高校を卒業し、他県に就職した俺は
実家に居るのが嫌で、独身寮を希望した。

しかし、一人暮らしに憧れた俺は
上司の一言で失望する。

「半年は先輩と同居しろ」・・・・。

無口で無粋な先輩が苦手だった俺は、
窮屈な毎日を送る事となる。

まったく趣味の違う先輩のやる事なす事がイライラの種。

存在そのものが不愉快だったが、
唯一の楽しみが給料日だった。

その日は先輩が着飾って
繁華街へ消える日なのだ。

深夜まで帰ってこないので、
俺は自由に出来る。

俺は好きなテレビを見て
好きな物を食い
有意義に過ごした。

その日の深夜、
俺は物音で目が覚めた。

先輩が帰ってきたのだな・・・・と思い
再び眠りについた・・・・・が・・・

隣の玄関続きのキッチンから
何とも言えない声が聞こえるのだ。

耳を澄ますと何やら怒っている様な・・・・・。

俺はとたんに恐怖に駆られた。

先輩はすでに帰って
隣の部屋で寝息を立てている。

しかし、
不気味な声はますます大きくなり、
しまいにはドスドス音がし出す。

いったい何の音だ???

誰かいるのか?
誰がいるんだ?
何をやってるんだ!?!?!

俺は恐怖の極致に達したが、
勇気を振り絞ってキッチンの扉をゆっくりと開けた。

まぶしい明かりがまぶしく感じた。

そこにいたのは、
額から血を流し
泥酔した見知らぬオッサン・・・・。

流しの下の扉を開け、
酒を探しているようだった。

扉には包丁が刺さっているので、
下手に逆上させたら刺されかねない。

俺は心臓が張り裂けそうになりながらも、
とっさにそう判断したので
静かにオッサン見守った。

いや、凍り付いていたのだろう・・・。

やがて物音に気づいた先輩がやってきて、
その光景に驚きながらも
冷静にオッサンに注意し、
出て行ってもらった。

あまりの出来事に
二人ともしばらく放心状態だった。

どうも先輩は寮に帰ってきたが、
戸締りせずに寝てしまったらしいのだ。

しかし、
頭から血を流した見知らぬオッサンが、
深夜に自分の部屋で
酒を探しながら騒いでいたなんて・・・・。

未だにあのときの恐怖は忘れられない。

そのまま放心状態の二人だったんだけど、
緊張が解けたのか顔を見合わせて大笑い。

勢い込んで話し込んでいるうちに、
なんだかお互いのわだかまり(壁?)が取れた。

んで、分かったんだが、
めかし込んで出かけていたのは、
実は女装バー。

内心、

「うわ・・・マジか」

と激しく引いていたのだが、
そんな雰囲気を察したのかどうか

「写真見る?百聞は一見にしかずかもよ」

と、返事も待たずに携帯の画像を見せ始めた。

おぞましいものを見せるんじゃねーよ・・・
と、いやいや見てたはずなのに・・・

今度の給料日は、新しいブラウス買ってあげよう・・・

喜ぶかな・・・エヘッ!

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