲んだ、というわけだ。

そして子供が立ち入り禁止になっている理由は、
山が一本道とはいえ体力のない子供は、
途中で休まざるを得ず、
その結果オツキサンに追いつかれる可能性があったこと

あとは単純に、
前の例で子供が死んでしまったため、らしい

俺とAがその山に近づくな、と言われた理由は、
オツキサンは普段は何もしゃべらず、
ただ後ろからついてくるだけのものらしいが
俺が何か喋っているのを聞いた、ということは、
視覚だけでなく聴覚による接触もあるため、
通常の遭遇者よりも強い「縁」が出来てしまったこと

このままではオツキサンの寄り代になる可能性が高く、
またその山に入った後に別の山に行くと、
最悪そっちの山にオツキサンが移動してしまう可能性がある、
とのことだった

そして、何より俺たちの中で、
オツキサンと最も強い縁で結ばれたのはBだ。

Bの落としたバッグは、
Bを抱え起こすときに、
確かに俺たちの後ろに転がっていたのを俺は見たのに、
結局見つかることはなかった。

今は、時々しか地元に帰ることは無いし、
そのことを話すとAもBも笑い話になるが、
結局その影の正体は分からないままだった。

そして、俺たち3人の中で一番のビビリBは、
あの一件以来、山恐怖症になるかと思いきや、
現在大学に進学した今は登山部に入部している。

お前、他の山に影を持って行ってるんじゃないか?

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