自動車免許を取りに行っていたときに、
免許センターで仲良くなった人から聞いた話。

筆記試験が終わり、
知り合いも来ていないし1人でぼーっとしていると、
20代後半くらいだろうか?

サラリーマン風の人が話しかけてきた。

その人はとある手違いで免許証を失効してしまったらしく、
最初はその経緯なんかをおもしろおかしく話していたのだが、
ふと

「まあ信じなくても良いんだけど…」

と奇妙な話をし始めた。

その話というのは、
その人(仮にA男さんとします)が
前に不動産関係の職に就いていた時の話だった。

A男さんがその職場に就職して2年目くらいの頃、
とある物件を買い取る事になり、
その調査に上司の同行としてついて行ったらしい。

その物件というのはどうも競売物件らしく、
色々と「わけあり」だったらしいが、
その時はA男さんは詳しい話は教えてもらえず、
本人もその事を特に気にしていなかったらしい。

現地につくと普通の民家で、
特に変わった事はなかったらしく、
そのまま室内に入って
色々と手続調査などをする事になった。

調査も順調に進み、
さあ次は2階だと話していた頃、
ふいに2階から

「パタパタパタパタ…」

と、子供か少し大きめの犬が走るような音が聞こえてきた。

上司とA男さんは顔を見合わせ暫らく無言だったが、

「まあ何か風か何かで何かが揺れたんだろう」

と、そのまま2階へ上がった。

暫らく2階を色々回っていると、
今度は2階の奥のほうの部屋からまた

「パタパタパタパタ…」

と走るような音が聞こえてきた。

流石に2人ともおかしいと思い、
音のする方へといってみると
どうやら音源は一番奥の部屋らしく、
そこから走るような音がずっと聞こえてきていた。

A男さんは流石に怖くなったらしく、
上司に

「何なんですか…?」

と聞くと、上司は

「ちょっと入ってみる」

と言いドアを開けた。

A男さんはビビってしまっていて、
部屋の中を見ることも出来ずに壁際に張り付いていたらしい。

ドアを開けた直後、

「うわっ!」

という上司の声が聞こえてきた。

あわててA男さんも部屋を覗いて見て、
上司の悲鳴の意味が解った。

その部屋は8畳くらいの部屋だったのだが、
四方の壁紙がボロボロに剥がれ落ち、
そこに無理矢理といった感じで何十枚、何百枚というお札が貼られ、
更にそのお札の殆どがボロボロになって剥がれ落ちているという有様で、
明らかに他の部屋とは部屋の損傷具合が違い、異様な空間になっていた。

そして、更に不気味だったのが、
明らかに部屋は無人なのにも関わらず、
部屋を誰かが走り回るようなパタパタパタ…という音が
部屋の中心でずっと続いてた。

まるで部屋の中で子供がはしゃいでいるかのように。

A男さんはそれでここはただ事ではないと思い、
呆然としている上司を無理矢理部屋から引っ張り出し、
急いで部屋のドアを閉めると
そのまま全く動かない上司を引き摺るように屋外へ飛び出した。

外に出てやっと少し落ち着いたA男さんは、
上司に

「…何なんですかね…あれ」

と聞いたのだが、
何か上司の様子がおかしい。

目の焦点が合っていないというかなんというか、
上司は呆然としたまま無表情で直立の状態で、
何度話しかけても反応がない。

何度か話しかけると

「ああ…」

とか

「うう…」

とか反応はあるのだが、
一切会話にならない状態だった。

A男さんは何がなんだかわからず頭が混乱していたが、
混乱しながらも上司をなんとかしなければと、
携帯で救急車を呼んで暫らく待っていた。

救急車を呼んで2~3分した頃だろうか、
突然A男さんは後ろから肩をガッと掴まれた。

びっくりして後ろを振り向くと、
年齢は80歳くらいで髪がぼさぼさ、
ボロボロの服を着たお婆さんが
物凄い形相でこちらを睨んでおり、
A男さんが

「何ですか?」

と聞くとおばあさんは
突然大声で

「お前もか!お前もあいつらの仲間か!
お前らも呪われてしまえ!!!!」

と叫び出した。

騒ぎを聞きつけ近所の人が出てきたのだが、
それでもお婆さんは絶叫をやめなかった。

近所の人たちは、
まるで何かを察したかのように
冷静にお婆さんをA男さんから引き離し、
お婆さんを宥め始めた。

そしてA男さんと呆然としている上司を
少しはなれたところに連れて行き、
お婆さんの身の上などを話してくれた。

お婆さんは若い頃あの家のあった土地に住んでいたのだが、
○○○に何年も嫌がらせをされ、
とうとう耐え切れなくなって
家族で一家心中をしてしまったらしい。

しかし、
発見が早かったためお婆さんだけが助かり、
お婆さんの夫と一人娘は治療の甲斐なく死んでしまった。

その事実を知ったお婆さんは
それから数年は落ち込んだりもしたが、
近所にアパートを借りて普通に暮らしていたらしいが、
だんだんとおかしくなっていき今のようになってしまった。

そして、あの土地は
そのまま○○○に乗っ取られてしまった。

近所の人はこうも言っていた。

「旦那さんと娘さんは余程悔しかったんだろうね…
それいらいあの家ではおかしな事が何十年も続いてね、
土地を乗っ取った○○○も、
後になって土地を買った人も発狂して自殺してしまったんだ」

「あなたもそうなりたくなかったら
あの土地には関わっちゃいけない」

と。

A男さんはその後、
今件とは別の事情でその職場を辞職した。

上司の方は、
入院して3日後に意識を取り戻し、
その後はとくには何も無いらしい。

上司の話では、
部屋のドアをあけたところまでは覚えているらしいが、
それから意識をちゃんと取り戻すまでの間の事は
何も覚えていなかった。

ここまで話すと、
A男さんは

「世の中には説明の付かないことってあるんだね」

「人間の恨みというのは恐ろしい」

と言っていた。

俺はこの話が事実かどうかは確認のしようが無いし解らない、
ただ、怖いというより悲しい話だと思った。

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