これは一年前に三人に起こった出来事です。

場所と〇〇〇が付いている部分は知ってしまうと危害が及ぶ可能性があるので
詳しくは言えませんし書くつもりもありません。

未知数の存在であるがために教訓として皆さんに知ってもらいたいのです。

後々追記する事も致しませんのでここからは自己責任で呼んで下さい。

山登りが好きな俺は高校からの付き合いがあるAとBでよく山に登ってたんだ

仲間内で趣味に没頭すると楽しくて普通に登るのはつまらない、
とか変な理由付けて通常のルートから外れた獣道を通ってふざけていました。

たまに見付かる廃墟や廃道が三人の登山の楽しみでもありました。

今回は車で四時間走ったある山に登ろうと決めていて、
運転を交代しながら目的地に向かいました。

俺「Aちゃんと運転しろよなー」

A「うるせー運転下手なの馬鹿にしてるだろ!」

B「当たり前じゃん、だってAの運転怖いもん、ハハハ」

と道中ふざけながら目的地に無事到着しました。

今回も変な場所を見付けてやろう!
と意気込んでいて山道をしばらく進むと、
脇に獣道がありました。

A「ここ臭くない?何かありそう」

B「おっ、流石A進んでみようか」

俺「獣道すぎる(笑)」

Aが見付けた獣道を無理矢理進むと意外と進めます。

昔使われていた道なのは確かだなと思いながら
獣道を真っ直ぐ一時間程歩くとある祠にたどり着きました。

祠を見付けてこんな場所誰も知らないだろうな!今回も成功だな!やった!
と三人でハイテンションになって喜んでいました。

俺「今回は祠か!」

A「どれどれ、おースゲーボロボロだな」

B「疲れたよ、でもなんかワクワクするね」

全員興味津々で祠に近付きました。

祠を覗いてみると
変なお地蔵様が祀ってあるのがぼんやりと見えており、
掛けてある鍵は錆び付いて今にも崩れ落ちそうな状態でした

俺「ここ開けられそう、でも怖いなぁ」

A「開けちゃおうぜ!開けてみる」

B「やめとこ怖いからさあ…」

三人であれほど喜んでいたのに乗り気じゃ無いのは、
ここに来てから鳥の鳴き声一つしなくなったのと
祠から凄く嫌な感じが漂っていたからでした。

俺とBは異変に気付いていましたが
Aは気付いていないようでした。

俺「本当にやめようよ、
いつもと違う感じがする、
ここ気味悪いよ」

B「俺もそう思う早く帰ろう」

A「大丈夫だって!ほら、開けてみるよ!」

A「よーく見ておけよ」

カチャカチャ

ギぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ

…………年季の入った嫌な音がしました……

Aは何を思ったか
祠の中の地蔵を取り出してしまいました。

B「うわっ!何やってんだよお前!」

俺「ひっ」

A「見ろよ!こいつただの地蔵だぜ。つまんねーの。
…でもさ、こいつよく見ると変わってるな、
首に蛇が巻き付いた地蔵なんて初めて見た」

Aが取り出した地蔵は
確かに首に蛇が巻きついた変わった姿をしていました。

今まで見た事もない姿をしていました。

俺「お前ふざけんなよ!
罰が当たったらどうすんだよ!」

とキレ気味に言うと

A「まあまあ、お、祠の奥に箱がある何だろ」

B「お前なー…」

少しキレながら呆れていましたが
内心は興味心身でした。

この奥には何があるんだろう?

好奇心が勝って
Aの姿を二人でじっと見ていました。

Aによって取り出された箱は
黒檀っぽい材質(俺は木に詳しいのでぱっと見で黒檀かなと思いました)で出来ており
箱に文字が掘ってありました。

Aが箱の埃を手で払い
文字を見せ付けてきました。

俺「何か書いてあるね…
菩〇〇〇?なんて読むんだろ」
(後々説明しますが名前は伏せさせて頂きます。)

A「聞いたことないなー」

B「俺も、電波悪いけどギリギリ届くから携帯で調べてみる?」

A「だな頼むわ」

全員「……………………………………………………………」

B「ダメだなー
地蔵は出てきたけどここと全く関係無い場所だね。
この文字は検索しても出てこないよ」

俺「有名な名前じゃないのかな」

A「有名じゃないなら問題ないな!開けるぞ!」

俺「ちょっと待ってよ!」

B「そうだ!呪われると困るから俺ら目背けてるわ、
呪われるのはお前一人だぜ!
開けて問題なさそうだったら見せて」

ツッコミどころ満載のセリフを言いつつ
二人で山の方を向く

A「分かった!お前らは白状だなあ」

グッグッグッ………………カポッ

A「……………………………………………………」

俺「おい、どうした?」

B「A?どうしたA」

まさか箱を開けたAに何か起こったのではないか
何故止めなかったのだろう、
と後悔しながら冷や汗が止まりませんでした

後ろが怖くて振り向けない…

横にいるBと目が合うと同じ気持ちだったようで
足が震えていました。

これからど…

A「ハハハハハハハハハハハハハハハッ」

俺とBはビクッ!と驚きました。

Aはおかしくなったのか?

俺はどうすればいいのかと考えていると

A「見てみろよ
コルク付いた瓶に水みたいなのが入ってるだけだ」

B「バーーーカ!ビビらせんじゃねえ!」

Aを小突く

俺「ハァー…俺もビビったよ…
Aがおかしくなったのかと思った」

A「アホか、そんな訳ないだろ
これお供え物か?」

とAは箱の中にある瓶を手に取り見せ付ける。

それはお供え物とは言わないんじゃ…
普通水お供えする時って湯呑みとかに入れるじゃん…
アホなのはお前だよ……
と本気で思った。

映画で見た事がある、
これ聖水ってヤツなんじゃと思い疑問を投げ掛ける

俺「これ聖水ってやつ?」

B「なんか神聖そうだね。よく分かんないけど」

A「おい…」

A「おい!!!お前ら!
これはヤバイかもしれない。
触ってるだけなのに気持ち悪い」

また冗談かよ…と思いながらAの顔を見ると
青ざめた顔をしている。

やっぱりそれ触って駄目なものだったじゃんと思い
ため息をついた。

長い付き合いだが
今思い返せば軽い冗談ばかり言うAの怯えた姿を見たのは
これが初めてだ

俺「A平気なのか?具合悪そうだぞ」

B「とりあえず戻せ、さっさと帰ろう」

A「うん…そうだな」

慎重に箱に戻して
地蔵と一緒に祠に入れて元に戻した。

これ以上変なことが起こっては困ると思い
Aの体調も心配だったので下山を提案する事にした。

B「いやーびっくりしたよ、
Aのあんなに驚く顔初めて見たよ」

俺「俺から提案なんだけど
今日の山登りは終わりして下山しよう。
山登りは得意とはいえ疲れたよ」

A「ああ…そうしようか。
俺気を使ってるのか?
心配してくれてありがとな!」

いつもの様に明るく振る舞ってはいるが
無理してる感が半端ない。

明るい反面体調に出やすいタイプなのかなと考えながら
さっき通ってきたルートを戻る事にした。

道が開けてきてようやく下山出来た!と思うと、
何故かまたあの祠のある開けた場所に辿り着いてしまったのです。

俺「何でだよ!ルート間違った覚えはないぞ」

B「何でだ、ほぼ一本道だったぞ」

A「コンパス通りに進んだのに…笑えるな」

全く笑えません。

山の中で迷った事は一度も無いし
全員コンパスは常備してあります。

全員コンパスを確認しながら戻ったはずです。

普通こんな事は無いので
不気味で気が滅入っていました。

ちょっとズレてたか?

もう一回行こうと話し合って下山を試みても
元の場所に辿り着いてしまいます。

俺「本当気味の悪い場所だ」

A「祠開けたせいなのかな、みんなごめんな」

B「お前が謝る事じゃないだろ!
食料もあるんだから心配するなよ!」

俺「でもさ……
このままじゃ暗くなって下山出来なくなるぞ」

B「だな、夕方だからあと数時間がいいとこだな」

A「あと一時間しても下山出来なかったら、
祠から離れた場所で薪拾って火付けて寝た方がいいと思う。
これ以上山をうろついても危険だ」

俺「具合大丈夫なの?」

A「ああ、さっきよりは全然いい」

B「あ」

俺「どうしたB」

B「何か聞こえない?ズリズリって音」

A「うーん…俺は聞こえないな」

俺「俺も」

A「あっ聞こえ…っ……あれっ……」

Aは山の方を見て固まっています。

俺とBはAの向いた方向を見ましたが
俺には何も見えません。

でも感じる…居る。
何かが…………

そう思い目を凝らしてずっと見ていると森の中で蠢いて、
こちらをずっと凝視しているように思えました。

Bの言った通り森の奥から
ズリッ、ズリッ、ズリッと何かを引き摺る音が聞こえ始めました。

唾を飲み込み得体の知れない恐怖に襲われ動けずにいると、
それは木の隙間からそれは少し姿を現しました。

それは大きい蛇のようでした。

アオダイショウか?

いや、それにしては大きすぎる。

俺「あれ…蛇か?」

B「蛇だな……
でも何かおかしくないか?」

そう言われてみれば蛇にしては異様にデコボコしている。

模様にしては奇妙だ…

得体の知れない蛇は
こっちへ少しずつ向かってくる。

音が近付いてくる!

恐怖に支配され動けずにじっと見ていると
蛇に黒い塊が付いており、
その塊に人の手や足のようなものが付いているのが見えました。

俺「A……B…」

あまりに異様な光景に
ガタガタガタガタガタガタと震え出しました。

あの祠の守り神だろうか、
いやあんな守り神が存在するものか…

クソッ、下山してればこんな事にはならなかったんだ!

とりあえずAとBに助けを……と二人の顔を見ると
虚ろな目をして口を半開きにした二人がいました。

俺「おい!A!B!」

必死に呼び掛けましたが
表情を変えずピクリとも動きません。

こいつらは本当に生きているのか?
こいつを見て精神が崩壊したんじゃないかと心配しつつ、
蛇のような物体が近付いて来るのをただ待つことしか出来ません。

恐怖で足が動かないのです。

これまで生きてきて
ここまで時を長く感じたことはありません。

時間だけが森を吹き抜ける不気味な風と共に過ぎていきました。

徐々に迫り来る得体の知れないものを目の前に、
息は荒くなり過呼吸寸前まで追い詰められていると思ったその時。

それとの距離が一メートル程になり
ようやく姿形がはっきりと見えてきました。

蛇の形をした何か、
何かとしか表現出来ません。

この世にこんな蛇が…
と問いかけたくなるようなおぞましい姿をしていました。

蛇の模様が人の顔のようになっており、
蛇に丸く黒い物体がこびり付いていました。

人の手足顔人体全てのパーツを圧縮したような奇妙な形をしており、
幸か不幸かその蛇と目が合ってしまったのです。

その瞬間俺は訳が分からなくなりました。

気が狂ってしまった、

AとBはあれを見てしまったからああなったのだ、
と思いながら意識が薄れてしまいました。

薄れゆく意識の中で必死に蛇を睨んでいたが、
俺に近付いて来た蛇は森の中へと消えていきました。

蛇の模様に付いている顔は
睨みながら倒れゆく姿を見て全員笑っていました。

笑っているんだけど表情が無いんです。

無機質な機械で作ったような笑顔です。

A…B……助けて……と思いながら
今日の出来事が走馬灯のように脳裏をよぎって意識を失いました。

何時間気を失ったでしょうか。

瞼がゆっくりと開き始め
山を見てすぐに現状を理解しました。

ここはベッドじゃない、
俺はAとB三人で山に登ってたんだ……

そしてあの祠を見付けて……

そうだ、AとBは………………

そう思い左右を見渡すと
AとBも気絶しているようで
無事なのか……良かった……と安堵していると
意識が薄れてしまいました。

足が動かない……

でも二人とも無事で良かった。

本当に…AとBが無事だったのが本当に嬉しくて
涙を流しながらまた意識を失いました。

「おい、俺、俺、起きろよ!」

俺「ん…」

B「大丈夫だったか?
俺ら寝ちゃったみたいだ」

A「もう朝になっちゃったな、下山しようぜ」

朝?夕方に俺らはあの変な生き物に遭遇して気を失って……

俺「おい!何ともないよな!
蛇は?祠は何も起こってないのか!」

A「は?」

B「何言ってんだ?蛇?祠?」

話が通じないので少しパニックになりました。

そんな筈ないだろ!と

俺「お前らも昨日見ただろ!
あの祠に蛇が巻きついた地蔵と瓶に入った水を!
それでAとBに続いて俺もおかしくなって…」

A「変になるも何も
俺ら昨日ここで泊まってみようって話になったじゃん、
何言ってんの?」

B「祠なら来る途中にあったけど
気持ち悪りーって言って一緒に山登ったじゃん」

AとBが何を言ってるかさっぱり分かりません

そういえば祠は目に付く場所にあったはずなのに無い

でも確かに昨日AとBは変なモノを見ておかしくなっていた。

それを忘れてる?何で?

得体の知れない恐怖が自分を襲いました。

記憶が無くなって別の記憶に書き換えられてる?

そんな馬鹿な話はないぞ

昨日散々下山を試みて失敗したのは忘れていないだろ?

俺「昨日下山失敗したよな、コンパス狂ってさ」

A「コンパスも何も俺らは昨日下山しようとしてないぞ。
お前今日何かおかしいぞ気持ち悪い、
夢でも見たんじゃないのか
いい加減変な事言うのやめろよ」

B「まあまあ夢って強烈なヤツだと覚えてるからね。
昨日みんなで一人用テント建てないで枕にして寝たじゃん(笑)
とりあえずみんな起きたし下山しようか」

AとBには覚えがないらしい…

夢だったのか?

それにしてはリアルだった……

あの蛇に付いていた黒い塊から見える手と足と顔は
やたら気味悪かった…

恐怖が余韻で残っていて
思い出すだけでも悪寒がしたので納得がいきませんが、
仕方なく夢だと思う事にしました。

下山中通り過ぎたと説明された祠の場所に辿り着くと
正に昨日Aがイタズラした祠にそっくりでした。

開けた周りの景色も昨日見た景色と全く同じです。

おそるおそる祠の隙間から地蔵があるか確認すると……

昨日見た蛇が巻きついた地蔵が
穏やかな顔をして鎮座していました。

足が震え始めました。

やっぱり夢じゃない……

でも何で二人は覚えていないのだろう。

もしかしたら白を切っているのかもしれない。

ですがこれ以上追求するのは怖いので
黙って山を降っていきました。

不思議な事に
あれほどコンパスを駆使しても下山出来なかったのに
すんなり元の歩道に辿り着いてしまいました。

あの事はもう忘れよう…

思い出すとまた悪い事が起きてしまう気がする

そう思い口を紡ぎ
帰り際に休憩を挟みながら解散したのでした。

それから何事も無く生活していましたが、
一ヶ月程してAが急死したと連絡が入りました。

仕事中連絡が来て
仕事を早退してAのお通夜向かいました。

Aはあれから仕事が上手くいかないと悩んでおり、
精神的にも不安定だったみたいです。

それに輪をかけていつも具合が悪いと聞いていて、
Bも最近あまり体調が良くないと聞いていたので、
二人ともまた登山に誘うのは申し訳ないと思い
先延ばしにしていた矢先の事です。

Aの死因は心筋梗塞で
仕事中いきなり倒れて救急車で病院に運ばれて治療を受けたが
帰らぬ人となってしまったようです。

仲の良い友人が死んでショックを受けました。

あんな事があってすぐ死んでしまうなんて…
あれが原因じゃないだろうか……
と一人で自問自答していました。

Aに祠を開けさせた自分が悪い。

二人とも覚えてないと言いつつ白を切り
その話題をタブーとしていた?
追求しなかった自分が悪いんじゃないか?
それが無かったら死ななかったのではないか?
と自分を責め続けました。

Aの葬儀には勿論Bも参列していて
終始無言でAとの別れを惜しみました。

このままだと俺とBも死んでしまうのではないか、
Bにあの日あった事を話すべきではないのかと思い
葬儀の次の日に二人で飲みに行く約束をしました。

ですが、Aが死んで楽しく飲めるはずめなく
重い空気で酒を飲みながら、
ポツリポツリとあの日あった事をBに伝えました。

祠の事、地蔵の事、瓶に入った水、
その後下山出来なくなって二人がおかしくなってしまった事、
思い出せる限り全て話した。

一通り話終えると

B「山には神様が住んでるって言うからな。
正直祠の前でそんな事があったんて信じられないし俺は正常だったつもり、
でも俺がそこまで言うなら信じてみようかな」

俺「ありがとう、Aに開けさせる流れを作った俺にも責任はある」

B「でもなあ、どうしろって言うんだ?
何も起こってないからどうしようもないぞ」

俺「実はあの道なりの道路を登ると
近くにお寺があるんだ。
調べておいたんだ。
休み合わせて一緒に行こうよ」

B「一応同行するよ。
でもなあまり自分を責めるな。
覚えてないし、それが夢だとしたら
罪の無い自分をより責めることになるんだぞ」

俺「うん……」

こうして次の休み
二人でそのお寺に向かう事に決まった。

当日

お寺には事前にアポを取っておいたので行くだけで、
あの二度とあの山には近付かないと思っていたのに
もう一度あの山に戻って来ました。

あの獣道の前を通り過ぎて
お寺のあるらしき場所に向かうと
本当にお寺が見えてきた

調べたから当たり前なんだけど…

お寺に付くと
お坊さんに一礼されたので俺とBも一礼

俺は厄年でも拝んでもらう。

新年でも面倒で神社やお寺にすら行かなかった人間なので、
ここはとても神聖な場所に思えた。

お寺の景色を眺めていると別のお坊さんが来て、
こちらへどうぞと本堂に案内されました。

俺とBが用意された座布団に横に並んで座ると、
お坊さんが前に座って

「電話で詳細を教えてくれませんでしたね。
話してみて下さい」

と穏やかな口調で言われました。

どうしようもないと半ば諦めかけていた時
この言葉はとても有難かった。

この人ならきっと
俺とBそして死んでしまったAを救ってくれると思い
あの日あった事を全部話した。

するとさっきまで穏やかだったお坊さんの顔が
苦虫を噛み潰したような顔に変わり、
こで待っていなさいと言い残し
別の部屋で電話し始めた。

そんなにヤバイ事だったのか?
やっぱり話してはいけなかったのか?
ここでもダメなのか?
と不安にさせられながらどのくらい待っただろうか…

お坊さんはこのまま戻って来ないで
俺達を見捨てられるんじゃないだろうか…
と不安でいっぱいだった。

ようやくお坊さんが戻って来たと思うと
思い詰めた顔で語り始めました。

お坊さん「…よく聞いて下さい。
貴方達は見てはいけない、
この地方ではもう語る事も禁じられているモノを見てしまったのです」

お坊さん「祠があったと言いましたね?
あれはある呪物を霊力が弱くなるまで
人目に付かない場所に置いていたのです。
少しでも供養になればと
私達が他の地方を探し求め置いたのがあの蛇地蔵なんです」

お坊さん「こんな事言いたくありませんが
正直あれを見てしまっては…
もう貴方達は長くは生きる事は難しいでしょう。
Aさんは直接触れてしまった事により災いが強く出た。
俺さんとBさんは姿を見てしまったので
早かれ遅かれ災いが降り掛かってしまいます」

俺「そんな!」

B「……」

お坊さん「三人引き摺り込むつもりだったのでしょう。
ですが俺さんはその神に魅入られてしまった。
言い方を変えると気に入られてしまったようです」

お坊さん「姿を見てしまっては最後、
迫り来る死を覚悟して生きるしか術はありません。
あれを祓おうとして何人もの人間が不審死を遂げました。
高名な方も同じく、です」

お坊さん「あなた方に私から出来る事は申し訳ございませんが、何もありません、何もです。
今も呪いは続いているのです。
昔この地域で独自に開発され、
特殊な工程を経て作られたアレは人の手に終えるモノでは無いのです。
気休め程度ですが軽くお祓いしてあげることは出来ます」

B「だからAが死んだって言うのか?馬鹿馬鹿しい」

俺「でも…あれが原因だとして
何で俺に魅入っていたのですか?」

お坊さん「俺さんの祖先が影響しているようです。
信仰している神様など何か分かりませんか?」

俺「無いです………
あっ……でも実家で家に住む蛇は神だと教えられて
何度か拝んだ事があります。
子供の頃の話なのであまり覚えていませんが……」

B「人はいつか死ぬから最終的に死ぬのは道理だけどさ、
何であんなものがあるのか説明してもらいたいな」

お坊さん「俺さん申し訳ないですが、関係しているかは分かりません、
Bさんはこれが出来た理由が知りたいのですね?
聞きたいのならお話しますが、
貴方達が見てしまった菩〇〇〇、
と言う名前だけは公にしないと約束してください」

俺「分かりました」

B「すみません、今でも信じられません。
Aが死んだのがこれのせいだと思うとムシャクシャしてきて……
お願いします」

ここからお坊さんに話された内容を纏めます。

昔この集落には
呪術師が名前を偽り祈祷師と名前を変え住んでいて
村人が病気や災害に合うと頼りにされたそうだ。
それは菩〇〇〇と呼ばれ特殊な力があり、
病、傷、災害にも聞くと評判だったらしい

だが医療が発達していない時代だから
頼んでも死ぬ事もあったらしい。

自前の薬を使うよりも祈祷師に頼んだ方が効果があると思っており、
死んだ場合神に選ばれなかった、と言われ
村人は他に頼る術もなく成すすべもなく悲しんだそうな

治療法が特殊で鉄パイプで悪い気を吸って治療するそうで、
作る際に三つの術式と山から削り出した丸石、霊止め、水、瓶を用いるらしいが
もう現在は処分されてしまったため一つも残っていないらしい

これらの道具を使い何十年も村に滞在していた。

大まかな作り方だけは伝承として残っていて、鉄パイプに
霊止め(三つの術式を掛けた布で吸う方にこれを詰める)
水(これに霊や気を閉じ込める)
瓶と瓶止め(これに水を入れパイプで吸った気や魂を閉じ込める)
丸石(これを使って封じ込める際、霊力が自分に移らないよう左手に持って霊石として使う)

祈祷師はパイプから抜いた霊気を瓶に貯めた水に移して
初めて半人前と認められるそうで

名のある祈祷師がこれを行うと
水が濁り始めると聞いています。

だが濁らせるのは至難の技で
極一部の人間しか水を濁らせることが出来なかったそうです。

普通の治療ならば悪い気を抜いた道具は邪悪な物とされ、
パイプ以外は供養して川に捨て石は砕いて捨てていたらしい。

ここまでは表向きの活動

名前を偽り村で活動している理由は
裏で密かに呪物を作っていたから。

本来ならば一回限りしか使わない霊気が移った邪悪な瓶を何度も使い、
大勢の人々の業、霊気、怨みを抽出して作られたのがあの瓶だと伝わっています。

本来動物の業を吸うのは禁じられていましたが、
当時この地方で家の守り神として祀られることの多かった蛇を用いて
その呪力を強めたと言います。

推測でしかないが
俺さんが気に入られたのが蛇を神格化した家系に産まれたから、
ただこれは推測でしかないので自信を持って言えないらしい。

呪術師も人の業や怨み、神と崇められた蛇を使うだけでは呪いは弱いと判断したのか
人の魂までも使うようになったのです。

村の何人か使い、
術師後に彼岸花を用いた料理を食べさせる、
そうすると元気な青年でも彼岸花を定期的に摂取することで段々と弱ってくる。

弱った人の魂を抜きやすいという勝手な理由で
彼岸花を加工してターゲットの村人に食べさせていたそうです。

目を付けられたら最後
ターゲットにされた村人は死にます。

死ぬ間際に怨むならこの世を全てを憎め、と教えられ
憎悪を募らせながら魂に憎悪を付加させて魂を抜くそうです。

こうして抜かれた魂は二十以上、
人の業と怨み、蛇、魂を用いて立派な呪物となります。

これが完成すると
多くの人々に災いをもたらすと作成した呪術師達に恐れられていたそうです。

使い方は対象者に水を飲ませる、
対象者の側に置くの二つで

水をどんな形でも口にしてしまった場合三日三晩で急死。

側に置かれた場合は二十日苦しんで急死するそうです。

こうして作られた菩〇〇〇の瓶は幾つも作られて
今も全国にひっそりと眠っているそうです。

ですが、文化は長くは続かず
作成者の高名な呪術師が死んでしまったのです。

抑える手立てが無くなり
周りに居た力の弱い全ての呪術師を呪い殺してしまったそうです。

頼るすべがなくなった村人は
その水を祟りの元凶と恐れ
祠を作り黒檀の箱にしまい
この地方の神として祀ったそうです。

そこで呪物だった自分を神だと勘違いして
祟りは収まったそうです。

その後騒ぎを聞き付けたお坊さんの先代が
これはこの世にあってはならぬものだ、として
蛇が巻きついた地蔵を作り
人目の少ない場所に祠と共に祀って
力が弱まるのを何十年も待っていたそうです。

そこで今の代のお坊さんに引き継がれたと聞かされました。

現状では霊力が弱まるのを待つしかなく、
お祓いに関わった全ての人間が死を遂げているので、
これはいけない、と門外不出の呪物とする事にしたのです。

お坊さん「これが私の知る全てです。
これは私の先代から聞いた話です」

俺「そんな事有り得ます?大問題ですよね?」

B「そう思う、こんな酷い事をしてまで何になるって言うんだよ」

俺「お坊さん、菩〇〇〇の呪物はあと何年効力が続くんですか?」

お坊さん「あと何十年掛かるか検討も付きません。
私も知り合いを当たって居ますが断られて動かす事すら難しいのです。
あの姿を見てここまで生きた人間は初めてでしょう。
運が良かったとした思えません」

俺「俺はともかくBはどうなるんでしょうか?」

B「死ぬって聞くと嫌だな!
アハハ対処法も無いんじゃ手の施しようが無いでしょ」

俺「そんな事言うなよ!」

B「だってよ、俺は平気なんだろ?ずりーよ」

お坊さん「よく聞いてください。
一つだけ方法があります。
森に近付く事を辞めて気にせず生きなさい。
人間弱っていると祟られやすくなります。
強く生きる事で呪いが弱まるかもしれません」

俺「かもって…」

お坊さん「俺さんも気を付けて下さい。
いつ何が起こるか分かりません。
神様は愛想を尽かすと逃げてゆきます。
俺さんも例外では無いのです。
私の実力不足で申し訳ありません。
とにかく油断しない事です。
どこの森にこの呪物が置いてあるのか検討も付かないのです。
私が教えた名前は口にしないように、
気休めですが御守りを持って行ってください」

何の解決もしないまま、村で起こった悲劇を聞かされ
御守り一つ渡され深々とお辞儀されてお寺を後にしました。

解決すらしなかった…
でも事の発端を聞けただけいいのか……
本当にこれで良かったのかと思い詰め考える日々が続きました。

それから俺は神に魅入られていると思い
強く生きる事にしました。

Bも弱音を吐くのを極力控え生きていましたが
お寺に行って三ヶ月後に心臓麻痺で亡くなりました。

休みに山の上にある高台に向かう途中で倒れたと聞かされました。

Bが持っていた御守りは倒れた場所で
泥まみれになって発見されたそうです。

結局Bはお坊さんの言い付けに背いて死んでしまいました。

俺もいつ逝ってしまうのか分かりません。

恐怖で頭がおかしくなりそうですが
今を精一杯生きる事に決めました。

皆さんにお願いです。

登山で怪しげな祠を見付けたら…
そして蛇が巻きついた地蔵を見付けたら…
離れてその場を立ち去って下さい。

瓶に入った水を見掛けたら逃げて下さい

お願いします。

貴方が気付かぬうちに呪いはもう始まっています。

逃げて下さい

覚え書きで省略した部分もありましたが事実です。

図書館でこの地方の歴史を調べましたが
記載されていませんでした。

祠には無闇に近付かない事

もしも瓶に入った水があったら近寄らない事を
頭の片隅でもいいので覚えておいて下さい

【意味怖】意味がわかると怖い話の最新記事