私の実家は、戦後まもなく祖父が人から買ったもので、随分と古い家だった。

普段は箪笥などが置いてある6畳間には広い押し入れがあり、
ストーブや扇風機、客用の布団や衣装ケースなどが納められていた。

幼い頃、悪さした時などは良くそこへ閉じ込められたものだった。
最初の頃は、暗闇の恐怖と孤独感からか、私も本気で泣叫んでいたが、
成長するにつれ暗闇にも慣れてくると、あらかじめ隠しておいたキャラメルや
ミルキーなどの菓子を食べながら、布団にもたれて寝てしまい、
心配した母親が戸を開けるまで、眠りこけていることもしばしばだった。
月日がたち、私や妹が進学のために家を出て、祖父祖母が老いてくると、
古い家屋というものは何かと不便になってきた。

そこで大規模な改築をすることになったのだが、
その際に奇妙な事があった、と両親が言っていた。

件の押し入れを大工が見てみると、奥の板壁と、
その裏側に位置する廊下との間に、かなりの隙間があることが判った。

早速、板壁を剥がしてみると、中から小さな空間が現れた。

縦横200×30センチ位の広さ。

四方は、どこにも出入り口はおろか、板の隙間すら殆ど無い。

外界から完全に閉ざされたその部屋の床は、
奇妙な事にピッタリと細長い畳が敷かれていた。

恐らくは数十年の月日を経て、完全に変色した畳の上には、
ミルキーの包装紙が散らばっていた。

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