小学校低学年くらいのときの話

その頃団地に住んでいて、
俺の部屋は四畳半だったんだけど、
そこに布団を敷いて一人でいつも寝ていた。

その日も普通に布団に入って寝たんだけど、
珍しく夜中に目が覚めてしまった。

子供のころって
夜中なんか起こされないかぎりほとんど起きないし
自分でもなんで目が覚めたんだろうって
ぼんやりと目を開けて時計を見ようと思ったんだけど
首が動かないんだ。

金縛りなんてなったことも無いから、
自分の体が動かないことが理解できなくて
なんだろうと思いながらもあまり怖さは感じなかった。

動かない仰向けの体のまま
天井をぼんやりとしばらく見つめていたんだけど、
段々と目が暗闇に慣れてきたころ、
初めて異変を感じた。

自分の寝ている足元に
ズッシリと何かが乗っかっている感触がある。

急にどっしりと大きなモノがのしかかった感覚にびっくりして
足を引っ込めたいんだけど
体が動かない。

しばらくもがくようにしていると
やっと少しずつ体が軽くなって動くようになったので
左側を向くように横向きに体を丸めて目をぎゅっと瞑った。

しばらくそのまま耐えていたけど
何も起こらなかったから
もう大丈夫かなと目をそっと開けてみると
真っ白の裸足が目の前にあった。

俺の左側に誰か突っ立っている。

俺の方を向いて立っているその足は
青白くか細かった。

お母さん?って一瞬思ったけど、
くるぶし辺りでヒラヒラしている白い着物を見て
これは母親じゃないことを確信した。

そのとき俺の頬を
真っ黒い髪の毛がそっとなぞった。

続いて人の顔が
自分の顔に近づく感じがする。

足は立ったままの状態で
布団に寝ている俺の顔に顔を近づけるなんて
どんな格好で近づいてるんだと想像するだけでも気持ちが悪く、
またすぐ目を瞑った。

すると、俺の顔にパサッと髪の毛が乗っかって、
人の息づかいがした。

誰かの顔が俺の顔のすぐ近くにあることが
目を瞑っていても明らかだった。

怖くて怖くてひたすら

「消えろ!」

と心の中で叫んでいた。

気がつくとそのまま眠っていたらしく、
朝になっていた。

朝になっても、
顔にかかった髪の毛の感覚が消えなくて、

大人になるまで口にも出来なかった。

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