僕の友人に不思議な奴がいます。

自宅は壁一面に無数の死体の写真が貼られており、

テーブル、タンス、窓枠、
つまり物が置けるスペース全てに、
隙間無くロウソクが立たされておりました。

毎日空を見上げながら歩き、
病院に忍びこんでは霊安室に行き死体をみたり、
時には動かしたりもしていたようです。

しかし、
話してみると案外普通の奴なんで、
仲良く付き合ってたんですが、
そいつの小学校のクラスメイトと別の所で知り合った時に、
昔の変な話を聞いたんです。

「アイツ走り出さない?」

そう言われた僕は意味が分かりませんでした。

聞き返すと、

「あー、今はそんな事無いのかな。
アイツ小学校の頃、
突然叫びながら走り出すクセがあってさ、
そのまま居なくなっちまうんだよ。
家にも帰ってなくて、一回大騒ぎの大捜索になってさ。
3日経って帰って来たんだけどね」

そこまで痛い奴だったのか、
そう僕は思ったんですが、
話には続きがありました。

「それで先生がどこ行ってた!!って怒ったら、
アイツ『空』って答えたんだよ」

「でさ、学校に一泊する行事があったんだけど、
アイツに遅刻したんだよ、丸一日も!
一泊終わった次の日の朝に、
リュック背負って学校来たんだよ!
皆で爆笑したんだけどさ、
実は裏では大騒ぎだったらしくて。
アイツ、ちゃんと前日の朝家出てたらしいんだよ。
で、学校来ないから、
父兄も教師も失踪かもってかなり探してたらしいんだわ」

その話を後日アイツにしたところ、
アイツは真剣な顔で僕に言ったんです。

「頭がおかしいとは思わないでね。
でも空に行ったんだ。夢かもしれないけど。
学校宿泊だってちゃんと朝家を出た。
道をいつも通り歩いて行った。
でも、着いたら次の日だったんだ。
小さい時から、親からもおかしいって言われ続けてきた」

そう言って窓を開けると、

「証拠を見せる」

と言って口笛を吹いた。

「こうすると返事が来るんだ」

するとどこからともなく電子音のようなものが聴こえてきて、
口笛と合わさり、
その数は増えつづけ、
大合奏のメロディとなったのです。

その日を最後に、
アイツは消息を絶ちました。

アパートも引き払って、
実家は空家になっておりました。

そしてあの大合奏を、
近所の誰も聴こえなかったと言うのです。

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