俺は仕事柄、いつも夕飯が遅い。

うちの近所に中華屋があるんだが、
こんな時間まで開いてるのはそこくらいしか無くて、
結構重宝してる。

週3~4回のペースで、
もう2年くらい通ってるが、
こんな事は初めてだった。

いつものように俺が中華屋に入ると、
普段ガラガラな店のカウンターに物が置いてある。

一つは椅子の上にハンドバッグ。

もう一つはテーブルの上に携帯。

誰か席とって、
トイレでも行ってんのかな。

繁盛してないこの店で珍しいこった、
くらいに考えて煙草に火を着けていると、
ガラガラと店の戸が開いて若い女が入ってきた。

チラと見ると、
少し恥ずかしそうな顔でハンドバッグを取り、出ていく。

あぁ、忘れ物か、なるほど。

なんて考えてると、
また戸がガラガラ。

今度は若い男だ。

「はは、ちょっと忘れ物を…」

なんて言いながら携帯を取って出ていく。

「2連続なんて珍しい事もあるんだね」

と店主に話しかけてみたら、

「さっきも携帯忘れてった人が居ましてね、
預かってるんですよ」

との事。

そうこうしてるうちに飯も出てきて、食べていると、
戸がガラガラ。

今度は初老の男が入ってきた。

今回は普通の客だった。

俺がマッタリ食べていると、
男の方が先に食べ終わり、
会計を済ませて出ていった。

俺もそろそろ行くかと、
会計をして店を出ると、
さっきの男が足早に店に戻ってくる。

まさかね…
なんて思いながら煙草に火を着けようとすると、
ライターが……無い。

男はカバン、
俺はライターを持って、
照れながら店を出る羽目になった。

今日あの店には、
忘れ物の神様でも来てたのかね。

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