かなり昔(15~17年近く前)に、
親父に連れられて
愛知県で出ると有名な某旧トンネルへ行った。

この時は親父が発案して、
妹、俺、親父の三人で行くことになり
妹と親父はノリノリだったんだが
俺は行く前からすげー拒否した。

いつもだったら
俺も久々の親父とのお出かけに心躍らせたんだが、
この時ばかりは嫌で仕方なかった。

んで親父に半ば無理矢理連れられて
車で件のトンネルへ向かったんだが、
目的地に近づくにつれて(だと思う)嫌な予感は余計強くなった。

進む道路の両側がレンガの高い壁みたいになっていて、
その上に木が生い茂ってて暗かったからだとも思うが。

んでトンネルについてエンジンを切った親父は
妹と、こともあろうにトンネルの中歩いてくるとのたまった。

俺は絶対降りたくなかったので

「早く帰ろう」

「帰らないならとにかく車にいる」

と言って一緒に行かなかった。

とにかく降車するのを拒んだ俺は
車で待たせてもらえることになって
親父達の背中をフロントガラス越しに見送った。

んで親父達がちょうどトンネルに入った時に、
視界の左隅になんか白いもんが見えた。

さっきまでなかったものだから
つい反射的にチラっと見たら、
それは白い和服着た長い黒髪の幽霊的にベタな感じの女性だった。

『うおやべー見ちゃった、なんかいるよー!』

と咄嗟に思った俺は
助手席のダッシュボードの下に潜り込み
膝を抱えて隠れた。

隠れてすぐ後、
車のフロントにバン!と何かが叩きつけられる?音がした。

『うあー絶対近づいてきた……!』

と半泣き気味だった俺は
そのまま暫く待機。

数分後、
それから何もなかったからちらっと薄目を開けてみると、
何もなかったのに目を開けて一拍置いてから
さっきのバン!って音がすごい連続して

ババババババババババン!

っとすごい数が鳴った。

その時車が揺れてめちゃめちゃ怖かった。

それでまたさっきよりも長くきつく眼を瞑ってたんだけど
何もなかったから終わったんだと思って薄目を開けたら
サイドウィンドウから此方を半月型に裂ける様な感じで開いた口と、
見開いた眼で見つめる白装束の女性と眼が合った。

そこで記憶がぷっつり飛んで
次に記憶があったのは帰りの車中。

助手席でしっかりシートベルトまでして座ってる自分が理解できなかったので
親父に聞いてみると

「気を失ってたからやってあげた」

と言われた。

んでまた親父にそっちはなんともなかったかって聞いたら

「なんもなかったわハッハッハ!」

って言われたんで
こっちの状況を事細かに説明したら

「大変だったみたいだなー、
こっちもそのせいで運転大変だわー」

と苦笑してるもんで何が?と思ったら
フロントガラスに掌の痕がビッシリ残ってた。

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