昔、漁村では、
漁村の出身者同士が結婚するのが一般的でした。

生活習慣や価値観が山村とは異なるためです。

村のAさんは、
内陸の村に造船の交渉のため赴いた際、
村の娘さんと良い仲になり、
お嫁さんとして迎えることになりました。

Aさんは男前で偉丈夫だったので、
ねらっている娘たちも地元の村にも少なからずいて、
残念がられました。

結婚して子供が生まれました。

長男、長女と生まれて、次男が誕生。

みな元気に育ちました。

昔は乳児死亡率が高かったので、
めでたいことでした。

次女が生まれたとき村に衝撃が走りました。

その赤ん坊は今までの子供たちと違って、
いわゆる白子だったのです。

成長するとさらに驚くことに。

その子は、両親にまったく似ていない。

相貌が白人(毛唐)のそれだったのです。

両親とも純日本人の顔つきであり、
母親は背も低い。

「白人と不義密通したのではないか?」

という噂もたちましたが、
そのようなチャンスはそんな辺鄙な漁村にはなく、
また、母親も貞淑な人だったので、
すぐに噂は消えました。

皆、不思議がりました。

次女はそんな皆の心配をよそに元気にそだち、
6歳くらいに成長するとまったく白人の少女となりました。

もちろん、日本語をしゃべるのですが、
髪の毛の色は紅葉したイチョウの葉っぱのよう、
瞳の色はサメの目のように青かったと。

肌の色は陽光に日焼けして真っ赤でしたが、
地肌は貝殻のように白かったそうです。

「けとう、けとう」

とまわりの子供たちからいじめられたそうですが、
彼女は父親に似て背が高くがっちりとした体つきで、
自分をいじめる子供たち(漁村の男の子です)をぼこぼこにしていたそうです。

尋常小学校(4年)を卒業したあと、
成績が抜群によかったので、
高等科に進むのが良いのではないか?と、
近くの村の教師に勧められました。
(その村には学校はありませんでした)

女の子に教育をしても…
という考えも両親にはあったようですが、
すでに長男が働いていたので、
高等科にいれることにしました。

入学をひかえた春に、
村を大嵐が襲いました。

陸揚げしていた漁船が流されるほど波が高かった夜が明けると、
彼女は家からいなくなっていました。

村人が探しまわりましたが、
村にも山にも、近くの村にもおらず、
彼女はまったくの行方不明になってしまいました。

神かくし、というやつです。

彼女はその顔貌から

「海の神様の子供で、
神様が嵐の夜に迎えに来たのじゃろう」

という、
まるで人魚姫のような噂(かぐや姫のようでもある)がされたそうですが、
もちろん、それを信じるものはいませんでした。

ただ、彼女の勉強机(座机)の引き出しには、
鉛筆で書かれた外国語と思われる文章が書かれた
わら半紙が入っていたそうです。

学校の教師を含めて誰にも読めず、
その海岸付近に東京府から実習にきた大学生や教員に見せても、

「ドイツ語でも、英語でも、フランス語でもない」

ということでわからなかったそうです。

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