母の体験』のご要望により、書かせていただきます。

母と父共通の友人のSおじさんは居酒屋経営です。

念願の息子が生まれて母子ともに健康に退院、
みんなで集合して貸切宴会になりました。

酒飲みな母と父のお願いで私はアシとして一緒に行きました。

みんな久々の集合でかなり盛り上がっていて、
私もきてよかったなぁとかノンビリ考えていました。

母がふとトイレに立ったので、母が座っていた席に移動して
子供の頃お世話になった人たちと騒いでいました。

母がトイレから出てきたようなので
なんとなく母の方を見ると、
何とも言えない顔をしていました。

青いというか・・・うまく表現できないのですが、
ちょっと普通じゃない感じがしました。

みんなに話しかけられた時にはいつもの表情でしたが、いきなり

「今トイレで男の子を見たよ」

と言い出しました。

私は母のトイレから出てきたときの表情を見ていたので

「まさか悪いものなのかなー・・・」

と思っていたのですが、酔っ払ったおじさんおばさんは

「おう!それは座敷童だー!!」

などと盛り上がり始めました。

大多数の知り合いは母が

「よく見る人」

だということを知っているので、
別段怖がることもなく盛り上がっていたんですが
ちょっと母の様子が変だったのは覚えています。

その内に母は顔色が真っ青になってきて

「A(私)ちょっとママ今日は帰りたい」

と言い出しました。

もともと酒に強い人なので、え?おかしーなぁ・・・
と思ったのですが、かなり具合が悪そうだったので
ひとます母だけ家に連れて帰ることにしました。

車に乗ってエンジンをかけると母が

「A、あんた見た?」

と言い出すので

「さっき言ってた男の子?いや見えなかったよ」

と言うと心底ホッとしたように

「じゃあ、いいよ。よかった。」

と言ってポツポツとトイレの中であったことを話し始めました。

個室から出て手を洗い、ハンカチを探してポケットを探っていたら、
視界ギリギリのところをスッっと影が通ったそうです。

「ん?これはなにかいるのかも・・・」

と思って手を拭いていたら、
母の手首辺りをそっと触る感触があったそうです。

見たことや声を聞いたことはあっても
直接触れるなんてことはなかったのでギョッとしてそちらを見ると
かすりの着物?(母はそう見えたらしい)を着た男の子がじっと見つめていたそうです。

内心うわぁ、子供って怖いよなぁ・・・と思っていたら
ぼそっと「僕も抱っこして」と言ったらしいです。

ああ、もしかしたらSさんの息子が
みんなに可愛い可愛いと抱っこされてるのが羨ましいのかなぁ・・・
とは思ったみたいですが流石に言葉が出なくて固まっていると
打って変わって物凄い目つきで見つめてきて

「なんで抱っこしてくれないんだ・・・・・」

ととても子供の声とは思えない低い声で言われたそうです。

あまりの怖さに硬直しているとその子はすーーーーーっと消えてしまい、
心臓バクバクさせながらトイレから出てきたと言うのです。

聞いていて話し方があんまりリアルなので
なんとなく想像できてしまって鳥肌が立ちました。

「そんな怖いものが出たなんて一言も言わなかったじゃん!」

と言ったんですが

「とにかく誰かに話さないと怖くてどうにかなりそうだったし、
その子トイレから出たらいつのまにかSさんの足元にいてこっち見てたんだよ!」

ちょっと全身総毛立ちました。

母曰くきっと自分の存在を知ってほしいんだよ・・・
とのことですが真意はわかりません。

家に着いて流石に店に戻る勇気は出なくて
熱を出してしまった母の看病をしていました。

ちなみに父はタクシーでご機嫌よさそうに帰ってきました。

Sさんは半信半疑ながら

「座敷童ならちゃんともてなさなきゃなぁ」

と言ってトイレの入り口近くに色々供えているようです。

あれから母はその男の子を見ていません。

そのお供え物で男の子が満足したならいいなぁ・・・と思っています。

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