東京、青山墓地。

そこに我が家の墓がある。

中学一年生、盆。

足の傷が目立つ俺はジーパンを穿いて向かった。

初めて行った墓地は以外と広かった。

つく前に花を一束買っていった。

父と二人で向かった墓地は有名らしい。

着いたとき、
幾つもの墓を目の当たりにして
少し戸惑った。

不思議と足が痒い。

幾つもの墓を通り抜けて数十分、
ようやく我が家の墓を見た。

粗末で、ボロボロだった。

小さくて、期待を裏切られた感じだった。

だが、やはり他の墓とは違った。

鎖を墓の前にかけてある。

それを見たとき、
俺は夏のあの出来事を思い出し
身震いをした。

暫く俺は立ち尽くしていると、
父が俺に水を持ってきてくれといった。

歩き回ってみたが分らない俺は
ついでに色々な墓を見て回った。

立派な墓、
かなり放置されていて草が生い茂っている墓、
洋式の墓。

墓地っていうのはこんなに大量の墓があると
改めて思い知らされた。

父の元へ戻り、水の場所が分らないというと
父が代わりに取りに行ってくれた。

墓の前に俺独りになり、
もう一度まじまじと見た。

鎖が解かれていた。

きっと父が外したのだろう。

俺は墓に近寄ると今にも崩れそうな墓を触った。

我が家の苗字が彫ってある。

と、どうじに先祖の名前がたくさん彫られている。

我が家は代々死んだらその墓に埋められるらしい。

俺も父も死んだらこの中に入るのか、と俺は
整理されている墓の周りを見ながら思った。

父と墓を掃除し終え、
線香代わりだと言って
父は煙草に火をつけて置いた。

父の愛用のJPSだ。

一仕事終えて父は道具を置くと俺をみて
爺ちゃんにそっくりだと言った。

そんなに老けてる?と言うと、
雰囲気がだ、と言う。

そして、足の傷の出来方も。

俺の足の傷は切り傷のような物ではない。

円形の傷で、その小さい傷が幾つもある。

しかも、それは足の裏だけにしか出来ない。

そんな事を話して、ふと足の裏を見たとき。

一つ、新たな傷が出来ようとしていた。

変な感覚だった。

何も無いところに急に少し血が出てきて
その周りを黒い物が覆う。

初めて見る光景に俺と父はそれを見ていた。

そうして自然に血が止まると、
また新たな瘡蓋ができた。

綺麗になった墓をまじまじと見終えて、
父は鎖を掛けなおした。

鎖を掛けられた墓は見ると禍々しさを憶える。

俺は鎖が何故あるのか父に聞いた。

あれがもしも無かったら今頃お前の首は飛んでる。

そう言って父は歩いていった。

俺は最後に墓を振り返ると、
禍々しさよりもどこか寂しげに見えた。

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