霊感って血筋と関係あるんだろうか。

俺の母方の叔母や従姉はカンが強いが、
父方の方ではそんな話は聞かない。

俺は気配だけ感じる事があり、
ごく稀に怪しいものが見える事もある。

この話も、見ていない話だ。

先月親が旅行に行って、
俺が土産を叔父さん家に届けた。

叔父さんはオヤジの弟。

俺のバイト先がある駅の沿線に住んでるし、
ここの息子は俺と2コ違いで、
俺とは幼なじみみたいなもん。

目的地は坂を上がり切って少し下った所。

丘の上の閑静な住宅街。

頂上は公園だけど、
俺が到達した21時過ぎには誰もいなかった。

公園の前を歩いていたら、
猫の声がした。

「ウア~ン…」

って赤ん坊の声みたいな…

12月だから、もう寒鳴きって言うのかな。

声につられて公園の中を見たけど、
姿は見えない。

ところがそのまま通り過ぎて、
公園沿いに道が折れて下りになる辺りで、
もう一度「ウア~ン」。

振り返ると、
俺の斜め上にある茂みの中に白っぽい物が見えた。

何かそこから声がした気がして、
俺は引き返して公園に入った。

覗き込むと案の定それは箱だった。

側面に店名とurlが印刷されてる、
白い段ボール。

引っぱってみたら軽くて、
ツツジの木で隠れて見えてなかったけど蓋は開いてた。

猫が閉じ込められてるとやだなって思った訳だけど、
中はからっぽで、底が泥で汚れてた。

たまたまここでひと休みしてた猫が
鳴いただけかもしれない。

やれやれ…
と思って立ち上がろうとしたら
そのまま身動きがとれなくなった。

金縛り…って実はあんまり遭った事ないんだけど、
正にその状態。

うわっ、と思ったら、
背後に人の気配がした。

屈んで片膝をついている俺の左の肩に、
今にも顎が乗りそうな感じで、
誰かが覗き込んでいる。

塾帰りの子供とかがいてもおかしくない時間ではあるけど、
足音したっけ?

何より身動きできないし、
動悸がして喉がキューッと締め付けられて、
声も出ない。

俺はどうにか目の端で様子を窺おうとした。

ぐうっと気配が肩の上に迫り出して来る。

ちょっとだけ首が動けば、
気配の主が見られる!

その瞬間。

地面に付いていない右膝、肩、背中の順で、
何かが通った。

ぽん、ぽん、ぽーん!と、
最後に背中を軽く蹴って。

俺は前にのめって、
両手両膝をついた。

ちゃんと体が動く。

「だあああっ!」

って妙な声をあげて振り返ったけど、
後ろにいた誰かも、俺の肩を通過した何かも、
なーんにもいなかった。

ちょっと呆気に取られた後、
俺はさっさとそこから逃げた。

叔父さん家に着いたら従弟が玄関を開けて、
俺を見て苦笑した。

「遅いと思ったら、どっかで猫と遊んでたのか。」

上着を脱いでみたら、
背中に泥の汚れがついていた。

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