小学生のとき、土曜日の放課後に
友達の家で遊んだその帰り道のことを書こうと思う。

冬の寒さがきつくなってきた時期、
たしか16時くらいだった。

少し物騒な町で、
そいつの家から自宅までは結構な距離があったから、
いつもは車で送ってもらってたんだけど、
その時は何故かひとりで帰ることになった。

多分見栄を張ったんだと思う。

なんか空がどんどん暗くなってくし寒いし、
あんまりひとりで歩くことなんて無かったし、
車は通るくせに人通りが少ない道だったから心細くて。

もうとにかく早く帰ろう、
早く帰ろうって思いながら
早足で歩道を辿ってた。

家までちょうどあと半分、てところで、
後ろから物凄いエンジン音が近付いてきたんだ。

よく暴走族が鳴らしてる蜂の羽音みたいな音。

怖くて心細い時って、
なんか凄くちっぽけなことにムカついたりするだろ?

俺は子供ながらに腹が立って、
うっせえなこのやろう、って、
そいつを睨みつけようとした。

振り返った拍子に、
黒いバイクに乗る見覚えのない男のーー
ヘルメット無しで、首だけを真横に捻じ曲げて、
頬を、目を、唇を、ひどく不自然に歪めた満面の笑顔と目が合った。

全身の血がざっと引く感覚はあったけれど、
怖い、って思う暇は無かった。

男は首を曲げて破顔したまま、
バイクは速度を緩めずに赤信号を飛び出して、
ごしゃ、ってトラックと正面衝突した。

男はボンネットに潰されて飛ばされて跳ねて、
……そこから先は正直思い出したく無い、
というか怖くて言葉にすることができない。

信じて貰えないかもしれないけれど、
夢ではなかったことは確かだ。

それだけ書いておく。

社会人になった今でも、
ふとした事であのときの歪な作り笑顔が蘇ってくる。

バイクの免許を取る予定があるのだけれど、
もしかしたら自分もあの男みたいに
死ぬかもしれないと思うと怖くて、
怖くて仕方が無い。

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