押し入れに一体の市松人形が眠っていた。

厳重に包まれて桐の箱に大事そうに入っており
その為あって保存状態はすばらしく良かった。

長く黒い髪、白い肌、赤い蝶の刺繍が入った着物。

これは高く売れると質屋に持っていった。

質屋もその人形をたいそう気に入り
ガラス窓の一番目につく場所に飾った。

ある日、一人の少女が店の前を通りかかった。

少女はその人形を一目見て気に入り
すぐさま両親にねだって買ってもらった。

それからしばらくは
少女の格好の遊び相手となった。

しかし少女も大きくなり
そんな人形があった事などすっかり忘れてしまい
中学入学の日ふと人形の事を思い出した。

やっとの思いで探し当てた人形は
かつての姿は微塵と無くそれはそれはみすぼらしかった。

髪はぼさぼさ、
着物はすす汚れていて腕は割れていた。

しかしその割れた腕の隙間から
なにやら黒く細長いものが出ていた。

少女は気になり
よく見てみるとそれは髪の毛だった。

何故髪の毛が?

そう思って引っ張ってみると
するするするするどこまでもぬけていった。

さすがに奇妙に思い
その人形を叩き割ってみたところ
中からミイラ化した1、2歳の赤子が
長い髪の毛に包まれ姿を現した。

少女は悲鳴をあげ倒れこんだ。

数日後、
お寺に人形を持っていき供養してもらった。

それから十数年の月日が流れた。

その少女も今やすっかり年老いてしまい
孫までいた。

たまたま遊びに来ていた孫は
押し入れの奥からなにやら箱を取り出してきた。

見たことも無い箱だった。

しかし孫が箱を開けた瞬間
老婆は驚きを隠せなかった。

そう、確かにあの時
寺で供養し焼き捨てたはずの人形が
新品同様な状態で眠っていた。

そんな驚きを知らず
老婆の孫はその人形を気に入ったようだった

そして孫は老婆にせがむ。

「ねぇおばあちゃん、
この人形私にちょうだい」

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