今住んでいるマンションに越してきて間もない頃のことです。

ある日の昼過ぎ、家の電話が鳴りました。

通知されている番号は同じ市内のものでした。

電話に出ると、
耳障りなガサガサとした音がするばかりで声がしません。

「もしもし」

と何度か呼びかけると、

「……○○ちゃん…?」

と相手が声を発しました。

しゃがれた声で、
お婆さんのようでした。

私は○○という名ではなかったので、
お間違いじゃありませんか、
とその老婆に言うと、

「嘘、○○ちゃんでしょう?
○○ちゃん、どうして電話くれないの、
ずっと待ってたのに」

老婆はそう言って、
私が何度違うと言っても全く聞いてくれません。

気味が悪くなり

「とにかく違いますから」

と言って一方的に電話を切りました。

5分ほどしてまた電話が鳴りました。

同じ番号からです。

出ないでおこうかとも思いましたが、
年配者相手に一方的に切ったりして
申し訳なかったかなという気持ちもあったので、
もう一度電話に出てみました。

「○○ちゃんでしょう?」

また同じことを言います。

「先ほどの方ですよね?
失礼ですが何番におかけですか?」

何度もかけてこられたら堪らないと思い、
私はその老婆にしつこく問いかけました。

しかし彼女は私の質問に答えることはなく、

「○○ちゃんどうして電話くれないの?」

と繰り返すばかり。

怖くなった私は、
やはり一方的に電話を切り、
すぐに着信拒否登録をしてしまいました。

もちろんその後は、
その番号から電話は来なくなりました。

友人に話すと、

「引っ越して電話番号も変わったから、
前にこの番号を使ってた人が○○さんなんじゃ?」

と言われ、
そんなこともあるのかと納得し、
何日か経つとその電話のことは忘れてしまいました。

1ヶ月ほど経ったある日の昼過ぎ、
携帯電話が鳴りました。

通知番号に見覚えがあります。

嫌な記憶が蘇ります。

そんなはずはない、
自分の携帯番号は友人知人しか知らないはず、
そう言い聞かせて、電話に出てみました。

耳障りなガサガサとした音、
そして、あのしゃがれた声。

「…○○ちゃんでしょう?」

私は慌てて電話を切りました。

しばらくのあいだ震えが止まりませんでした。

携帯は私用のみで使っており、
本当に友人知人にしか番号を教えていなかったのです。

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