以前、友達と二人で夜に海に出かけた。

車で1.5時間ほど走り、
途中で花火を買って、
ずっとくだらないお喋りをしながら、
行きははしゃいでいた。

その海には、それまでも結構遊びに行っていたし、
国道沿いでコンビニが近くにあり、遊泳もできる海岸なので、
夜の海とは言っても怖いということはない。

自分は一人でも星を見によく行っていたし。

ところがその日は、
花火を持って砂浜に降りていった時、
異様な雰囲気に少しびびったんだ。

なんか、それまでのテンションが一気に下がる感じ。

別に荒れているとか、
波が高いとかじゃない。

その海岸だけ、闇が濃厚で重いんだ。

でもそれは、明るい車道から、
電灯のない砂浜に来たせいで
目が暗さになれないからだろうと考えることにした。

友達のほうも、
砂浜に降りた途端に無口になっていた。

いつもはすごいお喋りなのに。

怖いのかな、と思ったけど、
なんとなくなにも聞かずにいた。

だって、その場で怖くなったら
パニックになりそうな雰囲気だったから。

その方が怖い。

で、とりあえず買ってきた花火のパッケージを開けた。

その時、なにか気配のようなものを感じて
無意識に海の方を見た。

すると、白い玉が浮いている。

その玉は、直径1mくらいで、
波打ち際から20mくらい奥の空中に浮いていた。

質感は、霧を濃くして丸く固めた感じ。

なぜか、アレを消せばいいと思い、
なぜかロケット花火をその玉に向けてセットした。

その時友達は無言で自分の後ろにいたと思う。

ロケット花火を玉に撃ち込むと、
玉は消えたんだ。

へ~。って思った。

そしたら、
それまで無言だった友達が元気になり、
なんか花火をやりだした。

そしてその白い玉の事も忘れた。

忘れたというか、消えたし、
まぁいいか、的な逃避?

で、花火がなくなり、
なんとなく砂浜に座って話していた時、
友達がとんでもない事を言い出した。

「さっき白いワンピースを着た女の人いたよね?」

とか言うんだ。

そんな人どころか、
他には誰もいなかったのに、だ。

友達によると、
海岸に降りた時に、
ワンピースの女が右手に立っていたらしい。

友達は、こんな時間に一人で、
時代錯誤的な白いワンピースを着た女がいるのが
気持ち悪かったらしい。

当然自分も気づいていると思っていたそうだ。

けど、そんな女はいなかった。

その女は、
自分がロケット花火を放った後、
消えたそうだ。

消えてから、
それまで無言だったが素に戻り、
普通に喋れるようになったらしい。

てっきり、
その女を追い払うために
自分がロケット花火を撃ったと思ったとか。

それは違う。

そんな女はいなかった。

いくらなんでも、
近くに人がいたら気づかないわけない。
と言っても友達は信じない。

信じたら怖いからだろうね。

だから白い玉の話をした。

そんな不気味な女じゃなく、
玉に向けて撃ったんだと。

そしたら友達はギャーと叫んで、
走って逃げた。

おしまい

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