東南アジアの某国を旅行してきたんだ。

自然豊かな森の中でのんびり散策しようと思ったのだけど、
少し怖い経験をしたので纏めることにした。

実はその森には大きな蛇が出るので
1人で入るのはとても危険らしいのだけど、
それは後から知ったことなんだ。

ただ、今回の経験は蛇じゃない。

スマホのGPSがあるので、
多少無理しても出られると思って、
少し深いところまで入っていったんだ。

昼頃だったのだけど、
気が付いたときには、
なんとなく薄暗くて気味の悪い所に立ってた。

それまで聞こえていた鳥や、
虫の鳴き声もいつの間にか聞こえなくなってて、
シーンと静まりかえってた。

そんな中で突然、
遥か前方からカコーンという木を叩くような音が聞こえてきたのだよね。

森の中で鳴り響いた突然の音だったけど、
あまり気にしなかった。

多分何かが木に当たった音だと思ったからだ。

ところが、しばらくすると、
その音の聞こえた方角とは反対側の後方からも、
カコーンという音が聞こえてきたんだ。

なんだろうと思ってると、
今度は自分の立っている位置から見て右側の遥か彼方からも
カコーンという音が聞こえてくる。

この時点で何か嫌な予感がしてきたので、
引き返すことにしたんだけど、
今度は左手側の遠方からカコーンという音が聞こえてきた。

何かに周囲を囲まれたような感じがして、
パニックになりそうな恐怖を感じたんだよね。

その後も一定の間隔を開けて、
何かの合図のように
カコーン、カコーンと木を叩く音が聞こえてる。

同じ場所から2度連続で聞こえてくることはなくて、
必ず別の場所から聞こえてくるのだけど、
なんだか私の居る場所を中心にして、
四方八方からグルグル回るように聞こえ始めてた。

何かの宗教儀式なのかなぁと思ったのだけど、
その輪が少しずつ狭まってるような感じがした。

音が少しずつ近寄って来てる感じなんだ。

背筋がゾッとしたよね。

そして最終的には絶え間なく周囲を取り囲むように
カコン・カコン・カコン・カコン…と鳴り始めてた。

その頃には完全に包囲されてて、
狙われてるのは間違いないと感じてた。

だからパスポートと財布とスマホだけリュックから取り出し、
リュックはその場に捨てて、
服が汚れるのも構わずに腹這いになった。

這いながら包囲から抜け出すことにしたんだ…。

蛇なんかの危険生物にやられるリスクも高まるのだけど、
そんなのを気にする余裕もなかった。

しゃがんで移動したり、
這って移動したりしながら、
音を聞いていたのだけど、
その包囲の1つがすぐ近くを通り過ぎていった。

カコーンという物凄く大きな音が
10m位離れた所から聞こえてきた。

木を叩く音に似てるのだけど、
多分木を叩いてる音じゃない。

そんな大きな音が出るほど思い切り木を叩いていたなら、
場所がハッキリ判るはずだけど、
結局音を出しているのが何者なのかも判らなかったし、
どうやって音を出しているのかも判らなかった。

ジッと伏せて音が遠ざかるのを待ってから、
一目散に走って逃げ帰ってきた。

荷物を捨てたのは残念だったけど、
最終的にはその場所が取り囲まれてたみたいだった。

捕まってたらどうなってたのだろうと思うと、
凄く怖い経験だった。

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