帰宅したら玄関に見知らぬ靴があった。

俺、ひとり暮らしだし、合鍵はない。

人を部屋に呼んだことすらないんだ。

やべ、空き巣か?
と思って心臓バクバクした。

俺のサンダルとダンロップが脱ぎ散らかしてある中で、
その靴だけ几帳面に揃えて置かれている。

女物のビジネスシューズ。

シューズキーパーが入っているのに気づいて
血の気が失せた。

全身の筋肉がプルプルしてしまったので、
ぎこちなくゆっくり一歩下がり、
静かにドアを閉めた。

息を殺して慎重に施錠した。

鼻からフガフガ勢いよく息が漏れるから、
全然殺せてなかったと思うけど。

その後、
通報で駆けつけてくれたお巡りさんが、
俺の代わりに部屋に入ってくれた。

玄関には、
あの靴がそのままあった。

なくなっていたら、
それはそれで余計に怖い。

それ以外、
部屋に異常はなかった。

室内を見分している間、
結構入念に人間関係(特に女性)のトラブルについて
聞き取りを受けた。

そんなトラブルの自覚はないし、
まして女性関係ならなおさらだ。

警官から、
被害相談として受理するから、
また同様のことがあったら
連絡するようにと名刺をもらった。

ちなみに、
俺の部屋は事故物件なんだけど、
亡くなったのは高齢の男性で、
病死だったそうだ。

おじいちゃんには女装癖があった、
というオチなら気が楽になるんだけど。
あれから同じことは起きていない。

警察からも情報はない。

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