大学時代に知り合った女友達の話です。

彼女はかなり美人でスタイルも良く、
彼女が歩いていると男たちが振り向くくらいのレベルでした。

実は私も、
入学式の時から彼女に一目ぼれでした。

でも接点もなく、
たまにキャンパスで見かける彼女を目で追うだけでした。

ところが2回生の時、
偶然ですが彼女と同じ授業を取っていたのです。

でも彼女は授業を休みがちで、

『彼氏と遊んでんのかな~』

とかもやもやしてたわけです。

たまに出席してる時には
さりげなく近くの席に座るようにしてました。

ある日、教授が

「レポートの締め切りは守るように!」

と言ったんです。

すると彼女は振り向き、
後ろの席に座っていた私に尋ねました。

「レポートって、何ですか?」

私はチャンス!とばかりにレポートの内容を教えてあげ、、
図書館で参考文書を教えてあげるという名目のもとに
キャンパス内を一緒に歩き
さらには時間が遅くなったからと一緒に学食で夕飯を食べたり、
それはもう幸せな時間でした。

まあ結局、
私は友達以上にはなれませんでしたが。

私が童顔で頭も幼稚だったせいか、
彼女は僕のことを弟のように思っていたようです。

初めから恋愛対象には入れてもらえませんでした。

でもそのおかげで、
他の男は知ることのない彼女のことを
いろいろと知ることができました。

すごい美人なのに汚部屋住人だったり、
ヘビースモーカーだったり、
講義にあまり出てこないのは
すごい酒飲みで二日酔いがきつくて、
さらに向かい酒をするからだとか。

私にはよくわからないんですが、
自分なりの哲学を作り上げる!と孤独生活に突入していたり。

確かに彼女はサークル活動もしておらず
友達もあまりいないようでした。

ひとりでよく山を歩きまわっていたようです。

リア充(当時そんな言葉はなかったですが)な人だと思っていたのに、
意外でした。

それでも、
やっぱり彼女はもてました。

繁華街を一緒に歩けばイケメン店員が
「久しぶり」とか「明日イベントあるから来なよ」とか
声を掛けてきます。

同年代だけではなく、
40代、50代の店長クラスの人にも
可愛がられていたようです。

キャンパス内でも同じく、です。

実際、
夜に高級車で迎えに来る男も
日替わりくらいでいました。

そして夜明けごろに
車で送られてくる姿を見かけることもたびたびでした。

彼女はキャンパスそばの
女性専用マンションに部屋を借りていました。

私は道を挟んで向かいにあるマンションに住んでました。

夜明けごろ、
私には手の届きそうにない高級車から降りてくる彼女を見かけては
何してたんだよおおおおおお!!!!!と発狂しそうでした。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、
相変わらず友達付き合いは続いていました。

まあ、レポート対策要員としてですがね。

そしてそれからおよそ10年が過ぎ。

私と彼女とはメールだけですが
相変わらずの関係です。

今、私は32歳です。

彼女もです。

結局私は彼女をあきらめ、
28の時に職場で知り合った女性と結婚しました。

子供も一人、男の子がいます。

彼女は相変わらずの哲学の構築に夢中のようです。

しかし1週間前、
「結婚するよ!」のメールが!

今年秋の挙式予定だそうです。

婚約者と一緒に母校付近を旅行するようです。

「よかったら、会えない?聞いてほしい話もあるし」

もちろんOKです。

昨日、彼女と会ってきました。

10年ぶりです。

少々の劣化は覚悟していましたが、
実際会うと学生時代よりも眩しく感じました。

学生時代はあまり身なりはかまわない感じの彼女でした。
(当時はネルシャツにジーパンが多かったです。
でも今回はワンピースが多かったです。
アクセサリーもキラキラしてました))

「大学時代の思い出を語り合いたいからって、
彼は置いてきちゃった」

といたずらっぽくわらう顔は、

「飲みすぎちゃって起きれない。
代返しといてくれる?」

と笑う顔と1mmも違いませんでした。

私は彼女と鴨川の岸辺を歩きながら、
いろいろ話を聞きました。

「実はさ…私、処女なんだよね」

驚きました。

驚きのあまり、声が出ませんでした。

彼女は苦笑いしながら話を続けます。

「今までいろんな男の人と付き合ったけど…
付き合ったって言えるかどうかわかんないけど。
とにかく、ずっと処女なの。
恥ずかしいけどキスもつい最近、初めてしたの、今の彼氏と」

仰天して声も出ません。

「私、結構美人じゃない?
もてるし。でもそういうの、全然なかったの」

彼女の話を以下、そのまんま書きます。

自分でも結構美人じゃない?って思うし、
実際もてるし。

いろんな人に食事とか映画とか誘われるし。

で、私からの一目ぼれとかも結構あったし。

それで両思いになるわけじゃない。

でもうまくいかないんだよね…。

「キスしたことないんです…」

って言うと、
相手が手の甲にキスするの。

それって、普通なのかな?

(普通じゃないよ!)

だよね…変だよね。

でも5人もの人がそうだったから
そういうものかな?と思ってたんだけど。

5人とも手の甲にキスしてた。

もちろんHなし。

ホテル行く?って言う人もいたけど、
行ってもいいかなってくらい好きな人もいたんだけど。

でも途中でエンストしたり、
JAF呼んでる間になんか醒めてきて歩いて帰ってきたり。

(15kmくらい歩いたりしたらしい。
俺を呼べよ!スクーターで迎えに行くよ!)

なんかうまくいかないなあ、
って思ってたの。

地元帰って就職してからも
この人こそ!って思った人にプロポーズされてる時に
二股かけてた彼女が出てきたり。

でも本当にこの人!って思ったのが
今の彼だったの。

全然見た目はタイプじゃないけど
一緒にいるとすごく安心するの。

それで彼にこの旅行(泊りがけ)を提案されて、
OKして、その夜のことなんだけど。

彼女によると
彼女は寝つきがすごくいいらしい。

目を閉じた瞬間に眠りに落ちて
目覚ましが鳴るまで起きないらしい。

そんな彼女がふと夜中に目が覚めた。

すると部屋の中に
10人近い人がベッドの足元に円陣組んで立っていた。

これ、幽霊?えー!?と思いつつ、
気づかれないよう寝たふりをしてたらしい。

その中の一番年取った感じの長老って人が
(なんか「オーラが違った」らしい)

「こいつでいいのか?」

と発言した。

見ると円陣の真ん中に
彼氏の顔写真?が浮かんでいる。

「いいんじゃない?寿命もあと**年あるし」(←聞き取れなかったらしい)

「未亡人は良くないよね。
明子(彼女。仮名)は結構惚れっぽいから」

「やっぱり一人の男に一生ついてくほうが明子にはいいよね」

「年収もそこそこだしね」

その後、他の人も

「子沢山だよ」
「優しいよ」
「まあ、いい奴だよね」

と賛成。

「でもパチンコ好きだよ」(←彼氏は本当にパチンコ好きらしい)

「もうやめるよ。やめさせるよ」

「気が小さいから大負けしたら、もう手を出さないよ」

長老らしき人が

「じゃあ、こいつでいいのか?」

と発言。

全員手を上げる。

ただ、そのうちの一人が

「こいつも良かったんだけどな」

と言い出す。

円陣の中に顔写真が浮かぶ。

学生時代、
かなり本気だった相手の映像。

それを見て他の人たちは大ブーイング

「だめだめ!」

「種なしだもん」

「姑もいびりまくるよ~」

「夫婦仲はいいと思うんだけど…」

「結構マザコンだから結局はだんなは母親につくよ」

それを聞いて彼女は確かに、
と頷いたらしい。

そのうち今までの彼氏候補が次々と映像となって
円陣の中にあらわれたらしい。

彼女自身は記憶にないような男性もたくさんいたようだ。

中には俺の映像もw

「次!」

って長老にすぐ飛ばされたらしいwww

次から次へと彼女の記憶にある男、
記憶にない男、数十人が現れた。

「やっぱりこいつですかね」

中堅と思しき男が指差したのは今の彼氏。

長老はむにゃむにゃ文句を垂れている。

そこへ発言したのは一番小さな男の子。

ダンシングベイビーだっけ?

あんな感じだったらしい。

「そうやって反対ばっかりしてるから、
明子はいつまでも行かず後家なんだよ!」

すると他の人たちも

「そーだ!そーだ!」

の大合唱。

ついに長老も

「じゃあ、こいつに決めるか?」

としぶしぶ発言し、
みんな大賛成。

「うるさい姑は俺がなんとかするよ!」

「大丈夫、明子は誰とでも仲良くなれるように修行させたから」

ちょっと、私の意見も聞いてよ、
と彼女は寝た振りで思ったらしいw

目が覚めた彼女は、
さすがに彼氏には報告できず、
私にメールしてきたらしい。

「君が大学時代を過ごした土地を見てみたい」

っていう彼氏。

その大学付近に今も暮らしている俺なら会える、
ってわけなんだけど。

実は彼女の家系には、
早くに亡くなる男子が多いらしい。

彼女が知っているだけでも

祖父の弟(独身30代、病死)、
父の弟(独身20台半ば事故死)、
彼女の長兄(産まれてすぐに死亡)、
父の妹の息子(20台前半事故死)、
兄の長男(死産)…

一代に一人は男子が亡くなってるじゃん!

特に彼女にとっての長兄は
生まれてすぐに亡くなっているので、

「もしかしてあのダンシングベイビーはお兄ちゃんなのかも」

だそうです。

どうやら先祖代々の男子が彼女の貞操を守っていたようです。

美人なのに30過ぎまで処女!って驚いたけど、
もしかしたら…

先祖代々一代につき一人は男子が早死にする家系なのだとしたら
あの円陣はご先祖様(男のみ)による
彼女の婿選びだったのかもしれません。

そして彼女の貞操を守るために
ご先祖様がなんか力を使ったのかもしれません。
(中には過保護な人もいたりして)

でもまあ婚約者は一応ご先祖会議で認められたようなので
(後日報告メールによると、
彼氏は今までにない大負けをしたせいで
「もうパチンコもうしない!」と宣言したそうです)

今年秋、彼女はしあわせな結婚式を挙げることでしょう。
(土地柄、新婦が男友達を披露宴に呼ぶことはタブーだそうなので、
私は遠くから見守ることにします)

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