友人が人に聞かれちゃまずい、
とでも言うような小声でこんな話をしてきた。

「通り魔、ってあるだろ。
急に誰でもいいから殺したくなった、
魔が差した、ってあれだよ。
実はあの被害者たちは、
都合が悪い人間だから殺されてるんだ」

友人はおかしなところがあるやつで、
度々こういう陰謀論めいたことを口にしていた。

「じゃあ通り魔をしてるのは、
その連中の仲間とか、共犯なのか?」

適当にそう返すと、
友人は我が意を得たりという風に気味悪く笑った。

「違う。彼らは操られてるだけなんだよ。
通り魔って、計画的な殺人とは違うだろ?
あいつらに都合の悪い人間を殺すために、
利用されてるだけなんだよ」

荒唐無稽もいいところだった。

人間をラジコンみたいに操るなんて、
まるでゲームだ。

「どうやって操るんだよ。
それにあいつらってのは誰なんだ?」

友人は更に顔を近づけ、
ひそひそと耳打ちをした。

「どうやって操ってるかは俺も知らない。
ただ、連中の正体は知ってる・・・未来人さ」

「未来人」

「あぁ、
連中は将来自分たちに都合の悪いことをする人間を、
過去に遡って消してるんだ」

「そうか、分かった。
帰って寝ろ。
8時間以上だぞ」

その日はそれでお開きとなった。

それから2週間もしないうちに、
友人が死んだ。

夜、
自転車で買い物に出た時に、
車に轢かれたらしい。

自転車は無灯火だったそうで、
警察もそのせいで発見が遅れたのだろうと考えた。

しかし、
逮捕されたドライバーは、
ちゃんと彼が見えていたという。

それでも、
なんとなくブレーキを踏む気にならなかったのだと言ったという。

何故ブレーキを踏まなかったのか、
殺すつもりだったのかと詰問する警察に、
彼は言った。

「分からない、
殺す気なんかなかった。
ただ、魔が差したんだ」

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