早朝のできごとだった。

バリバリという激しい音に
最初は豪雨かと思って窓を開けたら
右の方から火が出ていた。

こりゃやばいと思って
バッグを掴んで外に出ると
ほぼ同じアパートと言ってもいいぐらい近い場所にあった
隣の古いアパート(実際何故か繋がっていた)の真ん中の部屋が
近づくことも無理なぐらいごうごうと燃えていた。

気付いたのが早めだったので
無事に脱出。

まもなく消防が到着。

1時間くらい?して
死体を入れる袋的なのを運び入れてたから

「ああ、中に人がいたんだな…」

と思った。

結局原因不明の出火で
火元の部屋を含む三部屋が燃えて、
とてもじゃないけど人が住める状態じゃないので
燃えたアパートは封鎖。

火元の部屋は
おじいさん(まばらぼけ)が一人で住んでいて、
近所のお姉さんが時々介護にきていた。

両親は最近死んだばかりで、
毎日早朝まででかい声でお経を唱えて
お線香をあげていた

火元はお線香をあげる際につけていた
蝋燭ではないかとのこと
(いつか火事になるよねって噂だった)

出火当時、
向かいのアパートのおばさんが発見して通報。

通報した人によると、
最初おじいさんはベランダに出て助けを求めていたらしいけど、
突然部屋に引き返してそれから出てこなかったとの話。

近所の人とも話していたけど、
助けを求める声なんていうのは
一切聞こえてこなかった。

おじいさんが自分で部屋に戻ったのは
お姉さんにもう迷惑をかけたくなかったのもあるだろうし
天国の両親が呼んだんじゃないかって話だった。

窓からも扉からもとてもじゃないけど入れないほどの炎だったのに、
部屋の中に戻ったおじいさんの心境ってどんなものだったのだろう… 

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