真っ白い猫が屋根の上を歩いていた。

それは夜勤明けの風呂上がりに
ベランダから深夜の満月をいい気分で眺めていた時だった。

丁度お隣さん家の屋根の上だ。

月を見上げるかの様に
ゆったりと歩いている。

金色の首輪をしているから飼い猫だろう。

月光に照らされたペルシャ絨毯みたいな毛並みで
白と言うよりも銀色に近い。

「だからペルシャ猫って言うのか?」

とか馬鹿みたいな事を呟きながら見蕩れていると、
何かがその猫の後ろにゆらいでいる。

そのゆらぎに目を凝らす。

それは人間の足だった。

物凄く長い裸足が空中から延びていて
白猫の後ろから屋根の上を歩いているのだ。

恐怖で全身が硬直し悪寒が走った。

これは夢では無いのか?

何かテレビか何かが窓に反射して
映っているだけでは無いか?
と自分の目を疑い部屋を振り返る。

いつも通りの
庶民的独身男の生活空間が広がっている。

テレビの電源は点いてなかった。

「よし、見間違いだった!見間違いなんだ!」

何故か自分に言い聞かせ
再び屋根に目を戻す。

白猫はもう居なかった。

が、足はまだそこにあった。

ふと中学生の頃に読んだ
ナントカ様の話を思い出した。

風は吹いて無かったが
脂汗が全身に滲んで死ぬ程寒く感じた。

ゆっくりと見上げる。

この足は天のどこまで続いているのか?

足には持ち主が居た。

女の子だ。

その子と目が合った瞬間は
心臓が破裂するかと思う位にビビった。

小学生位?

そこら辺の小学生みたいな平凡な洋服を着ていて
手にはさっきの白猫を抱いている。

足が長い以外は普通の子供だ。

こっちを見ながら
ぺたぺたと屋根を歩いている。

そのまま屋根を伝って
遠くまで歩いて行くのを見ていた。

風呂に入り直してその日は寝た。

その日以来私は自室の窓のカーテンを開ける事は無くなり
数週間後にその部屋からも引っ越し
今は別の街に住んでいる。

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