大学生になったばかしの頃、
彼氏の家へ何度か寄った。

乗り継ぎの駅と駅の間にあった家。

外壁が少し黄色くて二階建てだった。

玄関入ると大きなキッチンがあって、
真ん中に八人で掛けられるテーブルがある。

「おじゃましま…」

と言いかけると、

「しっ、声出すな」

と咎められた。

行くのいつも夜だったからなんだけど、
キッチンは必ず電気が消えてて、
人がいた事なかった。

左に階段があり、
途中で右に折れ、
二階へ続いてた。

彼氏の部屋は二階。

二階の廊下も薄暗く、
彼氏の部屋は明るかったけど、

「あんま音立てるなよ」

と、いやに神経質だった。

その家、何回くらい行ったかなぁ。

あんまり「静かに(怒)」って強要されるから、
軽くイラついて、ある日の帰り、
キッチンの端にぬいぐるみを置いてきた。

自分が少し先に一階に降ろされた時、
彼氏の目を盗んで。
彼氏は気がつかなかったみたい。

何となく、
自分の存在を家人へ知られたくない風だったから、
ひっそり自己主張したくなってみた。

そしたら次の日から彼氏と連絡がとれなくなった。

乗り継ぎ駅と言っても、
そんな行く用事の多い駅じゃなかったから、
すぐには行かないでて、一週間以上経ったかなぁ。

久しぶりに訪ねてみたら、
その家自体が無くなってた。

彼とは今も連絡取れていない。

何だったんだろう…。

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