母が体験した事を書きます。

もう何十年前になるか忘れたが、
あるお盆の夜に、
母が血相を変えて帰ってきた。

落ち着かせて話を聞くと、
こんな話をオレにした。

たしか知人の家から帰る途中、
近道をしようと思い、
墓地を通り抜けたと言ってた記憶がある。

墓地と言っても、
さほど大きいところではなく、
せいぜいマンション一軒分くらいの広さだ。

ただ、明かりなんてほとんど無いので、
薄気味悪いところではあったが。

だが、寺の多い町で生まれ育った母にとって、
墓地は遊び場だったと聞いたことがあるので、
墓地が怖くないから、近道したんだろうと思う。

さて話の続きだが、
母が墓地を歩いて、
真ん中あたりに来たときに、
あちこちからボソボソと声が聞こえてきたそうだ。

あぁ、お盆やからねぇ。
お参りに来とるんだわ。

気にすることなく、
歩き始めた母だったが、
少しかわった事に気がついたそうだ。

・・・だれもおらん。

少し怖くなったので、
早足でそこを抜けようとした、そのとき、
ボソボソした声が、だんだん近づいてきたそうだ。

よく聞くと、
大勢の人間の声で、何か話している、
というか、こちらに話しかけている。

老若男女のまじった、
小さいが大勢の声が、
自分をかこむように、
だんだん近づいてくる。

固まってしまった母の耳元に、
声たちはだんだんと近づいてきて、
最後に耳元でこう言ったそうだ。

きいて

その後、
無我夢中でパニックになりながらも、
家に転がり込み、

オレにそんな話をした、
ということだ。

それから何年の後に、
その墓地は、都市計画によって移転させられてしまった。

オレの伯父が、
そのころに役場の都市計画課にいたのは、
単なる偶然だったのだろうか。

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