平成4年の夏の話です。
当時はまだ北東北まで行くと
機関車が客車を引っ張ってる普通列車が沢山合って、
その写真を撮りに良く行ってました。
ただ、今みたいにレンタカーが充実してなかったので、
列車で行って、駅から歩いて写真撮ってました。
あれは奥羽線の北のほう。
大釈迦と言う駅から歩いた時の話です。
午後3時頃に駅へ降りて、
そのまま線路沿いを弘前方面へ歩いていったのです。
途中で何枚も写真を撮って、
気がつけば夕暮れを通り過ぎ
暗くなる頃でした。
国道7号線こそ車が
ビュンビュンと走っていたのですけど、
線路沿いの道は薄暗く、
茂みからは蛙や虫の鳴き声がしてました。
駅へと急いだのですが、
運悪く足を滑らせて
用水へ落っこちました。
用水は2mほどの深さがあって、
自力では這い上がれません。
とっさにカメラバッグと三脚を放り投げて
身一つで落っこちたのです。
膝くらいまで水につかっていて、
おまけに蚊が凄いし
くもの巣だらけになりました。
ただまぁ、
若かった事もあって
無様に落っこちず
上手く着地したのが救いです。
さて、
どうやって脱出したもんかと思っていたのですが、
まともに這い上がれそうな所は一箇所もありません。
これは困ったな。と。
当時はまだ携帯電話もなかったですしね。
しばらくしたら用水の上に人の気配がしました。
思わず
『すいません!
用水に落っこちました!
助けてください!』
と声をかけました。
そしたら何も言わずに
竹のはしごが下ろされたんです。
上がって見たら
小柄なおじいさんとおばあさんが並んでました。
お礼を言って駅へと急ごうかと思ったんですが、
手招きして早口の津軽弁で何か言ってるんです。
言われるがままについて行ったら、
踏み切りの近くの農家に入っていきました。
何かと思ったら、
風呂に入って飯を喰っていけとの事でした。
最初は断ったんだけど、
ありがたくいただく事になって、
風呂に入り飯を喰い、
おじいさんとアレコレ話をしまして。
泊まって行けと言われたんですが、
仲間が青森駅前のホテルに居るので
最終列車で青森へ帰ると話、
丁重にお礼を言って財布を開けたんです。
メシ喰って風呂に入って
『ありがとう』
じゃ拙いですしね。
財布をあけたら
5000円札が姿を現したんで
『良かったらタバコ代にでも』
と、置いていこうと思ったんですけど、
どう言うわけか頑として受け取ってくれなくて。
で、列車の時間もあったもんだから、
繰り返しお礼を述べて駅へ向かった訳です。
で、
その夜はそのまま青森へ行って仲間と合流して、
駅前の食堂で飲みなおして寝たわけですが。
次の日、
弘前行きの列車に乗って車窓を眺めていたら、
踏み切り沿いに立ってたはずの大きな農家が無いんです。
気になって気になって仕方が無くて、
駅から歩いて行ったら、
たしかここだと言う場所は雑木林になってました。
駅間の踏み切りは6箇所で、
段々怖くなって結局大釈迦まで歩いたんですが、
全部の踏み切りを回ったけど、
そもそも踏み切り沿いに家なんか立ってないんですよ。
畑だったり田んぼだったり、
或いは雑木林とか荒地とか、
そんな感じ。
前の晩に見た、
ぽつんと立ってる一軒家の大きな農家なんてもんが
影も形もありません。
当時はおかしいなぁとしか思わなくて、
何か勘違いしたんだろうと思っていたのですけどね。
でも確かに風呂に入ったし
飯食わしてもらったし。
一体自分はどこで何をしたのか。
未だに謎です。はい。
【意味怖】意味がわかると怖い話の最新記事
コメント
コメント一覧 (18)
でも、もしその農家に泊まっていたら、別の展開もあったかもしれない。
とにかく、無事に帰れてよかったね。
粋だねぇ〜(^.^)
その答えはNoか。
場所の勘違いじゃないのかな?
親切な御夫婦は今も元気でいらっしゃると思います。
夜中に目が覚めたら
障子の向こうで
庖丁を研ぐ音が聞こえたりして
命がなかったかもしれないですね・・・
>急いでいても、深さ2メートルもある場所に誤って落ちちゃうような不用心な人の「ここにあったはず…」は ちょっと信じがたいなぁ☆
これは腹立つ発言☆
現在でも岡山県をはじめいくつかの自治体で「用水路転落事故の多さ」が問題になってるの知ってます?理由とかも。
同じような事故に遭われた方を完全に侮辱してますよね。
多分違うよー7さんは侮辱じゃなくて
用水路に落ちちゃうくらいおっちょこちょいの人が助けていただいた老夫婦の家の場所をちゃんと覚えてなかったんぢゃ無い?
って意味で書いたと思いますよ。
岡山は用水路沢山有って更にガードも無い所が沢山あるから危ないですよね。
なるほど。
(慣れない夜道で)用水路に落ちる=おっちょこちょい=物覚えが悪い
という事ですよね。
これが侮辱でないという判断に驚きを隠せません。
マヨヒガに住民が在宅だったバージョン。
津軽弁は使いませんよ
まぁ他の地域の人が聞いたら同じように聞こえるのかもね
大館市とは言え、平成四年に見ただけで農家と分かるような家はもうありませんでした
ただ、夏の15時に大釈迦から弘前方面へ歩き始めたのなら、写真を撮りながらでも日が暮れるまでには浪岡駅に着きそうな気もします。
国道を過ぎた辺りから迷い込んでいたのかもしれないですね。
その体力にたまげるw
田舎は似たような景色が多いし暗いと方向もわからなくなるから勘違いの線も消えないけどね。