お盆に帰省した時のこと。

久しぶりに会う地元の友人と飲みに行き、
店を出たのは日付が変わってしばらくしてからだった。

夜中とはいえ、まだまだ暑苦しい時期。

徒歩での帰り道を少しでも快適にするため、
川沿いの道を通って帰ることにした。

その道は、途中まではサイクリングロード、
途中からはサイクリング道路という、
ちょっと間の抜けた名前の道。

昼間はジョギングや散歩をする人達で賑わっているのだが、
この時間では流石に人の通りは無い。

また、その道沿いに公園、
その向こうに新興住宅街があり、
街灯もあるが道はかなり暗い。

それでも久しぶりに会えた友人と、
当時の思い出話などをしながら、
気分良く歩いていた。

少し行くと道沿いの公園が切れ、
湿地みたいな荒れ地に変わる。

道自体の暗さも手伝って、
正直ちょっと不気味。

そんなことを俺が口にしたら、
友人も、確かになんか出て来そうな空気あるよね、
とか言い出す。

俺もその友人も、霊感なんぞ無いし、
今までそんな経験したことも無い
(友人に関しては、俺の知る限り、ではあるが)。

2人で、何か出てきたらどうする?とか言って
笑いながら歩いていると、
突然後ろの方から「ガサッ」という音が。

一瞬2人とも足が止まり、
顔を見合わせる。

するとさらに
「ガサガサッ」という音と共に、
何か気配が。

2人で恐る恐る音のした方を見ると、
小さな人影とさらに小さな影が出てきた。

それを見て、
俺も友人も息を吐く。

『な~んだ、子供が犬でも散歩させてんのか』

お互いにそう思ったんだろう。

『何ビビってんだよ』

『お前もじゃね~かよ』

とかお互いに笑いながら歩き始める。

…少し行ってから気付く。

ん?

犬の散歩?

こんな時間に?

しかも子供が?

ちょっと待て!

どこから出て来た?

あそこは湿地で、
人なんか通らないぞ?

なんかおかしい。

そんなことを考えていたからか、
歩くペースが落ちたようで、
友人も怪訝な顔で俺を見る。

俺の疑問を友人に話すと、
友人の表情が凍りつく。

その表情が
俺の疑問の正しさを肯定していたことに気付く。

うすら寒さを感じながらも、
意味も分からず2人で頷き合うと、
さっきの影の方を見る。

距離は30m程だろうか、
ちょうどそれが街灯の下辺りに来た時。

俺達は見てしまった。

それは確かに犬を連れた子供だった。

それが街灯の下で
こちらの方を見て立ち止まっていた。

俺の目はそれに釘付け。

多分友人もだっただろう。

次の瞬間、
その子供が苦悶の表情を浮かべ
(そう感じただけかもしれないが)、
首から上が音をたててゴロンと落ちるのが見えた。

少し間をおいて、
体が前のめりに倒れる。

状況が飲み込めずに俺は立ち尽くしていたが、
背後でバタバタする音に気付いて振り返る。

…友人が腰抜かしたのか、
足をバタバタさせてた。

『逃げろ!』

そう言って友人の肩を担いで
ノロノロと走り出す。

そこから少し行ったところに街灯があったんだが、
俺達がそこに差し掛かった時、
その街灯が一瞬消えた。

次の瞬間、
またその街灯が点いたんだが、
その光が……赤い!

えっ?と思って立ち止まって
キョロキョロ辺りを見回すと、
後ろからさっきの人影が。

しかも、さっきより近い!

友人は俺の横で
腰抜かしてヒィヒィ言ってる。

もう少しいけば幹線道路に出る。

そこまで行けば車の通りも結構あるし明るい、
なによりコンビニがある。

もう、そこからは必死で逃げただけ。

友人を引きずりながら、
汗だくになりながら、
コンビニ目指して。

やっとの思いで
コンビニにたどり着く。

店内にかけずり込むと、
やる気なさげな店員の

「いらっしゃいませ~」

明らかに変な2人の来店に気付いたのか、
どうかしたのかと尋ねて来る。

友人が腰痛めたみたいで、
とか適当に答えて、
店内で暫く(空が白み始めるぐらいまで)休ませてもらい、
そこから帰宅。

特に怖い目には遭わなかった。

帰宅後、
なかなか寝付けずにいたが、
そのとき昔聞いた話をフッと思い出した。

あの辺りで20~30年前、
宅地開発が始まった頃に、
首の切断された子供の亡骸が
発見されたことがあったらしい。

その子供は犬の散歩中に事件に巻き込まれた、
ということだった。

この一件と何か関係があるのだろうか。

ちなみにこれは後で知った話なんだが、
その湿地の奥に小さな首の無い地蔵がある。

地蔵があるのは知っていたが、
なぜ首が無いのか。

その地蔵は、
事件に巻き込まれた子供のためのもので、
設置された当初は、首もあったらしい。

だが設置後すぐに、
首が無くなってしまった。

その後、
不憫に思った両親と近所の人が何度か直したりしても、
すぐに首が無くなってしまうため、
いつからかそのままにされていたらしい。

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