俺の祖母方の実家は旧家だったらしく、
面白い話も良く聞いた。

その中から、
不思議な話をしたいと思います。

『笑う狐』

親父が子供だった頃、
まだ祖母の実家は取り壊されずに残っていた。

古くて大きな家で、天井がなく、
代わりに蚕を育てる蚕棚があって、時期になると、
蚕が桑の葉を食べるムシャムシャという音が聞こえるくらいだったそうだ。

大きな神棚もあり、
座敷稲荷を奉った部屋もあったが、
親父はその座敷稲荷の部屋が嫌いだったらしい。

理由を聞くと、

「馬鹿にされたから」

と親父は答えた。

詳しく聞くと語ってくれた。

親父がまだ幼い頃、
この部屋で昼寝をさせられた。

させられたというのは、
親父自体は子供ながらにあまりこの部屋が好きではなく、
いつも違う部屋で昼寝をしていたのだが、
邪魔になるからと、
いつもこの部屋に布団をひかれて運ばれてしまうのだ。

そうとは知らず親父が目を覚ますと、
そこは嫌いな座敷稲荷の部屋。

あ~やだなぁ、と思ったら、
急な金縛りになり体が動かない。

目ばかりきょろきょろと動く。

少しの間そんな状態が続くと、
声が聞こえてきた。

声のする方に目を向けると、
そこは座敷稲荷が奉ってある社。

「子供だ、子供だ」

「誰の子だ」

「(祖母の名))の子だ、(祖母の名前)の子だ」

「どれ、ちょっと遊んでやんべ」

そういうとその社から、
白い狐がヒュルッと飛び出してきた。

狐はささっと親父に近づくと、
顔の上をピョンと飛ぶ。

今度は反対側から近づくと、
また顔の上をピョンと飛ぶ。

そんなことを何回か続けてから、
狐は親父の顔を覗き込むとにやっと笑った。

怖くなった親父が泣き出すと、
狐はいつの間にかいなくなっており、
金縛りも解けている。

様子を見に来た大人たちに話をしても、
誰も信じてくれなかったそうだ。

「狐は笑うぞ」

というと、
親父もにやっと笑った。

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