昔ある山村で仲の良い夫婦と娘がいた

ある時、年頃になった娘は隣の村との話し合いで
地主の長男のところに嫁ぐ事になった

それほど裕福ではなかったが、
年頃となる若者が少なく、
隣の村との縁談となった

嫁ぎ先の男はとても優しく、
重ねて娘の両親に挨拶をしてから、
自分の村に娘を連れて帰ると家に温かく迎えた

程なくしてその娘は子供を授かった

男と娘は大層喜び、
孫の姿を娘の両親に見せるため
いつか帰省しようと考えていた矢先、
周囲の村々では飢饉が起こっていた

それは娘の村も例外ではなかった

飢饉は深刻になり、
自らの村も危険な状況で帰省する訳にもいかなかったが
ついに他の村で人食いの噂までたち始めた

娘は村に残してきた両親が心配になり
居ても立ってもいられず、
男と子供と一緒に数少ない食料を持って様子を見に行く事にした

娘の村に帰ると酷い有り様だった

焦げた臭いや壊れた家、
娘が嫁ぐ前の景色とは大きく異なっていた

やっと両親の家に辿り着くと、
娘の父は倒れており母は動けない様子だった

持ってきた食料を与えるが
父は食べることなくそのまま息絶えた

母の方は何とか生き伸びたが憔悴が激しく、
食料がなければすぐにでも倒れそうだった

持ってきた食料は少なく、
長く持つ程では無かった

男の家に少しだが蓄えは有るものの、
母は孫と娘に与えるように頼んだ

娘はそんな弱った母を残していくわけにもいかず、
連れていくこともできない

また父の埋葬もしたいので、
自らこの村に残りたいと言い出した

男は反対したが、埒があかないと思い、
食料を今一度自らの村に独りで取りに帰る事にした

男が村に帰ると自らの村も酷くなってる事に気づいた

食料を持って行こうとするが親に咎められる、
余所の村に与えるとは何事かと
しかし子供の為妻の為と強引に押しきり、
家からできる限りの食料を持ち出す

やっとの思いで娘の村に独りで食料を運ぶ

持ってきたぞ?誰かいるか?と言いながら男が娘の家に入ると、
暗い家の中に娘がポツンと座っている

おい大丈夫か?お母さんは?と声をかけるが
娘の返事はない

よく見ると奥の部屋で火が焚かれ鍋がグツグツして、
なんとも言えない臭いがする

娘は男をゆっくりと見た。

男はその横に小さな骨があるのを見た

なんでこうなった?と男が聞くと、娘は

「あの子が一番美味しかったから」

と言った

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