小学2年の頃の話。

私は兄(小4)と母親とその同僚とともに、
母の同僚(以下Mさん)の家に遊びに行った。

夕方になり、
近所の銭湯に行ったのだが、
そこでおかしな体験をした。

母とMさんは女湯へ、私と兄は男湯へ。

体を洗って湯船につかった。

他の客は爺さんが5~6人ほど。

私と兄は端っこの方で湯につかっていた。

しばらくすると、
爺の一人が怪訝な顔をしてこっちに来た。

1mくらいのところでこう言いやがった。

「あー、地球人の子か?
おーいみんな、地球人の子だー」

えっ!っと思ったら別の爺が、

「珍しいなぁー、ほんとに地球人の子ーかー」

と言いながら近づいてきた。

湯船の中をゆっくり歩きながら全爺が終結しつつあった。

幸い端っこにいたので、
怖くなった私と兄は湯船を出て銭湯から出ようとしたが、
仲間っぽい爺がいたので、
便所の大のほうに入って鍵をかけた。

私と兄は聞き耳をたてていたが、
どうやら扉の外に誰かいるようだ。

泣きながらしばらく待ったが、
いきなり兄が扉を開けて出ていったので、
私も必死に走ってついていった。

全裸で外に飛び出すと、
兄が服を取ってきてくれた。

心臓ばくばくで母たちを待っていると、
しばらくして出てきた。

母が

「早かったんだねぇ、帰ってご飯にしようね」

みたいなことを言っていたので、
母の手をとって歩きながら今起こった事を話した。

普通こんな時、
母親ならなんて言うかな?

そんな事あるかねーとか、
なーに言ってんの?とか、
そんな感じになると思うよな?

でも母の反応はぜんぜん違った。

無視されたんだ。

しかも、こっちをまったく見なかった。

私はいよいよ怖くなって、
兄の方にいって
二人で

「何か変だ、何か変だよね」

とか言いながら、
その日はその話題を出さずに帰った。

その後、母とMさんにその話をしても、

「えー、憶えてないよ?」

と言われる始末。

腑に落ちなかったが、
兄とはちょくちょくその話をしていた。

とくに昔は、
矢追純一のUFOスペシャルとか良くあったので、
その手の番組が放送される度に『例の件』の話になった。

そして私が中学2年の時、
例の如くUFOスペシャルの特番が放送されていたので、
兄と二人で見ていた。

私が

「あれ、結局何だったんだろうね」

と言うと、兄は

「は?何が?」。

何と兄はすっかり忘れてしまっていた。

だって、
毎年数回は話してたのに、
いきなり忘れるかね?

もし忘れていたとしても、
詳細を話せば思い出すと考え、
話したけどまったく思い出してくれなかった。

あれから事ある毎に『例の話』をみんなにしているのだが、
「あーまた始まった」状態だ。

ところが確認したところ、
どうやら母とMさんは銭湯にいったのは憶えているらしい。

兄だけが全忘れ状態だ。

それで、
最近母がMさんにその話をしたところ、
その銭湯がまだあるとのことだった。

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