4年くらい前の事…。

私は失業して、
やっと事で雇ってもらったデパートの玩具屋で
アルバイトをしていました。

そこで出会った女の子の話。

私より少し後に入った子で、
まだ10代だけど真面目で良く働く娘でした。

何故か私に矢鱈良く懐いており、
何かの切欠で、
年が離れていたのにとても仲良くしていました。

そんな日の事、
休憩中にその娘が

「Aさんの事嫌い?」

と、急に私に尋ねて来ました。

Aさんと言うのはバイトの先輩のおばさんで、
私に嫌味を良く言ってくる人でした。

「失業した無能な男」
「こんな無価値な男なら嫁にも逃げられるわ」(※私はバツイチでした)

…等と、他人の事をいろいろ聞き出しては、
嫌味だけで無く他人にも言いふらす様な人で、
私だけで無く、
他の人からもあまり評判は良くありません。

まぁ私だけで無く、
皆思ってる事は同じだと思うとその娘に言ったら、
ニッと笑い、

「じゃあ任せてくださいよ。
何とかしますから!」

等と突然言って来て首をひねりましたが、
休憩時間も終わると同時、
その話もすぐに切りました。

しかし、奇妙な話はここから。

それから数週間してから、
唐突にAさんがバイトを辞めたのです。

理由は良く分からないのですが、
息子さんが大怪我を負い、
面倒を見なくてはいけなくなったそうです。

まさかとは思ったのですが、
それとなく彼女にこの事を言ってみました。

彼女も察した様でにこっと笑い、

「だって、嫌いだったんでしょ?
まぁ手を下すまでも無く、
あの人は地獄に落ちる運命だったんだけどさ」

もしやこの娘ヤバイ子なんじゃ…と思ったのですが、
彼女は仲間内からは、
今思えば異常なほど好かれていました。
(※Aさんからは妬みからか苛められていた様で、
もしかするとその仕返しだったのかも…)

かと言って、
プライベートで付き合いがある等、
親密な仲になっている人もおらず、
素情を良く知っている人も少なかった様ですが…。

でも私には特に愛想よくしてくれて、
何だか私も不思議と愛しさを(※恋愛では無いです)抱いていたので、
避ける気にもなれず付き合っていましたが…

ある日、
彼女がバイトを辞めると、
私に言って来たのです。

そして、
「寂しくなるね」等と話している時でした。

彼女が私にピンク色のラッピング袋を渡し、

「これプレゼント!」

と言ってきました。

…中身は、可愛らしいキャラクターの便箋と、
ガラスの瓶に入った香水でした。

香水は渋みの利いたレモンの様な香りで、
何と彼女のお手製だそうです!

彼女によればこの香水は、
仕事等の大事な時や恋愛に効果を齎す香水だとか。

そして、便箋の内容は、
何やらおまじないの手順でした。

これは願いを叶えるためのおまじないだそうですが、
彼女から三つの約束を破ってはいけないそう。

その三つとは、

・必ず1日一回。それ以上はやってはいけない。
・サボってはいけない訳では無いが、長期間続ける事。
・絶対にこの内容を、誰にも教えてはいけない。

私はあまり非科学的なものを信じなかったので、
半信半疑でしたが、
彼女のプレゼントでしたので素直に受け取りました。

が、彼女は私のその気持ちを察したのか、

「信じてないでしょ?」

と、また屈託の無い笑みで問います。

すると彼女は突然携帯をいじり出して、

「これこのおまじないで叶えたんだよ!一等ゲット!」

と言って、宝くじの数字に移った画像を見せて来たのです。

その場で携帯で宝くじの結果を調べたら、
確かに一等当たっていました…。

私が驚いていても気にせず、
彼女はにこにこ微笑んだまま、

「実は私、魔法使いなんだ。
だから他の人より、
ちょっぴり世界を思うままに動かせるってワケ。
このおまじないは誰かに教えると効力を失うけど、
私はもうヤバイくらい乱用したからね。

〇〇(私の名前)さん。
〇〇さんももう直バイト辞めて、新しい会社に就職出来るよ。
あと、失ったものは全部戻ってくるからね。
その香水とおまじないをしっかり活用するんだよ!」

…そう言って私の手を握って来た彼女の表情は、
今思えば少し必死だった様に思います。

それから彼女はバイトを辞め、
それから会う事も無かったのですが、
私は彼女の好意を受け止めたくて、
彼女の言う通りおまじないを試して、
面接に軽く香水をつけて挑んだら…
希望の会社に難なく就職出来たのです!

しかもそれだけで無く、
何度か娘や用事を通じて前妻と会う内に、
トントン拍子で復縁が叶いました…。

それだけで無く、
借金を返済したり疎遠になっていた友人と再会する等、
彼女の予言?通り失ったものが戻って来たのです。

これはもう一度会って彼女にお礼を言わなければ!

そう思い、バイト先の店長に久々に顔を出し、
彼女の事について無理を承知で教えてもらおうと思ったのですが…。

「は?ウチは20歳以上しか雇ってないぞ。そもそも名前は?」

何故か店長があの娘の事を覚えていない上に、
元から雇っていないと言うのです。

…しかし、今思えば彼女の名前を思い出せない。

その上顔も、どんな顔だったか上手く説明できない。

大体良く考えたら、
よくも四十路のオッサンが、
若い娘と仲良くなれたと言うのも不自然と言うか…。

何か、面白い切欠があって仲良くなったはずなんですが、
それも思いだせない…。

一体彼女は何だったんでしょうか。

ただ、最近気になる事に気付きました。

娘があの時の女の子と、
心なしか似て来た気がするんです。

現在娘は高校一年生ですが、
ボーイッシュな服装や柔らかい口調。

そしてかろうじて、かろうじて覚えている、
あの屈託の無い笑みが似ている気がする。

それだけで無く、
娘はオカルトにハマってる様で、
何処で買って来たか分からない魔法の本や道具で、
何か怪しげな事をしている様で、

「楽してお金を儲ける!」
「思うままに人生を楽しむ!」

等と、馬鹿な事を言っています。

それは父親としては注意するべきなのですが、
あの女の子の影響もあり多少は興味もあるので、
まだ魔力でも籠っているかもしれない空になった香水瓶をあげたり、
娘とはそれなりに上手くやっています。

まぁ娘と彼女の接点は分かりませんが、
(※私の気のせいかもしれないしね)
今となってはそんな事どうでも良い話です。

私は彼女のおかげで、
今幸せな人生を送れています。

彼女もここを見ていそうな気がするので、
ここでお礼をさせて頂きます。

素敵なプレゼントを有難う。

貴女に心からの感謝を。

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