あれは私がまだ子供だった頃。

庭付き一戸建ての二階にある2つの部屋のうち、
一つが私と妹、もう一つが父と母の部屋だった。

母は普段は父と寝ていたが、
夏場は父母の部屋は異常に暑くなるので、
私と妹の部屋に、女3人で雑魚寝をしていた。

その日も暑い夏の夜で、
入り口側に私と母、奥に妹が寝ていた。

そしたら、母が
「ヒロちゃん」って恐ろしげな声で私を呼んだ。

霊も怪奇現象もUFOも信じない母が。

「何?」

って言うと、

「タンスに影が映っとる」

というのだ。

タンスは廊下に置いてあったが、
入り口の引き戸は暑くて開けっ放しなので、
すぐ正面に見える。

なので、少し顔を上げると、
確かに影が映っていた。

それも、

「なにかの影が映ってるのが角度によって人に見える」

のではなく、明らかに人の影。

しかも立っている人の影だった。

怯えた口調で母が言う。

「ねえ、あれ誰の影でもないよ。
今ここに、立っとる人おらんもん!」

そうなのだ。

妹は既に寝ているし、
母も私も布団に横たわっている。

にも拘らず、影は真っ直ぐ直立し、
豆電気の薄明かりの中微妙にゆらゆらと動いていた・・・。

ゾっとした。

目の錯覚だと思い込もうにも、
部屋の中にそんな形の影が映るようなものはなかったのだから・・・。

一緒にビビると本当に怖くなってしまうので、

「何かの錯覚だよ」

とか何とか言って寝た。

後ろを振り向くことは怖くてできなかった。

あれから二度と影が見える事はなく、
特に何事も起こらなかったけど、
冷静に考えてみれば、
凄くゾッとするできごとだったな・・・。

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