これはオレが小学生の頃の話。

ウチの小学校は6年生になると、
とある山奥の施設で宿泊訓練という
1泊2日の行事があるのです。

なんせ20年近く昔のコトだから
今もあっているのかは知らないけど。
とにかくその宿泊訓練の練習と称して、
5年生の夏休みに小学校の体育館に学年全員で
1泊するというコトになりました。

昼間はそれなりにワイワイみんなで楽しんだんですが、
夜になりみんなで体育館に雑魚寝状態になると、
段々と気が滅入ってきました。

周りにはスヤスヤ寝息をたて始める同級生たち…

たまに当番で
教員が懐中電灯片手にウロウロしにくる。

状況的には周りに人がたくさんいるんで、
慣れない場所での外泊にも
そんなに恐怖は感じませんでした。

ただ無駄に高い体育館の天井が
オレを眠気から遠ざけてました。

元来オレは枕が変わると
なかなか寝付けないタイプでして、
やはりその時も全然眠れませんでした。

ちなみにウチの小学校は
敷地に墓地が2つ隣接しており、
その内の1つが体育館から少し見えるんです。

まぁ、やはりというか
それがすごく気になりだしたオレは
墓地の方を向いて寝るコトにしました。
(不安要素に背を向けて寝るのが落ち着かないタイプ)

そんな感じでしばらく経ったでしょうか、
教員がいない時に密かに聞こえていた他の生徒のコソコソ話も
もう聞こえなくなって久しい頃、
オレの寝床からだいぶ離れた墓地側の窓の先に、
松の木があるのですが、
その松の木の幹をクルクルと回転上昇しながら
赤い火の玉が現れたのです。

火の玉自体は以前見たコトがあったし、
科学的な根拠がどうのこうの…
って話も少し知ってるようなマセたガキだったので、
オレは『うおっ』くらいのリアクションで
しばらく火の玉を眺めていました。

時間にして2分ほど経ったでしょうか、
それまで上下に激しく動きながら移動していただけだったその火の玉が、
突然体育館の窓に『コツッ』と音をたててぶつかったのです。

さすがにオレもこれにはびっくりして、
周りに起きてる生徒がいないかこっそり探し始めました。

しかしみんなぐっすりと眠っており、
隣に寝ている友人も何故か全く起きてくれません。

外では相変わらず火の玉が時間を置いて

『カツン……、カツン…』

と窓をノックしています。

オレは

『なんでみんな気付かないんだ?』

と不思議でしょうがありません。

すると見回りの教員が
懐中電灯を持って体育館にやってきました。

火の玉より教員に見つかるのを恐れたオレは
とりあえず動きを止め、
目だけで火の玉と教員を追いました。

教員は全く火の玉に気付きません。

あまりの教員のスルーっぷりに、
オレは

『実はこの火の玉はオレの幻覚かも知れん』

と思い始めました。

その時再び火の玉が窓をノックしました。

音と衝撃が以前より明らかに激しいです。

すると教員が懐中電灯で火の玉を照らしたのです。

この瞬間、
不謹慎かも知れませんが、
オレは

『やった、これは明日大問題になるぞ』

と半分ワクワクしていました。

相変わらず教員は火の玉を懐中電灯で照らしています。

やがて火の玉は激しく上下運動をしながら
素早く元の松の木の元に戻り、
現れた時と逆の回転下降をしながら
松の木の幹に消えて行きました。

教員も懐中電灯で照らすのをやめ、
程なくして体育館から出て行きました。

オレは先程の火の玉を目撃した教員と話したくて、
早く朝にならないものかと内心楽しみにしていました。

やがて朝になり(少し寝れた)
早速昨夜のコトを例の懐中電灯の教員に話しに行きました。

オレ『先生、昨日の夜体育館の外に火の玉いたよね!?』

教員『……いやぁ、知らんぞ?』

オレ『…!?…いや先生、懐中電灯で照らしたじゃん?
オレ起きてたもん!』

教員『いやぁ、何も見なかったぞ』

小学生のオレはそれ以上追求も出来ず、
消化不良のまま話を終わらせられました。

この事件で当時のオレが一番怖かったのは、
信用していたその教員がシラを切り通したコトでした。

生徒を不安にさせないために嘘をついたのでしょうが、
オレ自身はやはりこの件について未だに納得がいってません。

同窓会などで例の教員に会う機会があったら、
もう一度訪ねてみるつもりです
(先生あのコト覚えてるかな…)。

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