大学1年(20年ぐらい前)、
同じサークルにいた(それまであまり親交もない)同級生(I君)から、

「今日、うち(彼のアパート)に来ない?
相談したいことがある」

と真剣な顔で言われ、
彼についてそのアパートへ行った。

築20年は経ってるかな…
6畳一間、風呂なし、共同便所。

しかし家賃は2万円。
(今では文化財級かも、
でも20年前は大学1年なんて半分はそんな感じだった)

I君の部屋は意外とこざっぱりした感じ。

俺「で、相談て何なの?」

I君は言いよどんでいたが、
押し入れを指さして、

I「何かおる。見て!」

正直、I君の必死な顔に笑い出しそうになったけどこらえた。

俺「何がおるんや?」

I「毎晩あっちから何かが出てくるんや」

意味分からん。

とりあえず0感な俺は押し入れのふすまを開ける。

中身は空。
(たぶんIは片づけておいたんでしょう)

I君は「そ、そこに何か貼ってるでしょう?見て!見て!」

と言うやいなや部屋を飛び出した。

残された俺はかなり不愉快だったけど、
押し入れの中を調べた。

いや、調べる以前に、
彼が言った『貼ってある』存在が目の前にあった。

壁紙用(60センチ四方)のクロスだ。

「なんでこんなもんが怖いのか」

半分腹を立てながら調べる。

普通クロスは住宅用のノリで全面キッチリ貼ってある。

しかし18歳にそんな知識はない。

それは真ん中あたりが浮いていた。

これは…と周辺に爪を立てると、
クロスの四辺を両面テープでくっつけているだけ。

クロスはすぐに落ちた。

壁を見て全身の鳥肌が立った。

一回押し入れ&部屋から出て、
隣室の同級生の家に避難してたI君に声を掛けた。

「あれ、はがしちゃったから、
文房具屋さんで両面テープ買ってきて~(引きつり笑)」

俺が見た物。

左下(床下から2~10センチあたり)に、
推定5~6歳の子供が赤いクレヨンで描いた顔の絵。

顔の上には『おかあちゃん』と書いてあった。

まずこれが異常だ。

いくら寝ぞべって絵を描いても、
子供とはいってももっと視線は高いはず。

普通は脛~膝より高い位置しか子供は落書きしないし。

俺が鳥肌したのは、
クロスの右下の赤クレヨン。

『おかあちゃん』

とたぶん同じ筆跡で、

『なか村まさ子 六十二さい』

I君が両面テープを買ってきて、
クロスを張り直してたら、
当然I君が聞いてきた。

「何かあった?」

『何もなかった』と言ったら、
Iは剥がして自分で確認するだろうなと思った。

だから、左下だけめくって見せて、

「前の住人の子供が落書きしてたんだよ。
それだけのこと」

I君はそれでも気持ち悪いと、
翌年近くのワンルームに転居した。

後日談がある。

その翌年、大学関係で斡旋されて、
あのアパートに同じサークルの1年生が1人入った。

I君の部屋に入ったのも
同じ大学の1年生だったらしい。

1年の後期に入った頃からおかしくなり始めて、
夜中の2時3時にアパート中のドアを殴って、

「うおぉぉおおおぉぉお!助けて!助けて!
殺されますぅお願いです助けてぇ!」

数日後、親が引き取りに来て、
その後は不明(らしい)。

数年前帰省して、
レンタカーで大学時代の思い出をたどった。

あのアパートはもうなくて、
立派な民家が建っていた。

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