友達に聞いた話です。

どこだかの県にA君という人がいました。

Aはその年から都内の大学に通う事になり、
都内の親戚(おじさん)が所有しているアパートに
すまわせてもらえる事になりました。

いつでも越してきていいというので、
3月も終わる頃に早々に引っ越しました。

そのアパートは築何十年という相当古い建物で、
当然家賃も安く、
そのためか、住人のほとんどが
在日外国人労働者だったそうです。

かびくさい匂いと
言葉の通じない住人達にかこまれて、

「まいったな」

という気もしましたが、
せっかく叔父さんが住んでいいと言ってくれているし、
何より家賃もただなので、
Aはそこで大学生活を過ごそうと決めたのでした。

4月、大学がはじまりました。

飲み会サークルに入ったAは、
新歓コンパのラッシュにおわれながら
日々を送っていました。

ある日、
連日の深酒でヘロヘロになりながら、
Aは自分の部屋に帰ってきました。

もたつく手でカギを開け、
ドアをあけると、

「…あ?」

違和感に気付きました。

部屋の中央のちゃぶ台の上に、
長い黒髪の女性が横向きに立っているのです。

こちらを向いている顔をみると、
フィリピン系の顔だちでした。

「す…すいません間違えました!」

あわててドアを閉めるA。

しかし、おかしい。

部屋をまちがえたなら、
俺のカギで開くはずないぞ。

アルコール漬けの頭でそれに気付き、
もう一度ドアを開けると、
…誰もいません。

Aは首をかしげながらも、
疲れていたので、

「酒に酔って幻をみたんだ」

と自分を納得させ、
その日は眠りについたのでした。

数カ月が過ぎ、
そんな事があったのも、
Aは忘れかけていました。

かわりに、
不思議な事がAの身に起こっていました。

正確に言うと、その部屋に、です。

部屋の間取りは、
玄関から入って廊下の左右に流しと収納。

部屋に入るとちゃぶ台をはさんで、
モルタルの壁には手すり付きの窓があります。

部屋は二階にあり、
窓からは下のとおりが見おろせます。

その窓の左側の壁の外から。

午前2時か午後1時になると。

ドンドン!ドンドン!ドンドン!ドンドン!

壁を叩くような音がするのです。

曜日などに規則性はないのですが、
聞こえるのは必ず午前2時か午後1時。

はじめは、外から叩いているのかと思い、
窓からその箇所を確認したのですが、
何もぶつかるようなものはありません。

しかし目の前で、
確かに壁は鳴っています。

「隣で外国人が何かしているのか?」

しかし、言葉も通じない相手に
問いただすのは怖い気もします。

音自体は、一分ぐらい続くと止まるので、
Aは、まあ我慢する事にしたのでした。

そんなある日、
Aの部屋の電気がつかなくなってしまいました。

蛍光灯をかえても、
一向に光は戻りません。

「配線関係がいかれたのか?」

Aは街の電器屋に、
修理を頼みにいきました。

電器屋のおじさんは、
にこやかな対応で、
明日にでも伺います、
といいました。

ところが、
アパートの名と部屋番号を告げると、

「えっ…」

おじさんの顔から笑顔が消えました。

「君、あの部屋に住んでるの…?」

イヤな予感。

「どういうことですか?」

おじさんが言うには、
その部屋で昔、自殺があったのだそうです。

自殺したのは、
フィリピンから出稼ぎに来ていた女性で、
窓際の壁で首を吊ったのだと…。

Aは、ある事に気付き、
炎天下で吹き出した汗が、
凍り付いたように感じました。

首を吊った人間は、
息絶えるまでもがき苦しむそうです。

壁際で首を吊ったのなら、
地面を探す足は壁を蹴って、

さぞ騒々しい物音をたてることでしょう。

音の正体を知ったAは、
その日の内に部屋を出払い、
別の物件が見つかるまでは
大学の友人の家をハシゴして暮らしたそうです。

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