東京に戻って一人暮らしを始めた時のこと。

私は東京の家賃、敷金、礼金の高さにあきれ果てました。

おまけにその頃は無職で、
都内の横柄な不動産屋は相手にもしてくれないのでした。

そんなとき見つけたのが、
半年前に人が死んでからずっと空いている物件。

ふつうのアパートの一階でしたが、
家賃を安くしてくれ、
敷金、礼金は1ヶ月づつでいい、
と言われました。

それでも高い、と思いましたが、
自殺ではなく自然死ということでしたし、
こちらも不動産屋めぐりでうんざりしていたので、
妥協しました。

友人達は猛反対でしたが。

住んでみると、
一見きれいなようですが、
とにかく湿気がすごい。

ずっとエアコンをドライにしても、
部屋中結露、梅雨時のひどさといったら!

あたり一面、カビ、カビ、
食品はもちろん、靴に服に化粧品にカビ、カビ。

こういう所って、
邪気がたまるっていいますよね。

そして、夏のある夜、

「ケケケケケ」

と女の高笑いが聞こえてきたのです。

まあ、その時は、
お笑い番組を見ているんだろうなって気にしなかったんですが、
それが毎晩、夜中の3時ぐらいに聞こえてくるんです。

(その頃は生まれて初めて買ったPSソフトのバイオハザード2にはまって徹夜してたんです。
仕事も見つかったのにね)

でも、あんまり楽しそうな笑い声なんで、
全然怖いとか、変って感じはありませんでした。

声が聞こえてくる隣は空き地だとか、
上の階は空いていた、
なんて事実はあえて考えないことにしました。

梅雨時、
かびの臭いがするので、
お香を焚いて寝ていたら、
耳元で、おばあさんの声で

「身も知らない人にここまでしていただいてありがたい」

と囁かれたこともあります。

でも、それも怖くなかったです。

そして2年後、更新の時、
やはり湿気がひどすぎるので出ることにしました。

引っ越しの前日、
金縛りにあいました。

何本もの手が伸びてきて、
わたしの体にからまるのです。

女の人の手だってわかりました。

だって一本の手は指輪をしていたから。

この話を友人にしたらすごく怖がられたのですが、
不思議とその時も全然怖くありませんでした。

一緒にいた友人の旦那(彼も結構見る人です)が言うには、

「それはK(私)ちゃんと一緒にいてお化けも楽しかったから、
行かせたくなかったんだよ」

これには納得しました。

変なことは多かったけれど、
怖いというより遊んでもらってたって感じでしたから。

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