ある日、普段はあまり遊ばない友達からメールが来た

「今から肝試し行くんだけど一緒に行かない?
A君とB子C君が一緒何だけど、どうかな?」

そんな内容だった。

私は既にお風呂に入ってくつろぎ中の夜8時頃、
ちょっと気にはなったけど
久しぶりのゆったりした時間が勿体なくて断った

「残念~。
あっ!!せっかくだから実況メールしてあげるよ~。
目的地は〇〇病院だし」

〇〇病院と言えば
地元では結構知られたスポット

『週末だし他にもいるんだろうなぁ』

なんて思いつつ
適当にメールの相手をしながら
のんびりした週末の夜を過ごしていた。

この後に、あれ程の事が起こるなんて思いもせずに…

結局彼女達は更に二人の友達を加え、
六人の団体でその病院に向かっているようだった。

メールはとめどなく続く。

興奮する気持ちを抑えられないのが
手に取るようにわかる。

たまに、車内で撮影したと思われる画像や動画等が添付されていた。

運転手のA君と予備運転手のD美以外は
ビールも呑んだりして騒いでいるようだ。

楽しそうなメールを見る度にちょっぴり後悔してた。

結局メールで付き合わされるなら
行った方が良かったなぁなんて思ってた。

程なく、車は現場の病院に辿り着いた様だ。

「それでは、A突撃部隊、出撃します!」

なんて張り切ったメールと共に
病院の入り口の写メ。

いやぁ~な雰囲気漂う写メだった。

何となく霞がかかった様に見えなくもない。

『心霊スポット何だからそんな感じがして当然よね』

なんて思いながら、
私は、既にこの実況を楽しみ始めていた。

夏に良くある特番みたいに。

「先ずは一階、診察室~。
大したことないね~。
A君が机あさってま~す。
何にもめぼしいものはないみたい」

写メがあったので見てみる。

『赤い光?街灯かな?』

「街灯はないよ~?
ライトが反射してるんじゃない?
とりあえず病棟に移動するみたいだから行くね~」

ライトの反射?

あんな高い位置で
しかも反射する様なものないみたいなんだけど…

何だかドキドキしてきた。

嫌な予感もしてくる

「二階到着だよ~何だかこわぁ~い(笑)」

今度は動画だ。

ワイワイガヤガヤと騒ぐ声、
暗闇に交差するライト、
レポーターちっくなB子の声

??

見終わった後に何となく違和感があった。

もう一度見てみる…あれっ?

一瞬写るベット…

更に繰り返し見ていくと、
私は青ざめてしまった。

キャプってみると、
間違いなく写ってる。

慌てて、その画像をつけてメール返信

『足!写ってる!ヤバいよ、逃げて』

A君から電話が来た。

驚きながら出る。

「お前画像になんかしただろ?
止めろよ全く!」

後ろが何となく騒がしい。

みんな動揺してるみたい

『私、何もしてない!
本当に写ってたの!
早くそこからでた方がいいよ!』

叫ぶように告げたその時

【ウフフ】

『え?』

「何だよ、どうしたんだよ。
脅かすようなこと止めろよ」

【逃がさないわよ】

『イヤ!何これ?』

「お前だろ!お前だと言ってくれ!」

[キャーッ!!]

電話の後ろから叫び声が聞こえた。

私はパニックになりながら必死に電話に叫んでた

『逃げてー!!』

「何だよあれ!おい!!みんな一階まで走れ!」

電話を切ることも忘れたように少し遠くからA君の声

何が起こってるのかわからない。

叫び声や走る足音に混ざり、
耳障りな笑い声。

私は身動きも出来ず、
携帯に耳を傾けながら祈り続けていた。

誰かの名前を泣きながら叫んでいる声、

断末魔の様な絶叫。

悲鳴、笑い声、悲鳴、笑い声…

頭がおかしくなりそうだった。

どうしたらいいかもわからず、
携帯から耳を離す事も出来ずただただ泣いていた

暫くすると、
まるで嘘の様に静まり返る携帯…

私は意を決して、警察に電話をする。

怒られた…が、
一応現場に行ってくれるらしい。

一安心…とはいかず、不安に苛まれる。

私は車のキーを握りしめ、
玄関を飛び出していた。

警察も来てくれるなら大丈夫!

何て甘いこと考えながら、現場に向かった

現場に向かう途中
何度か電話がメール着信は通常着信を知らせていたが、
気づかないまま現場に到着した。

怖くて車から降りるのを躊躇する。

警察はまだ来ていないようだった。

ふと、携帯の着信に気付き、慌てて見てみる。

A君からの着信とB子からのメールだった。

「助けて」

「ここだよ」

「早く来て」

「警察」

その後本文なしメールが三通…

何か添付されている…

意を決して開けてみる…

息を飲んだ。

言葉にならない

画像には参加者達を掴み笑う見知らぬ女

女の目

最後は動画で何かを呟き笑う女

真っ青になって逃げ出そうとした…

その時、後ろから赤色灯が近付いてきた。

一瞬の安堵の後
慌ててパトカーに向かう。

二人の警察官に事情を話し、
携帯画像を見せると、
一人の警察官が応援を要請していた。

静まり返った病院に警察官二人が向かい、
私は後発隊を待つように言われた。

程なく、後発隊も到着し、
全員で病院の中に向かう。

暗くジメジメしていて、
恐怖を纏う病院の中へ

暫くすると無線から声がした。

二階にて人を発見したようだ

慌てて私達は向かった。

204号室…にベットが6つ…

そこに全員寝かされていた

警察官達が近寄り声をかけるが反応がない。

救急車の要請…運び出し…

呆然とする私の前でどんどん救出されていく。

全員が運び出され、
私は事情を話すために警察に向かう。

警察署につく頃には朝になっていた。

警察官には信じてもらえなかったが、
画像や映像を見せて話していく

だが、画像も映像も一切怪しい所はなく、
更にはA君の携帯には発信記録さえない。

その後何度か警察署に呼ばれ事情を説明した。

あの時の六人の内二人は未だ意識不明…
二人は精神を病んで入院…
二人は不可解な自殺

という、激しく鬱になる結末だった。

私は必死にこの出来事を忘れようと努力した。

携帯は勿論新規に買い換え、
古い携帯は怖かったのでお寺に預けた。

あれから1ヶ月がたち、
私はあの出来事はあまり思い出さなくなっていた。

そんなある日…自宅で寛いでいると携帯が鳴る

携帯を見る…

違う…どこから…クローゼット…

恐る恐る開けてみる…

古い携帯…

あぁ…私は逃げられないんだ

鳴り続ける電話を見つめ…何かを諦めた

鳴り続ける携帯…

間違いなくお寺に預けたものだ。

何が起きてるのかわからない。

無意識のうちに携帯を掴み画面を開いた

メール着信…

自殺したB子から…

「お久しぶり、やっと見つけた。待っててね」

画像は…あの病院の近くで首吊りしたB子…

そして…不気味に笑う女

一瞬気が遠のいた。

が、辛うじて冷静さを取り戻そうと踏ん張る。

私が頼れるのは既にお寺の住職しかいない。

お寺に向かう事にして、
古い携帯と新しい携帯を持ち、
家を飛び出した。

車に飛び乗り、
エンジンをかけようとするけど、
震えが酷くなかなかキーをさせない。

古い携帯が着信を知らせる。

怖くて見たいとも思わないのに、
何故か体が勝手に動き携帯を掴んだ。

「早く逢いたいね~。めっちゃ楽しみ」

B子から、
画像もなにも添付されてないのに
笑い声が聞こえる。

『ごめんなさい!ごめんなさい!
許して下さい、もう私に構わないでよ!』

訳もわからず、絶叫しながら、
やっとキーを差し込み、
急いでエンジンをかける…かからない!?

焦りながら何度もセルを回す…

ふと泳いだ目線がバックミラーを捉えた瞬間、
何かが写った…

思わず目を凝らすと…いた…あの女…

その瞬間、気を失った様だ。

気付いた時には、
何故かあの病院の前。

怖くて恐ろしくて、
どうしたらいいかわからず、
泣き崩れた。

静まり返った病院。

あの事件の後、
お祓いをしたと聞いている。

窓や扉は板で全て塞がれ、
誰も立ち入ることが出来なくなっていた。

『どうして私なの!
私は何もしてないじゃない!』

兎に角わめきちらした。

顔をぐちゃぐちゃにして叫ぶ姿は、
誰かが見ていたらきっと狂人だと思ったに違いない。

ただひたすら叫ぶ事で、
心は少し落ち着いてきた。

ここまで連れてきといて
何もしてこない彼女達の事を考えたりした

『そう言えば、B子が亡くなってから、
一度も線香あげてないや』

変に醒めた頭でそんな事を考えた。

車には、いつかこようと思って線香を積んであった。

何故か恐怖心が飛んでしまった私は、
線香を持つとB子の亡くなった場所へ。

そして、大きな木の根元に線香を手向けた。

ん?車の音?

緊張しつつ、見ていると、一台の車が現れ、
何と、先日古い携帯を預けたお寺の住職が現れた。

驚いたような、安堵したような顔をして、
近付いて来た住職に全てを話した。

頷きながら聞いていた住職は、
ここに来た経緯を話してきた。

携帯には邪気がまとわりついていたこと、
浄化の準備中に携帯が無くなった事。

何故か廃病院に行かねばと思った事。

等を話してくれた。

その話を聞きながら何気なく病院を見ていると…
二階の一室に何故か明かりが灯っている

??

理解できない。

既に電気も来ていない、
入り口もどこにもない病院に明かり…

微かに携帯の着信音…

ハッ!として確認すると、
確かに握っていたはずの古い携帯が無い!

『行くしか無いでしょうな、
携帯がなければ、浄化も叶わない。
供養を任された私としては、
中途半端にはしたくないですから』

歩み出す住職

「私も行きます。
一人でいるのは耐えられません。
それに、知りたいんです」

『ならば…どこか入り口を作りましょうか』

私達は病院の周りを見て回り、
比較的壊しやすそうな窓に当たりをつけ
車から工具を下ろしてきて、
窓についていた板を外し始めた。

携帯は相変わらず着信音を奏でている

何とか、人が通れる程に穴を広げ、ライトを持ち、
先に住職が入っていった。

私も直ぐ後を追った

明かりがついていたのは二階、
着信音も二階から聞こえる。

再び湧き上がる恐怖を必死に堪えながら、
住職と共に二階へ…

明かりがついていたのは…204号室…

やっぱり…

重い足を必死に動かして、
その部屋に向かう。

そして…意を決して、部屋を覗く…

ベットが2つ、向かい合わせにある…

「嘘でしょう?!」

ベットに、寝ていたのは…
未だに意識の戻らない二人…

「有り得ないって!なんなのこれ!」

既にパニックになり始めていると

『うわっ!』

後ろにいた住職の声

「どうしたんですか?」

声をかけつつ振り返ると…住職の姿はなく…

変わりに…虚ろな目をした、精神を病んだ二人…

「あああああああ!」

すっかりパニックになる私の左耳に…

【あははははは~】

あの女の声が響く。

慌てて左を振り返ると、今度は右から。

更に部屋全体に…

ここでまたもや気を失った様だ。

気が付くと、
お寺の本堂に寝かされていた。

目の前では、台の上に古い携帯を置き、
住職が一心不乱に読経していた。

「あの…」

私が声をかけると、
住職はゆっくり振り返った。

住職の話によると、
あの部屋を覗いた時、
廊下の奥から着信音が聞こえたらしい。

住職は直ぐにそちらに気を取られ凝視していると、
私の叫び声が聞こえ、慌てて目を戻すと、
ベットの上に携帯があったので
その携帯を数珠で縛ると、倒れた私を抱えて、寺まで来て
それからずっと、携帯を取り巻く邪気を祓い続けたらしい

あの時私が見た四人は、
幻覚だと告げられた。

『さて、これで携帯についていた邪気は祓いました。』

ゆっくりと静かに、住職に告げられた。

「ありがとうございます」

丁寧にお礼を言い、
住職のお弟子さんが取ってきてくれた私の車に乗り込み、
帰宅した。

やっと解放されたのだ。

理不尽な霊障に悩まされることはもうないのだ

そう思うと、とめどなく涙が流れた。

そして現在…

私は未だに、
あの日になると来るメールに悩まされている。

何度携帯を変えようとも、あの日が来る度に…

私はいつかこの恐怖から解放されるのだろうか…

それとも………

【ウフフ】

そんな笑い声が聞こえたような気がした…

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