まだ実家に住んでいて、
毎日仕事三昧だった頃の話。

その日は何週間ぶりかの休みで、
いつもの癖で朝六時に目が覚めた。

自分の部屋は和室なんだけど、
朝日でゆっくりと目覚めたい私は、
雨戸をいつも開けて寝ている。

障子から朝日が射してぼやーっと明るくなり、
鳥の囀りなんかが聞こえてきた。

頭もぼーっとしてる私は、
暫くしてから今日が休みだって気付いて、
二度寝することにした。

実家はど田舎なもんで、
早朝ってめーっちゃ静か。

だもんで、すぐまた眠りに落ちた。

ふと気付くと、
夢の中でばーちゃんちに居た。

ばーちゃんちは平屋で
寝室を襖で挟んだ向こうにリビング?がある。

そこに親戚やら家族やらが座ってテレビをみていて、
私は一人布団で寝ながら、
その様子を少し空いた襖から見ていた。

その時急に
布団ごと横からぐわーっと押された。

え?何?
と思っていると、
病院の廊下の様な処に来ていて、
今度は廊下の端に向かって引きずられ始めた。

怖いと思ったけど、
声も出ないし体も動かせない。

だけどジェットコースター並みの早さで引きずられて行く。

蛍光灯や非常灯が凄まじい早さで過ぎ去って行く。

怖い怖い怖い怖い!

少しすると首が動かせるようになったので
自分の体の方を見た。

手だ。

それも土気色で
からっからに干からびたような手。

長く分厚い爪も生えていた。

それが、私の脇腹辺りを掴んでる。

その手から目が離せずにいると、
ずるずると脇腹から上に滑ってくる。

肋骨の上辺りまで来たところで、
恐怖より気持ち悪いが勝った。

一応女なので
胸に触れられるのが嫌だったのもあったんだと思う。

あと少しで壁に激突する。

引きずるスピードは落ちない。

やばい、やばい、やばい!!

このままじゃ、死ぬ。

渾身の力を込め助けを求め叫んだ。

誰っ!?

振り絞ったその瞬間に目が覚めた。

まだ寒い時期だったのに冷や汗ぐっちょり。

心臓バクバク息も上がっている。

目が覚めたのはいいが、
恐怖で身体が動かない。

さっき掴まれていたところに、
じんわりと感触が残っていたから。

朝日が更に照っていたのが唯一の救いだった。

手跡が残っていたらと思うと確認するのも怖くて、
小一時間布団から出れなかった。

漸く身体が動かせるようになって、
すぐさま階下の母へ通報。

だけど幽霊とかあんま信じない母には笑って済まされた。

けど、そのおかげで平静が保てた。

しばらく怖くて寝る場所変えたけど。

で、ある日少し霊感のある仕事の先輩にこの話をしたら、引きつった顔で

最近右肩痛いって言ってたよね。

多分起きなかったら連れてかれてたねって言われた。

もう、背筋が凍ったね。本当に。

あの時声が出なかったら
自分はどうなってたんだろう。

今は平々凡々な日々を送ってるけど。

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