その人のことは1年ぐらい前から見かけるようになった。

基本、車を運転している時に、
歩道に立って空を見上げてることが多い。

白髪混じりでボサボサの髪。

首ぐらいまで髪が伸びていて、
男性にしてはまあまあ長め。

いつもくたびれた顔をしていて口は半開き。

メガネをしてる。

服装は黒っぽいジャージ。

しわしわになったビニール袋を持って突っ立ってる。

年齢を推測するのは苦手だけど、
多分40代ぐらい。

突っ立ってる場所も時間も、バラバラ。

朝、昼、夕方、どの時間帯でも目撃したことがあるし、
雨の日でも傘を差さずに立ってる。

大体は勤務してる会社の近所で見かけるのだが、
たまに隣町にも出現する。

勝手な決め付けなのだが、
無駄に行動範囲の広いホームレスだと思ってた。

にしても、
私が住んでいるとこは田舎なのでホームレスは見たことがなく、
その男性は異質な存在に思えた。

見かけても

「ああ、またいるなあ」

ぐらいにしか思わなくて、
もしかしてホームレスじゃなくて
近所に住んでるのか?とも想像した。

そんなことよりも、
空のある一点を見つめたまま動かない方が気になる。

その男性を見かけるようになって1年ぐらい経った頃、
彼氏をドライバーに車で国道を走っていたら、
その男性を見かけた。

信号にひっかかり、
ちょうどその男性は助手席側の道路の前方にいた。

隣町だったので、

「行動範囲広いなあ~」

とつい呟いた。

それに彼氏が反応して

「何が?」

と言うので、
私はその男性に見つめて

「あの男の人。
職場の近くで、よく見ませんか?」

と言った。

実は彼氏は私と会社が一緒なのである…。

私と彼氏は同じ営業部だった。

外回りで走っていることも多く、
社用車はよく使う。

だから何となく知ってるんじゃないかと思っていた。

でも彼氏から返ってきた言葉は、
再び

「何が?」

だった。

「あの電柱の手前にいる人、
よく職場の近所うろついてません?」

と言うと、彼氏は

「…いや、怖い怖い。
そういうの、お互い嫌いじゃないすか」

と言った。

そんな会話をしていると信号が変わり、
車はその男性から遠ざかっていった。

私は元々、幽霊とかそういうのは信じない人間なので、
未だにあの時は彼氏が嘘をついたんじゃないかと疑ってしまっている。

でも彼氏も冗談を言うタイプの人ではないことも知っていて、
あの後は散々車の中で議論したのだけど答えは出ていない。

あの男性は未だに見かける。

私はこの男性の話を友人には一切していない。

何故なら怖いから。

という、モヤモヤする話でした。

未だにあの男性が何者で、
何が目的で空を見てるのかが謎。

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