未だに信じられない話

冬の話だ。

曖昧なのは、
実はどこまで現実だったのか
オレもわからない所があるんだ。

まぁ大学が終わった後…

もう、夜に近い時間、
ブックオフなんぞで立ち読みをしていたオレに電話が来た。

埼玉の方の大学に行った友達…
仮にKとしておこう。

Kは突然

「今から明日丸一日かかる可能性あるが空いてるか。
もし空きなら一生の頼みがある」

とKがいつになく真剣な口調で言うものだから
なんなのか聞いてみた。

ここからしばらくはこのKの話だ。

二週間ほど前の事、
大学の先輩やら男女三人ずつで、
先輩の部屋でダベったり飲む奴は飲んでいたらしい。

その時に女の子の一人が

「群馬の方に廃病院あって、
そこだとマジ出るらしいよー」

とか言ってたそうだ。

先輩方五人は車で、
Kもしぶしぶバイクでついていった。

山ん中に佇む廃病院は不気味で、
Kはこの時点で嫌になり
「帰る」と言ったがそこは大学生。

ノリ悪いだなんだ、と結局
Kは車を見張ることで落ち着いた。

合図は先輩方が上の方から懐中電灯を振り回す、
とのこと。

ところが、
いつまで経っても合図が無い。

Kは遅いな、と思い携帯で時間を見る。

だが、その携帯電話。

アンテナは圏外、

おまけに時刻表示がありえない事になっていたそうだ。
(71:18とか)

俺は高校時代、
オカルトとかにもハマっていた為、
俺からそんな話を聞いていたKはここがやばいと思った。

しかし懐中電灯は先輩方が持って行ってしまっている上、
もしここで突入しても一人。

入れ違いの可能性もあれば、
一人で救出できるかも危うい。

そこへ先輩から電話がかかってきた。

ここで重要なのは圏外であるはずなのに、だ。
(Kは実際圏外だったことを確認していた)

「悪い、先帰っててくれ」

「どうして?」

「いやぁー。車の鍵落として…」

先輩の極普通の声にKは安堵して、
バイクに乗って帰る。

ところが、二日後。

その五人を大学で見かけず、
また連絡も取れてない事に気づく。

Kはやばいと思った。

しかし、自分一人ではどうすることも出来ない。

ここからが本編だ。

そこでKは
霊感ある奴、カメラ持ち、運転手に廃墟マニアと
色々な所から助っ人を頼んだ。

俺とKを含めて総勢七名。

内訳は俺、Kのほか、

A=女性。霊感たくさん。
睨み合いで勝った事があるらしい。

B=ビデオカメラ持ち。

C=運転手。

D=廃墟マニア。

E=女の子。霊感そこそこ。怖がり。守護神の持ち主。

まぁ、全員元々知り合いとかじゃないので
お互いに挨拶とかしながら車はKの先導で進み、
気がついたら現場に到着。

その時点で全員その異様さに気づいた。

なんていうか、異様なんだよね。

夜なんだけど、
ただの夜じゃないっていうか。

でも、Kが必死に行こうとするので
止めるわけにも行かず、
事前に決めた役割分担を果たした。

突入班が俺、K、A。

入り口でロープを張って
ビデオカメラで撮影する命綱兼撮影班がBとC。

DとEは車に残ってた。

車から出る時に、
Eが俺たち突入組に手製っぽいぬいぐるみくれたんだよ。

シーサーの。

これがまさか守護神様になってくれるとは思わなかった。

中に入った瞬間は見かけほど怖くないのかなって思った。

周りを取り巻く空気は異様だけど、
中はそうでもないなって。

病院だった場所だから不気味ではあるけど。

ロープを握って、
とにかく一階を探そうって感じで
懐中電灯を振りながら歩く。

俺はただいるかなーって感じで、
特に見えたりはしなかったな。

その時は。

でもAはずっと怖そうな顔してた。

車載ってる時は澄まし顔だったのにな。

最初の入り口…
エントランスかロビーかどっちかわかんないけど
開けた場所で命綱組待機。

そこから受付を通って、
奥の廊下へ進んで……

一つ一つ部屋を見たけど、
おかしそうなところは…

あったよ、1つだけ。

診察室だと思うんだけど、
そこだけなんか空気が白く見えるんだ。

最初埃かなって思って。

この時、写真撮っとこうと思って携帯見たら…
圏外+時刻がおかしい。

アレ?

オレの脳裏を神隠しっていう言葉がよぎった瞬間。

そうそう、
診察室の中を撮影しようと
携帯のカメラを向けた時だ。

バッテリーが二本残っていた筈の携帯が、
フリーズしたんだ。

よく心霊スポットで
カメラのシャッターを押せないとかよくあるけど、
まさか携帯で起こるとはね。

携帯が圏外やら変な表示の時点で、
そこがすでにおかしな場所であることだったんだけど。

そしたら……
信じられないかも知れないがまさにその瞬間、
命綱役が持ってたカメラも動かなくなった。

Bの悲鳴が聞こえてきて、
慌てて引き返した。

しかしKは無情にも俺に告げる。

「この場所でロープ持ってて」

一人で行けと?

診察室前に残された俺は
もう一度中を観察する事にした。

なんで診察室かなって思ったのは
あの丸い椅子とカーテンが転がってたからなんだけど。

不気味で、白っぽく見える、
なんかいるけど何も見えない。

俺が診察室に背を向けて廊下を向いた時、
診察室からガタっと音がした。

ふっと振り向くと、
俺の横を人影が通り過ぎてった。

いや、人影じゃないんだ。

人だったんだよ。

幽霊はよく色々な服装してるっていうけど……
それでも普通のギャルっぽい服装した幽霊いるか普通?

そいつは俺の横を通り過ぎると、
廊下の奥の階段へ、
上へと上がっていった。

Kの先輩方は上を目指していた、という。

俺は一人だが上に行く事にした。

AもKも入り口から戻ってこない。

ついでに俺はAみたいに霊に強くも無い。

だがEが渡してくれた守護神シーサー様がいる、
と念じて階段を上がる。

二階は結構DQNが入ってたのか、
落書きが多かったよ。

……一階はガラスは割れて荒れていたけど
落書きは殆ど無かったのにな。

そのギャルっぽい人影を追いかけたはいいが、
どこに消えたのか皆目つかない。

また一つ一つ虱潰しに、
と思ったんだけど…。

ロープが切れていたんだ。

階段の途中で。

気づいたのはその時。

でもここで逃げたらKへの義理が立たないと思って
前へと進んだ。

直後、離れた部屋で何かが崩れる音が聞こえた。

同じ二階のフロアだ。

そして……信じられないものを見た。

その崩れた音がした当たりの部屋から
人影が一人飛び出してきた。

懐中電灯持ってる、男。

でもその後ろを
何か得体の知れないものが追いかけてる。

たくさん。人なのかもわからない。

人影は、いいや、
その男はその部屋の真正面の部屋に逃げ込んだんだけど、
得体の知れないものもそれに入る。

後は悲鳴。

さすがに急行した。

でも信じられるか?

誰もいなかったんだぜ、その部屋。

入ったはずなのに。

そして何より真新しい足跡があるんだよ。

そこに人間が確かにいたのに、
いない。

異常な携帯やカメラ。

記憶の糸を便りに、
階段を駆け降りて入り口まで引き返した。

そしたらそこには誰もいない。

ロープとカメラだけ放置されたまま。

え、俺置き去り…と焦った瞬間に
KとAが戻ってきた。

A「早く車に戻って!」

俺「みんなもういる?」

A「いいから早く!」

言われるがままに車に戻る。

皆がくがく震えてた。

何でも最初、
俺とKとAが診察室でカメラ向けてた時、
BとCは俺たちが進んだ方とは違う廊下にカメラを向けていた。

そしてその時、
赤いジャケットを来た男が
こっちに向かってきたそうだ。

驚いて一瞬カメラを離した瞬間、
男は消えていた。

ちなみにこの赤いジャケットの男は、
どうやらKの先輩の一人らしい。

その時赤ジャケだとKが言ってた。

そしてDとE。

車で待っている間、
数回地震に襲われたという。

当たり前だが
その時地震は起こってない。

地震が途切れた、
次はバンバンバン!と何かを叩く音。

相当な恐怖だったという。

手がかりは見つからず、
なんだかよくわからない事件ばかり。

そしてAとKはBとCの話を聞いた後、
俺を放置してそっち方面の廊下に行ったらしい。

ただ、その時にKは1つだけ収穫があったそうな。

赤ジャケ先輩の携帯だ。

そして俺が見たギャルと逃げ込み男も、
どうやら先輩方で間違いないとKは言っていた。

知っているかも知れないが、
ピクニックアットハンギングロックの話を知っているか?

その時、俺の脳裏にその話が出てきたんだ。

女子生徒と女教師が行方不明になった話。

女子生徒が女教師に遭遇した時、
いくら声かけても届かない、
見えない壁があるようだって奴。

俺はKに

「俺たちだけでこれ以上やると
二重遭難の可能性あるからやめとけ」

と言った。

その言葉に全員が賛成していたよ。

まぁ、ハンギングロックみたいに
二度と戻れなくなる可能性もある、ともね。

Kもその話を知っていたから納得してくれた。

赤ジャケ先輩の携帯が見つかっただけでも、
とクルマで現場を離れた。

その時、
Kが赤ジャケ先輩の携帯を見ていたんだが、
思わずぎょっとしたようだったよ。

何を見たのか教えてくれなかった。

見ちゃいけないものだったのかも知れない。

この話の怖い所は後日、
Kとその話をした時、
いくつもの食い違いが出てきたんだ。

・Kは俺たちが総勢四人だった。
(俺は七人だったはずだが…
おかけになった電話番号はのコンボが続いた)

・Kが拾った携帯は赤ジャケ先輩、
Bが見たのはギャルさんの方だとKは言い張っている

つまりこの食い違いって……
もしかして、もしかしてなんだけど。

俺があそこから出てきた時、
違う次元の方に出てきちゃった可能性があるんだよな。

家に帰ってきた時、
持ってない筈の漫画が出てきたとかなら信じられるか?

まぁ、変な話ですまん。

だが未だにおかしな話だなと思っているんだ。

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