昔うちの母に聞いた話です。

母は高校生の頃、学生寮に入っていました。

その寮では建物が古いせいか、
幽霊が出るという噂があって、
実際に見たという目撃談も結構あったそうです。

母は特にそういう幽霊話に興味はなかったみたいなんですが…。

そんな母が唯一その寮で体験した不思議な話。

ある日母は風邪を引いて、
部屋で寝込んでしまいました。

まぁその日はゆっくりそのまま部屋で養生したわけですが。

真夜中、フッと目が覚めたかと思うと、
母は唐突に強烈な尿意に襲われたそうです。

トイレに行きたい。

しかし辺りは当然のごとく真っ暗。

風邪をひいているせいで、頭はクラクラし、
足元も何だかおぼつかない。

そこで母は友達を起こし、
トイレに付いてきてもらおうと思いますが、
熟睡しているせいか誰も起きてくれません。

仕方なく母は一人で一階の廊下にある
(母が寝ていた部屋は二階)
共同トイレに向かいました。

ギシギシと古い建物特有の音を立てながら階段を降り、
トイレへと続く一階の廊下をおぼつかない足取りで歩きます。

真っ暗な廊下はとても気味が悪く、
やはり無理矢理にでも友達を起こし、
付いてきてもらおうかと思いましたが、
強烈な尿意には勝てず、
そろそろとそのまま廊下を歩いていったそうです。

ゆっくりとした足取りで歩き、
もうすぐトイレだというところで

(あ、やっぱり風邪のせいで頭がクラクラするな…)

と母は目を瞑りました。

と、その瞬間。

ブワッと景色が変わったかと思うと、
母は見知らぬ土地に立っていました。

(え?!何これ?)

と思ったのも束の間。

母の目の前に、
馬に乗り武装した人間が突っ込んできました。

いきなりのことに混乱した母は

(えっ、嫌や、怖いっ!)

と、とっさにその場にしゃがみ込みました。

しばらくして、それっきり何も起こらないようなので
恐る恐る目を上けて見ると、
そこにはいつもの寮の廊下が広がっていました。

ホッとした母は、夢でも見たのか、
それとも風邪でボーっとしていたのか…

まぁ何にせよ寝ぼけていたんだなと思い、
そっと立ち上がりました。

すると次の瞬間。

またブワッと周りの景色が変わり、
今度は刀のようなものを持った人達が、
互いに互いを斬り合っていたそうです。

そこはまるで昔の戦国時代の戦場のようで、
あまりの気迫とそのリアルティさに恐怖し、
またその場にしゃがみ込むと、
そこはいつもの寮の廊下に戻っていました。

熱が見せた幻覚か、
何なのかは未だにわかりませんが、
その後再びその場に立ち上がることはできず、
急いで二階に戻って友達を起こし、
廊下を這いながらトイレに行ったそうです。

話としてはここまで。

今ではその寮はもう使われてないようで(多分)
取り壊されたのかどうなったかは知りませんが、
以上、母の体験談でした。

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