ある旅行会社の添乗員が、
ツアー客と共に沖縄のリゾートホテルへ行った。

そのリゾートホテルではプライベートビーチを持っているのだが、
そのビーチには潮の関係でよく死体が打ち揚げられるという。

そのうちあげられた死体は
一時ホテルの部屋で保存される事もある。

その部屋は普段はもちろん使われていない、
ホテルの一階にある部屋だったが、
この添乗員はその部屋を使う事になった。

時期がお盆で
どこの部屋も空いていなかったからだ。

添乗員は疲れもあり、
寝入りこそ良かったものの、
夜中、壁に向かって横向きに眠っていたその背後の気配に気がつき
目が覚めてしまった。

この部屋の中で
何人かが話し合っているような気配だった。

その何人かは時々添乗員に聞こえる声で、

「おまえも入らないか」

と誘ってくる。

そしてその何人かは
添乗員が起きている間にも増え続け、
最終的には15、6人ほどの気配がするまでになった。

その間にもその何人かは添乗員に

「入ってこい」

と誘いをかけ、
ついには「こい」という声と共に
肩にぽんぽんと叩かれ、
つかまれるような感触までも感じるようになった。

添乗員は冗談ではない、と思ったが、
ここは無視するに限る、と
冷や汗と寝返りをうちたくなる衝動をぐっとこらえ、
うその寝息をたてていた。

彼らは時々添乗員に声をかけるものの、
自分達の話が盛り上っているようだった。

しかしながら添乗員は一時も気を抜けなかった。

気を抜くと振り返らせられそうで恐かったからだ。

それを延々二時間ほど続けていたらしい。

窓から薄明るい光が射し込んできた。

すると、それに伴い
小さい部屋から気配が少しずつ消えていくのが分かる。

そして、
日が明るくなるに連れて気配は消えていき、
とうとう彼が薄目を開けると、
前の壁に朝日の光が当たっていた。

朝が来た、
と添乗員が体の力を抜いた瞬間、

「ほんとはおきてたくせに」

と耳元で声が聞こえ、
今度こそ完璧に部屋の気配はなくなった。

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